放送事故寸前のレッドカーペット
「みなさ~ん! 今の、見ましたかぁ!?」
興奮で鼻息を荒くしたイザベラが、爆煙の上がる絶界宮の門へカメラを向ける。
「ものすごい熱烈な歓迎(?)みたいです! あ、オムリンさん、スパチャありがとうございますっ! 『大丈夫か』って? 大丈夫に決まってるでしょ、なんせ今回の私のガードは、あの伝説の勇者ゼニス・レイ・ブレイバーの息子、アステリ――むぐっ!?」
俺は反射的にイザベラの口を後ろから力いっぱい塞いだ。
「ちょっと! 何すんのよ!」
「……すまん。母さんの許可をもらってないんだ。俺のことは、絶対に、秘密にしてくれ」
俺は彼女の耳元で、殺気を込めた声で囁いた。
同時に、カメラがこちらを向くコンマ一秒前に、懐から取り出した漆黒のサングラスを装着する。
「……はぁ? しょうがないわね……このマザコン野郎。顔出しNGなんて、素材がもったいないじゃない」
今すぐこいつを城壁から張り倒してやりたい衝動に駆られたが、ぐっと抑える。
水晶球に映し出される配信画面には、追いきれないほどのコメントが滝のように流れていた。
『今の爆発なんだ!?』
『マザコンwww』
『ガードの人、スーツ似合ってるけど怪しすぎだろ』
……どうやら俺の名前はバレてなさそうだ。
俺はサングラスの奥で、冷や汗を拭いながら門の向こうに視線をやった。
あの爆発……グリルの野郎、せめて「派手に出迎えろ」という指示を、文字通り爆破演出だと勘違いしやがったな。
(……グリル。あとで覚えておけよ。一週間、晩飯抜きだぞ……)
俺は耳元の魔導石に向かって、呪いのような呟きを吐き出した。




