魔王のインタビュー、俺の冷や汗
俺は昨夜の絶界宮でのやり取りを必死に思い出していた。
「ノイン、いいか。好きな食べ物は?」
「お肉!」
「……何の肉だ?」
「う~ん、捥ぎたてのオオトカゲの足!」
俺は頭を抱えた。それじゃあ配信を見ている人間が悲鳴を上げて逃げ出す。
「いいか、ノイン。油断を誘うんだ。可愛い男の子を演じないと、村を襲うときに効率が悪くなるだろう?」
「わかった。じゃあ、人間のに……オム……ライス?」
「そうだ。それだ」
――予習はバッチリだ。大丈夫だ。俺はサングラスの奥で自分に言い聞かせた。
「みなさ~ん! お待ちかね、魔王様への独占インタビューです!」
イザベラがハイテンションでカメラを回す。
「このちっちゃくて可愛いのが魔王様! こっちのイカした鎧の騎士が、側近のヴェイルさんでーす!」
画面には『可愛い!』『ファンになっちゃう!』とコメントが爆速で流れる。イザベラも公私混同で「まじか……かわいい……」と漏らしている。
「じゃあ質問です! 魔王様は何が好きですか~?」
イザベラがマイク(魔導具)を向ける。俺はノインを見た。目が合う。
「お……肉……」
「可愛い! 男の子だもんね! 何の肉が好きかな?」
「トカッ――」
「ゴホゴホッ!!」
俺は肺が飛び出すかと思うほどの勢いで、わざとらしく咳き込んだ。
ノインがハッとした顔で俺を見、慌てて言い直す。
「……牛さん」
そして、練習通りににこっと笑った。
「いや~ん! キュンキュンしちゃうわぁ!」
そこからは、記憶が飛びそうになるほどひりついた時間だった。ノインが失言しそうになるたびに、俺は咳き込み、グリル(影武者)は鎧をガタガタ鳴らして誤魔化す。
ようやくインタビューも終盤を迎え、俺が安堵の溜息を漏らそうとした、その時だった。
「じゃあ、最後の質問! なんで世界を征服しようと思うの?」
おい、その質問は台本にない。
俺の心臓が跳ね上がる。イザベラは相変わらず自分勝手だ。
魔王らしい冷酷な答えか、あるいは「なんとなく」とはぐらかすか。俺は固唾を呑んで見守った。
「う~ん……」
ノインは少しだけ考え、それから俺の方……いや、俺が耳元で指示を出しているはずの「ヴェイルの鎧」をじっと見つめて言った。
「ヴェイル……のため、かな」




