老害総帥と、路地裏の広報官(2)
ギクッ!!」
絵に描いたような分かりやすいリアクションに、逆にあきれて俺の怒りは少し収まった。この女、魔族としての実力はあっても、隠し事をする才能だけは壊滅的なようだ。
「……もう一度聞くぞ。お前、王都に忍び込んでいないよな?」
「あ、当たり前じゃないですか! まだ総帥の許可をいただいていないのに、そんな勝手なことはしません!」
リリスは泳ぎまくる視線を必死に俺から逸らし、指示棒を振り回しながらまくしたてた。
「ただ、オフに街へ遊びに行っただけです。プライベートは自由ですよね? まさか部下のプライベートにまで口を出すんですか? それってパワハ――」
「もういい」
これ以上聞いていたら、また別の新しい不名誉なレッテルを貼られそうだ。俺はあきれた口調で彼女の言葉を遮った。
「確かに、お前のプライベートは自由だ。しかし、今は国王軍との戦時中だということを忘れるな。戦時下において、将兵に一切の自由はない。今後、許可なく王都へ行くことを厳禁とする」
「えぇええええ~~~~ん!! ひどい! 独裁者! 老害パワハラ総帥ですぅ~~~~!!」
リリスは幼児のように大声で泣き喚き、魔力を撒き散らしながら執務室を飛び出していった。廊下で待機していた魔物たちが、慌てて避ける気配が伝わってくる。
「……ヴェイル、少し厳しくない?」
いつの間にか部屋の隅にいたノインが、心配そうに俺を見上げていた。その潤んだような瞳で見つめられると、まるで俺が理不尽な悪役を演じているような気分になってくる。
「……厳しくないの! これは組織を維持するための最低限の規律だ」
俺は自分に言い聞かせるように吐き捨てると、逃げるように執務室を後にした。
だが、俺には分かっていた。リリスのあの激しい動揺からして、王都で何かがあったはずだ。それが「ライブのロケハン」程度なら良いのだが、彼女のあの落ち着きのなさは、もっと別の、個人的な「何か」に触れたような気がしてならなかった。




