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ゾンビの有効利用

準備ができたと言うことでいつもの椅子とテーブル以外何もないだだっ広い部屋に向かう。


安全対策とのことで広い部屋を使っている。

しかし、それを言うなら変にケチらず強化ガラスなどで対策して欲しいといつも思う。


やりとりができた時のために口の拘束を外されたゾンビといるのはその他が拘束された状態だとしても気が気でなかった。

今は慣れてしまったが。


「おはようございます、片平忍さん。1週間ぶりですか?お変わりないようで。」


残念ですと言う言葉を飲み込み、もう何度も話を続けている片平だった男を見る。


見た目はメタボ気味の中年男性。

口を横にニィーっと開いた状態で涎が出そうになっては啜るを繰り返していた。


口元には拭かれることのない汚れがついており政府は食べさせるなど最低限のことはしていることがわかる。


「昨日のご飯はトマトソース系ですか?いいですね。僕はミートスパゲッティが大好きなんです。」


ゾンビはキィっと唾が歯の隙間で音を鳴らす。

生理的にかなり受け付けない行為だがシュウジは笑顔を絶やさない。


「どうでしょう?最近はここと収監施設の行き来だけですが外の空気は吸えてますか?」


反応のないゾンビにただ座っているだけで話すのも退屈になり立ち上がると歩きながら話をする。


「忍さんは元気だった頃、保険代理店で働いてたんですよね。」


歩き回るシュウジをゾンビは目だけで追いかける。

こうしてみると何か意識があるんじゃないかと思ってしまう。

ゾンビに変わってしまったと言うよりも人から何か別の動物に取って代わられたのかとすら思う。


「ゾンビ登場初期はすごい死亡保険が伸びたらしいですね。ゾンビは死亡扱いで保険が出るとしたせいで。」


壁までつくとくるりと回れ右して対岸へ歩き出す。


「もちろんご存知でしょうが、そのせいでゾンビでもない人間がゾンビになったと言って保険をもらおうとする保険金殺人が増加しました。」


対岸の壁につくとツカツカとゾンビの目の前まで距離を詰める。

ゾンビはシュウジを見上げる。

その顔はゾンビには見えない。


「すみません。責めてるとかそんなんじゃないんです。身近な人が保険金殺人に遭ったとかでもないですし。あ、そうそう。あなたをこき使ってた嫌な上司、いたでしょう?」


それだけいうと腰のポーチからタブレットを出しある画像を見せる。


「彼ゾンビになって死んだらしいです。職場で突然ゾンビ化。従業員たちは逃げるでもなくみんなでボコボコにして排除したそうです。」


タブレットに映し出されたのはゾンビになったとされる上司だったものだ。


「本当にゾンビになったんですかね?勘繰っちゃいますよね。」


ショック療法のつもりでここまで色々試したが暖簾に腕押しのようでなんの変化もない。


腹さえ空いてなければ襲ってくることのないゾンビはまさに野生の獣だ。

そんな獣に言葉で駆け引きをするなんて意味がないことは明白だった。

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