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シテキなもの  作者: 滑瓢
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ラブテキなもの 6

 人見知りのヤツほどメールではキャラ変わるとか言うが、それは間違っていると私は思う。むしろ逆なのだ。メールのキャラこそ、その人が本当に持っている性格そのものであって、普段しゃべっていてメールとキャラが違うなどという事態に陥るのはその人が単に人見知り故の口下手なだけの結果であると言っていい。本来の自分が緊張より出せないもどかしさというものを、私はよく知っている。特にイケイケ上位者への対応など、何度その後後悔する破目になってしまったか分からないほどの失敗を経験している私である。むしろ後悔しなかった対応なんてないね!気持ち悪い不具合な愛想笑いしたか、それとも愛想笑いさえ出来ず表情が固まってしまったかのどちらかですよ、どうせ。・・・本当、この十七年間私は一体何を学んできたというのか。学校という恐ろしい社会の縮図みてぇなコミュニティーの中で生きていて十七年間のザマがこれですよ、何かビックリだよね。皆すげぇねってなるわ。

 ここ数日。佐々倉くんを特別意識してしまって、私はもうどうしようもない感じである。

 何がどうしようもないかっていうと、とりあえず見てしまう。談笑しているのを、聞き耳を立ててしまう。初めてツタヤで佐々倉くんを目撃してから、翌日バレんじゃないかってビビリまくって意識していた状態がもう連日続いているような感じなのである。どうしよう。これは本格的にあれだ、お年頃の青春病というのだろうか、うん。そういうのが私を襲ってきている。

 メールのやりとりはあれからほぼ毎日。何が楽しいのか、佐々倉くんはメールをしてきてくれる。もうそれがあれなのだ、私を勘違いさせていい気にさせている。もちろん、私からメールをし始めるということはない。大体夜の十時ごろを回ってくると佐々倉くんのメールが来る。そこから・・・まぁコミュニケーションしているわけですが。もうさ、私は分からんよ。私は楽しいよ?いや、だってさ、男子からのメールだぜ!同世代なんだぜ!!しかも顔見知りで、クラスメイトで、何かもうそういうのがギュウギュウ詰まりに詰まった甘酸っぱい感じですよ、何か淡いピンク的な青春ですなぁ。それがさ、私を襲ってきてるわけでさぁ、向こう的にはどうか知らんが、私にとってはそうなんですよ!もうさ、もうさ!!!イケイケ女子ってこういう青春してるのかなぁ少女漫画みたいだなぁウヘヘヘってなるのよ。この、『異性と毎日親しげにメール』ってのがもう私なりにドキドキなシチュエーションなんですよ。耐性がないのに程あるね。それは分かってるんだけどさ、しかし謎なのは佐々倉くんである。相変わらず学校では喋らないが、それでもメールは毎日してくれる。

 ・・・一体、どういうつもりなのか。

 そりゃあ面白いと思ってただ単にメールしてるだけってのもあると思う。本当、よく言われるんだよメールでね。『面白い』って・・・。もうそのメール見ただけで喜びウヘウヘで私気持ち悪いんだが、しかしやはり気になるもんである。真意如何に。あのとき、ツタヤで交わした会話以来、佐々倉くんの私を見る目が少し変わったのだろうか。あの照れたような笑顔が思い出されて、やっぱり私は思い上がってしまう。ちょっと期待とかしちゃったりして、その自分が気持ち悪くて悶々と自虐してしまうわけだが、でもやっぱり佐々倉くんとメールするたびそんなことばかり考えてしまうのだ。

 一度、彼氏がいないかどうか聞かれたことがある。まぁ文面だけ見るとすげー佐々倉くんが私を異性として見ているみたいだが、そんなことは全然なくまぁ自然とそういう会話の流れになったのだ。もちろんいないわなーというような感じで返事を打った後、私は迷いに迷った挙句聞き返したのだ。練りに練って、ごくごく自然な感じに、何度も読み直しては私がいい気になっていないかチェックして、もうめちゃくちゃ迷った末、返信のボタンを押した。

『そっちこそ、どうなんですかー。お盛んですか?』

 返信がやけに遅い気がして、どうにもこうにもやるせない気分で部屋のベッドと机の間グルグルと行ったり来たりで、もうこれがアニメだったら顔が真っ赤なとこですよねぇとか頭の中で無理やり他人事みたいに考えてみたりして。散々に悶々とした挙句に、返ってきたのはたったの一文だった。

『いやいや、寂しいですよw』

 もうさ、分からんのです。

 楽しくて、嬉しくて、こんなの慣れんのです。

 無駄にはりきって、有頂天で、これはどこまで続くなんてまるで予測がつかんのです。

 私はどうしていいかあたふたで、たぶんそれは相手にとっちゃすごく不思議なことなのでしょう。

 もしかしたら、本当にただのメル友かもしれなくて。私はその中の一人に過ぎなくて。

 そんなこと考えてしまうくせに、気持ちだけがフワフワと飛んでいって、抑えられなくて。

 

 メールは楽しいです。どもることなく、下手な愛想笑いと下手な相槌で会話を打ち切ることなんてなく。このままどこまでもお話できるような気するのです。

 フワフワ飛んでいく気持ちがどこへ行ってしまうのかさえ分からないまま見切り発車していて、目の前も行方もまるで見えません。

 正直それが怖くて、でも楽しくて。止められなくて、抑えられなくて。

 

 どうしよう。

 本当に、どうしたらいいのか・・・。

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