表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

第一章 〜意地悪と悪戯〜 3

          第一章 〜意地悪の悪戯〜 3


 その日は、特に天気が良い訳でもなかった。夜が明けようという時刻でもあった。そんな環境だったから、少年達はその誘いに乗ってしまったのかもしれない。

「……本当に、いいのか?」

 少年達は、男に尋ねる。

 男は仮面で顔を隠し、その姿もはっきりとしてはいない。だが、言動には重みがある。

「ああ、勿論だ。君たちは何も悪くない。悪いのは、全て私だ」

 少年達は男を怪しむように顔を見合わせる。そして、男の顔を伺うようにして言った。

「……………だが、強盗だぞ?」

「心配するな。全ての責任は私が持とう。君たちの事は解っているつもりだ」

「……………本当、なんだな?」

 男はふっと笑い、手を差し出す。

「勿論だ。信じる者を救おう。——いや、信じぬ者も救おう」

 少年達、巷を騒がせる強盗の犯人達は、男に手を差し出した。

 そして男は少年達に札束を渡した。諭吉が百枚で束ねられていた。


 それから数刻後、とある小さなビルで。

 男の元に一人の女が現れた。女はスーツ姿で、無愛想に目を伏せている。だが少なからず、男に敬意をこめているのが伺えた。

 そのビルの一室で、男は傷一つないガラスのデスクに肘をつきながら、その前に立つ女の話を聞いていた。

「ご苦労様です。あなたはやはり、人を引きつける何かを持っていらっしゃる」

「そうか? ……それはそれであまり嬉しくないな」

「……どういう事ですか?」

「何、君には解らないだろう。とにかく、強盗の件だが、ここまでは君との計画通りだ」

「はい。ですから、こうしてお礼に」

「いや、お礼などいらないよ。例え君に頼まれずとも、私は自分でやっていた事だ」

「……そうなのですか?」

 女が尋ねるのに頷き、男は言う。

「現状に満足できるのは、恐らく保って数年だろう。白雪お嬢様の年齢を考えれば、それは早すぎる限界だ。まあ、今のような状況ではしょうがない」

「……あなたは、白雪家が怖くはないのですか?」

「怖い? 白雪家が?」

「はい。……少なくとも、私と同じ考えを持つ者があなたの他にもいました。しかし皆、白雪家の飼っている『悪魔』の話をすれば、無かったことにしてほしいと、そういって逃げました」

「……なるほど」

「ですから、あなたは白雪家が怖くはないのですか? また、その理由は?」

 男は不敵に笑い、そして答えた。

「『悪魔』? そんなもの、人間に比べれば可愛いモノだよ。人間の方がよっぽどおぞましい」

「…………」

「『悪魔』を畏れていては、国は良くならない。だから私が引導を渡そう。『悪魔』を殺し、白雪姫を追放し、この国の礎を築こう。犠牲は付き物だがな」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ