第一章 〜意地悪と悪戯〜 4
第一章 〜意地悪の悪戯〜 4
いつもの屋上。いつもの昼休み。
白雪は特に隠す素振りも見せず、唐突に話し始めた。
「最近巷で強盗事件が頻繁に起こっていましたよね?」
「ん? ああ、そう言えばそうだな。それが?」
「実は、その犯人達の処罰を私に求めている人がいたんです。知っての通り、私の家は裏にも表にも影響力がありますから、私がそれを処罰しろと言えば、処罰されるでしょう」
「……で、白雪はどうしたんだ?」
「私はそれを許可しました。恐らく、私の家の手が回っている組織が、犯人達を処罰すると思います。これで強盗事件は収まりますよね?」
「……そうだな」
「私は、良い事できましたか? 良い国を作れていますか?」
「ちゃんと良い国になっているさ。強盗事件も止まるだろ?」
しかし白雪は顔を曇らせて言う。自分の言っていることを、自分では信じられないように。
「……私の決断は、悪くなかったんでしょうか?」
「大丈夫、白雪は悪くないさ」
悪いのは、あくまで僕だ。
だから、白雪はそんな泣きそうな顔をしないでほしい。白雪は笑っている顔が一番だから。
「よしよし」
なんとなく白雪の頭を撫でてみた。白雪の黒髪は、絹のような肌触りで心地よかった。
……ん? なんか間違っている気がする。
「…………」
数秒ほど経ってから、我に返ったのか白雪が僕の手から逃れるように離れた。頬を紅潮させ、恨むように睨んでくる。
「……先輩、セクハラで訴えますよ? 罰金と懲役、どちらがいいですか? 今なら好きな方を選ばせてあげますよ?」
「無罪放免で」
冤罪でもないのに無罪を主張してみた。きっと誰も弁護してくれないだろう。
「…………解かりました。しょうがないですね」
小さく溜息をつき、本当にしょうがない人だ、という白雪。
判決は無罪。あれ? なぜか恩を売られた気になってしまう。
「今回だけ、ですよ?」
そう言って、僕の方に頭をコテンと倒してくる白雪。
ほんのりと白雪の髪から優しい香りが風に流されて、僕の嗅覚を刺激する。白雪の短めの髪が僕に触れてくる。
「え? あの、白雪さん?」
「先輩、今回だけですからね? 今度似たような事をしたら、兵役に二年か懲役に五年、もしくは秘密のお仕置きの嫌な方を選ばせてあげますよ?」
秘密のお仕置きってすごく気になるけど、それより今回だけってどういう意味なのだろう。
誘っているのだろうか? それとも、—————のだろうか?
そんなはずないだろうに。何を考えているんだか、僕。
僕は言う。
「……本当に、白雪は意地悪だ」
「そうですか? でも、先輩は意気地なしです」
「……………」
何も言えなかった。
けれど、これで本当に良かったのだろうか?
少年達は強盗で、それを裁く許可を白雪は出して、僕はそれを殺した。
本当に、これで良かったのか?
白雪、僕にはそれがわからない。
とりあえず、これで第一章は終わりです。
Wordで作成しそれを移した形なので、多少変な部分が有るかもしれません……。
当初は、『*』で区切って、一話にする予定でしたが、どうでしょうか?