第十六話:光の果てに
眩い光を纏った聖剣を携え、俺は泥を蹴ってノインに向かって走り出した。
前方ではリリスが必死の形相で呪文を唱え、俺とノインの間に立ち塞がる巨大な土人形を呼び出す。
だが、こんなやつに構っている暇はない。
「ガリウス!」
俺の声に、相棒は即座に応えた。
「よし! 来い!」
ガリウスがその巨躯を折り曲げ、踏み台となるべく背中を丸める。俺は加速を緩めることなく、力いっぱいにその背中を踏み込んだ。俺が跳躍する刹那、ガリウスの背筋が爆発するように盛り上がる。
「飛べええええええええ!」
「うおぉおおおおおおお!!」
ガリウスの怪力に押し上げられ、俺は天高く舞い上がった。リリスの放った巨人を遥か頭上で飛び越し、重力に従ってノインへ一直線に向かっていく。
全魔力を注ぎ込んだ聖剣が、夜闇を、豪雨を、そして絶望を切り裂く。
俺は渾身の力を込め、その一撃をノインの眉間めがけて振り下ろした。
ガギィィィィィィィン!!
耳を劈くような衝撃音が響き、ノインの掲げた魔剣が俺の聖剣を受け止める。
一歩も退かぬ両者の力が一点でぶつかり合い、周囲の雨を蒸発させるほどの熱量を生み出す。
だが、一瞬の均衡の後。
ノインの魔剣に、ピシリと無数の亀裂が入った。
パァンッ! と、乾いた音を立てて魔剣が二つに砕け散る。
そのまま、聖剣から放たれた純白の光の筋が、ノインの小さな胸に真っ直ぐに突き刺さった。
「うわぁああああああああああああ!!」
魔王の断末魔が、雷鳴さえもかき消して山頂にこだまする。
同時に、聖剣から濁流のような光が溢れ出し、俺と、そしてノインを包み込んだ。
熱い。いや、どこか温かい光。
その光の中で、俺は糸が切れたように意識を失い、深い闇へと落ちていった。




