ゾンビ尋問官
「あー、はじめに…これは形式的なことでもし仮にあなたに人格が残ってることを想定して聞きますが…」
シュウジはそう言いながら頭を掻き、手に持った資料から目線を外さないで続ける。
「三島久美子さん。1982年6月13日生まれ。三重県生まれですか。しかも伊勢。いいですよね、あそこは。いったことはないですけど赤福が美味しい。」
大きくため息をつくと彼は正面にいる彼女を見る。
「うぁーーー。」
久美子と呼ばれた女だったものは呼吸をするたび間抜けな声を漏らす。
「あなたは今心臓も動いているし呼吸もしている。ただ、人格が何かに追いやられているというのが私の所属している部署の見解です。」
そこで一言間を置いてまた資料に目を落とす。
「息子さん。いるんですよね?ご主人もあなたの回復を願ってます。」
それだけいうと満面の笑みで彼女を見つめる。
「私もあなたの回復を心より願っております。頑張って治しましょう。」
それだけいうといつもの繰り返しである質問や世間話をする。
打てども打てども帰ってくるのは間抜けな呼吸音のみ。
壁打ちだって玉は帰ってくるがシュウジのやっていることは底のない奈落に石を蹴落としていく作業となんら変わりなかった。
しかし、部署の方針…国お抱えの権威ある偉いお医者さんが出したものと言ったほうがいいだろうか。
人権を無視せずゾンビを人に戻すための政府好みのやり方をシュウジは繰り返すしかなかった。
こんなことに莫大な予算を使っていると思うと内心バッシングの対象になりかねないと思ったがどこか自分はやらされているだけで関係ないとも思っていた。




