黄金の遺産
家に着くなり、俺は母が用意してくれていた冷えた料理を口にかき込んだ。
飲み込むことさえもどかしく、酒場での出来事を一部始終、一気にまくしたてる。
「……だから、王が俺を呼んだんだ。きっと、また新しい任務を任せてくれるに違いない!」
母は、不安とも喜びともつかない、複雑な表情で黙って俺の話を聞いていた。だが、話が終わるとおもむろに立ち上がり、部屋の奥から俺を呼んだ。
「アステリオ、こっちへ来なさい」
手招きされるまま母のもとへ行くと、彼女は納戸の隅にある、古びた大きな木箱を指差した。
「生活のために、何もかも売り払ってしまったけれど……これだけは、どうしても手放せなかったの。残しておいて、本当によかったわ」
震える手で蓋が開けられた。その瞬間、ランプの微かな光を反射して、室内が黄金色に塗り替えられた。
「……っ、これは!」
そこには、かつてオヤジが戦場を駆け抜けた、黄金に輝く鎧と剣が鎮座していた。
日雇いの仕事で毎日目にしている、くすんだ鉄屑とは次元が違う。それは、神々しさすら感じさせる、我が家に伝わる由緒正しき武具だった。
「これはお父さんが使っていた鎧と剣よ。明日はこれを着ていきなさい」
母は、祈るように俺の手を握った。
「勇者の名に恥じぬように。……いってらっしゃい、アステリオ」




