おひとり様
会計を済ませ外に出ていく女を目で追いかけながら欲しくもないレシートを受け取る。
レシートを捨てるところがないためだった。
遅れて店を出たシュウジに女は微笑む。
「美味しかったね。食べすぎちゃった。」
その言葉の通り彼女はシュウジの倍以上は食べていた気がする。
その分会計を多めに払ってすぐさまレジから離れる姿に新たな好感を得る。
「いっぱい食べるのに全然細いよね。」
言ってから気持ち悪いことを言ってしまったと後悔する。
しかし、女はおかしそうに笑うと自分の頭を人差し指でぐりぐりと押し当てる。
「ここを人の倍は使ってるからねぇ。」
何を言っているんだと内心思いながらなぜかその様子がおかしくてたまらず彼は吹き出してしまう。
「お、ちゃんと笑ったの初めてじゃない?バカにされた気もするけど。」
「そんなことないよ。」
二つの意味で答えて片方は本当は当たりと思う。
「あのさ…」
「我々は!おひとり様である!人は1人でいることで今の世を生き抜ける!我々は!ゾンビになっても!1人で誰にも迷惑をかけることはない!おひとり様万歳!おひとり様万歳!」
シュウジが離そうとした瞬間に駅のロータリーでメガホンを片手に数十人を連れた男が練り歩いている。
「なんだ…あれ。」
「おかしな人…増えたよね。」
ふと女を見るととても冷たい目でその集団を見ていた。
「そうだね。」
シュウジが見ていることに気づいた彼女は破顔するとまた下品に大きな声で笑う。
「だってさ、おひとり様って言ってるのにあんな引き連れてさ。矛盾って知らないのかな!」
集団に聞こえるんじゃないかとシュウジは冷や汗をかきながら様子を見る。
幸い声が届いていないことを確認すると彼女に同調する。
「考えが至らないからあんなよくわからないことするんじゃない?」
「言えてる。やっぱシュウジくん面白いわ。連絡先交換しとこ!」
「そうそう!さっき俺もそれを言おうとしたんだよ。」
それを聞いた彼女は嬉しそうに邪魔するなよなと今も騒いでいる集団に向けて笑うとQRコードを写したスマホを差し出す。




