再会はレンズ越しに
魔物が増えて危険は増したというのに、そのおかげで街の景気はすこぶる良い。
平和すぎた五年前には閑古鳥が鳴いていた通りが、今や若者に人気のデートスポットだというのだから、人間の営みというのは皮肉なものだ。
待ち合わせに指定されたのは、そんな通りにある流行りのカフェだった。
店の鏡に映った自分の、相変わらず冴えない「日雇い勇者」の姿を見つめ、一度深呼吸してからドアを開ける。
店内を見渡すが、どこにいやがる。……そう思った瞬間だった。
「アステリオ~! こっちこっち!」
店の奥から、耳にこびりついて離れない高音の声が響いた。
視線を向けると、そこには派手な魔導ローブを崩して着こなし、空中に浮いた水晶球に向かってポーズを決めている女がいた。イザベラだ。
彼女は配信用の水晶球に「あ、今きたのは私の幼馴染でーす! ちょっと地味でしょ?」なんて吹き込みながら、目の前の席に座れと指図してきた。
「相変わらずだな……」
俺は溜息を吐き出しながら、居心地の悪いふかふかの椅子に腰を下ろした。
かつて一緒に戦った魔導師は、今や大陸中にファンを持つ「魔導インフルエンサー」様だ。
「で、急に呼び出して何の用だ。俺はこれから討伐の仕事があるんだが」
「そんな小銭稼ぎは置いといて、アステリオ。あんたにピッタリの『特大案件』があるのよ」
イザベラは水晶球のスイッチを切ると、身を乗り出して、いたずらっぽく微笑んだ。
「北にできたっていう新しい魔王城――『絶界宮』だっけ? あそこに突撃インタビューしに行こうと思うの。あんた、私の護衛としてついてきなさいよ」
「……は?」
危うく、飲もうとしたコーヒーを吹き出すところだった。
自分の城に、自分の偽物を守るために、自分で行く?
あまりに馬鹿げた提案に、俺の頭の中では「勇者」と「総帥」が同時に悲鳴を上げた。




