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旅は憂いもの辛いもの

「中島さーん。帰りますよ?今日はサービス残業っすか?飯でも行こうと思ったのに〜。」


シュウジの言葉に顔を上げた中島の顔は今朝より酷かった。


「なんすか、朝から調子悪いっすよ?旅先で嫁さんと喧嘩でもしました?」


中島は力無い笑顔を見せると


「まあ…そんなところだな。うん…。」


「帰りにくいってんならやっぱ飯行きましょ。話くらい聞きますよ!」


「そうだなぁ…。そうだな。いくか。」


見るからに体が重そうに立ち上がる。


昼休み中に桔梗に返信できなかったためかそれ以降返事がない。

それによる寂しさを埋め合わせるため中島に付き合うようで付き合わせていた。



「焼肉定食と…レバニラでしたよね?の定食で!」


店員は元気に返事をして水の入ったピッチャーを置いていく。


店内にはまばらに客が座っている。

炭火を売りにしており炭と肉のいい香りが絶妙にマッチしている。


店についてもいつもの中島ではなく黙りこくっているのでシュウジは正面にあるテレビのニュースを見る。



–––の山道でドライブ中だったカップルがゾンビに襲われたんですなぁ……まあ、あるあるなんですがこれが子供のゾンビだと……今社会問題になってるゾンビになった身内の不法投棄が原因の事件のようでしてね……ゾンビの殺害は罪に問われませんがゾンビの隠匿、不法投棄は罪に問われますからね……政府に保護してもらいましょう。希望を捨ててはいけません。–––



ゾンビ社会になってからの社会問題である身内の不法投棄の話だ。

不法投棄と会う名称がつけられたこと自体反発はあったが人が人にする行為ではないと言う罪悪感を植え付けるためだと聞いたことがある。


「んー、政府のやってることある程度知ってると複雑っすね。治るって確実には言えないし…。自分の子がゾンビになっても預けるのは躊躇うかもっすねぇ。」


「なんで…?」


中島の絞り出したような掠れた声に驚きテレビから彼に目線を映す。


「なんでってそりゃ…。腐っても自分の子ですから…何されるかわからない他人に預けるのはいやかもなぁって…。」


中島は今にも泣きそうな顔で俯いたと思うと突然立ち上がる。

立ちくらみでもしたのか体がふらつき思わず倒れそうになるのを慌ててシュウジは支えに行く。


「大丈夫…。大丈夫だから…。ごめん、シュウジくん。俺行かなきゃ…。やっぱダメだ…。」


「なんの話っすか?今日ずっと変ですよ!」


支えるシュウジの腕を押しやるとフラフラしながら立ち上がりテーブルに一万円札を置いてそのまま去ろうとする。


「いやいや、意味わかんないっすよ。どこ行くんすか!?」


「ごめん、シュウジくん。俺はやっちゃいけないことしたんだ…。もう耐えれない。1日だって耐えれなかったんだよ。警察に行く…。息子を迎えに行かないと…。迎えに行ったらちゃんと自首するから…。」


聞いたことに返事が帰ってこない上に要領の得ない言葉はシュウジに困惑しかもたらさない。


周りの客の目が気になりつつも定食を持ってきてしまった店員さんの手前、性格的にそれを食べずに出ることができなかったシュウジは困惑しながらも中島を黙って見送ることしかできなかった。



それから中島が帰ってくることはなかった。

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