第十四話:伝説の集結
「ノイン……俺のせいで……。俺が、お前の悲しみを終わらせる……!」
俺は叫びとともに、聖剣を握り締めノインに向かって一気に切り込んだ。
「アステリオ、俺も行くぞ!」
ヴィンセントが後に続き、二条の鋭い剣光が祭壇を裂く。
その時、玉座に座していたノインが、吸い込まれるような動作で腰の魔剣を抜き放った。
一振り。ただそれだけで、大気を断ち切る一閃の刃が俺たちに向かって伸びる。
「くっ……!」
かろうじてそれを避けた俺は、返す刀でノインに肉薄し、渾身の力で斬りつけた。だが、ノインは表情一つ変えず、最小限の動きでそれを弾き返す。
ヴィンセントが俺の隙を埋めようと踏み込んだ瞬間、その横合から一筋の閃光が放たれた。リリスだ。
リリスの刺突を、ヴィンセントは何とか剣の腹で防ぎ止める。
「リリス……やはり君も、僕たちの邪魔をするんだね」
「…………」
リリスは無言のまま、鋭い連撃を繰り出し続ける。その冷徹な太刀筋には、一分の迷いも感じられない。
「リリス……ならば、僕も覚悟を決めよう」
時折響く雷鳴と、激しくぶつかり合う剣の音が山頂にこだまする。
叩きつける豪雨の中、響き渡る金属音。それは俺には、まるでこの世界そのものが、この救いのない結末を嘆いて泣いているように聞こえた。
一進一退の攻防が続く。だが、麓からの連戦で消耗している俺たちが不利なのは明らかだった。ヴィンセントの呼吸も、既に限界に近い。
(ノイン……強くなったな……)
命を狙い合うこの極限の状況で、俺は不覚にも、教え子の成長を喜ぶ師のような、あるいは子の自立を見る親のような心境になっていた。
激しく剣をぶつけ合い、その衝撃でノインがわずかに後ずさりする。
俺も激しく肩を上下させ、乱れた呼吸を整えようと必死に肺に空気を送り込んだ。
(少し……厳しいか……)
弱気が首をもたげたその時、後ろから聞き覚えのある、これ以上なく不敵な声が響いた。
「子供相手に何やってんのよ。あんた、それでも勇者なの?」
ふっ……。こんな絶望的な状況でまで悪態をつけるとは、流石と言うほかない。
「お前ら、いつまでやってんだ。さっさと終わらせて帰ろうぜ」
ボロボロになり、よたよたとした足取りながらも、ガリウスが不敵な笑みを浮かべて歩いてくる。
二人は俺とヴィンセントの隣に並び立った。イザベラが髪をかき上げ、その魔導カメラのレンズを真っ向からノインに向け、指を差して言い放つ。
「魔王ノイン! 伝説のパーティーが相手になってあげるわ!」
雷光に照らされた四人の影。
勇者、聖騎士、重戦士、魔導士。かつて学芸会で夢見た伝説の姿が、今、本物の絶望を前にして完成していた。




