違和感
週明けの月曜日シュウジはいつもより少し陰鬱な気分が増していた。
それは仕事に行くのが嫌だというのが半分。
もう半分は週末にあった女と未だ次の約束を取り付けられていないことだった。
女の名前は桔梗。
本名かは実際のところわからない。
あまりにつかわしくない気もするが彼女の半分は似合っている気もする。
よく知らなかったため調べてみたがまっすぐ自分の言いたいことを言う姿は桔梗のようだとも思う。
しかし、花開く前の紙風船のように割れそうで割れない雰囲気は繊細で優雅な印象を与えそれもまた彼女らしいと感じた。
そんなことを考えながら車に乗り込むと今朝はいつもより空いていることに気づく。
突然ゾンビになるこの奇病が流行ってからと言うもの公共の交通手段は軒並み利用者が減り、自家用車やカーシェアなどの利用者が爆発的に増えた。
もっとも、運転中にゾンビになり悲惨な事故を起こしたと言う事例もあるがそれは稀有なものだ。
真ん中の車線を走るシュウジはいつもよりスムーズに進めるというだけで憂鬱な気分が晴れていく。
なんとも単純な性格だと思いながらもこんな性格で良かったとも思う。
仕事場につき机が5個も並んでいるのに2人しか座らない寂しい部屋を一度ゆっくり見渡す。
付き合う人間は今の時代少ないに限る。
国に使われている人間ではあるが治るかもしれないと言う希望を持ってゾンビとなった知り合いを政府に預けるのは遠慮したい。
何をしているかわかっている分さらに政府に対する嫌な思いは払拭できないだろう。
9時始業開始。
いつも中島はギリギリ遅刻してくる。
シュウジはいつもそれまでの時間をメールの確認をしてるふりをしてコーヒーブレイクを取りゆっくりする。
今日の対象者の資料を見ようとファイルを開いた時中島が出勤してくる。
「あれ?早いっすね。おはようございます。」
普段より数分早いくらいだが滅多にないことなので驚いてしまう。
「ん?ああ、確かに。おはよ。」
いつもより元気のない中島を不思議に思いながらも踏み込まないでおく。
人の距離感を大事にする人間であると言うよりもシュウジは人がどう思うか想像すると億劫になるので根本から回避する。
いつもならコーヒーブレイクに加わりどうでもいい話を繰り出してくるのだが今日の中島は椅子に座るとデスクに背を向け窓の外をぼんやり眺めている。
「そういえば、下呂はどうでした?温泉以外何もないイメージですけど。」
沈黙がたまらずシュウジは軽口を漏らす。
「ん、そうだなぁ。ゆっくりするにはちょうどいいよ。」
「お子さんは退屈だったでしょうね。」
その言葉に対して反応がなくまた沈黙が続く。
しばらくすると思い出したように中島はかばんを漁り包装された箱を取り出しシュウジのデスクにポンと投げおく。
「忘れてたよ。土産だ、土産。」
「お!やった!なんすか、これ?」
「下呂プリン。6種類の味を楽しめるってよ。しかもビン。」
「え!?何投げてんすか!割れますよ!」
シュウジの様子を見た中島はようやくいつものような笑いを見せる。




