泥の中の再誕
失意のまま、アステリオは雨の降りしきる家路を辿っていた。
王都へ向かうときはあんなに軽く感じた黄金の鎧が、今は鉛のように重く、肩に食い込む。
途中の小川で足を止め、アステリオは剣を抜いた。
澄んだ水面に、伝説の剣を浸す。刃にこびりついた不快な甘い香りと、赤いソースがゆらゆらと溶け出していく。その様子を、彼は死んだような目で見つめていた。
(……俺は何を期待していたんだ。あんな豚共のために、母さんは……)
水面に映る、惨めな勇者の姿。
その時、胸の奥をざわつかせる異変を感じた。
水面の向こう、対岸を歩く「歪な影」がある。
それは、十年前の平和と引き換えに絶滅したはずの、奇怪なフォルム。
「……低級魔族!?」
喉まで出かかった声を、掌で無理やり押し殺した。
見間違いか? いや、あの禍々しい魔力の残滓、間違いない。
アステリオは音もなく立ち上がると、本能のままにその影を追った。
やがて辿り着いたのは、森の奥深くに佇む朽ちかけた小屋だった。
胸の高鳴りを抑え、戸の脇にある小さな窓から中を覗き込む。
そこで彼が目にしたのは、信じがたい光景だった。
数匹の醜悪な魔物たち。それらに囲まれ、中心で無邪気に笑声を上げているのは――ひとりの赤子だった。




