表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『俺のオヤジが最強すぎて勇者を廃業したんだが ~最強の魔王を育て上げ、俺をバカにした世界に復讐しようと思う~』  作者: autofocus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/54

甘い屈辱

「勇者アステリオよ。その由緒正しき伝説の剣で、見事この特大ケーキを切り分けてみよ」


 王の言葉が終わるか終わらないかのうちに、会場は下卑た笑いに包まれた。


「おおっ! あれがかの伝説の剣か。かつて魔王の城さえも一刀のもとに切り伏せたとか。なれば、このケーキはちと手ごわいですぞ!」


 どこからか揶揄やゆするような声が飛ぶが、俺の耳にはもう何も入らなかった。

 全身が、屈辱の熱で焼かれそうだ。

 昨晩の胸の高鳴りも、形見を磨き上げてくれた母のあの誇らしげな微笑みも、すべてはこの汚物のような連中の「余興」のためにあったのか。


(……視界が、ぼやけやがる)


 奥歯が砕けるほど噛みしめ、自分に言い聞かせた。さっさと終わらせろ。ここに一秒でも長くいてはならない。

 俺は一歩踏み出し、黄金の剣を抜いた。かつて世界の命運を切り拓いたその刃が、今は砂糖とクリームの塊へと振り下ろされる。


 手応えなどない。

 伝説の剣を汚したのは、魔王の返り血ではなく、どろりと甘ったるいイチゴのソースだった。


「――されば、強敵は切り分けましてございます。これにて失礼いたします」


 精一杯の虚勢を、吐き捨てるように告げた。

 背後からは、せきを切ったような爆笑の渦が追いかけてくる。

 城門をくぐり、冷たい雨が鎧を叩いた瞬間、こらえていたものが溢れ出した。


 この屈辱、この痛み。――決して、忘れはしない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ