序章
序章
どうして、僕はこんなにも辛いのだろう。
どうして、僕は涙を流しているのだろう。
悲しくなんか無い、全ては彼女のために。
彼女が必要ないものなら、それは世界が必要の無いものなのだ。
彼女が邪魔に思うものなら、それは世界に取って邪魔なものなのだ。
彼女が疎ましく思うものなら、それは世界に嫌われているものなのだ。
彼女が殺してくれと頼むなら、僕はそれを殺そう。
だけど、どうして、僕は泣いているのだろう。
——ああそうか。僕は嬉しいから泣いているのだ。
でも、それなら。
この心に突き刺さるような痛みは、一体なんだというのだろう。
分からないな、こんな痛み。
知られたくないな、見られたくないな、笑っていて欲しいな。
辛くない、悲しくない、楽しくもない。
悪魔が笑っている。
僕は泣いている。
彼女は笑っている。
彼女は僕に普通に話し掛けてくれた。彼女にとっては、僕も一人の国民だった。
ただそれだけで、僕は救われた気がした。
その素直な笑顔を見られただけで、僕は幸せになれた気がした。
だから。
君に笑顔を届けられるのなら、僕は悪魔に魂を売り渡そう。
はじめまして。
これは作者の初作品で、感想や意見を教えていただけると嬉しいです。