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みずから

作者: 愛海宕

 サラサラ、サラサラ

と水が流れる音がする

        >

 夫は浮気をしていた

それも私の友人とだ、許せなかった

だから、川へと突き落とした

流れが早く、すぐに見えなくなった

アリバイ工作を終え、家に帰ると

「おかえり」

私を出迎えたのは、夫だった


 私が神妙な顔をしていると、夫は急に「ごめん」と土下座をした

唖然としていると

浮気をしてしまった、すまなかった、愛しているのは君だけなんだ、要約するとこのようなコトを10分くらいだろうか、夫は顔を伏せながら言った

私は「いいよ」と笑顔を作る

「キャンプに行かないか、釣り趣味だろう」

と夫は笑顔でそう言った

 

 サラサラ、サラサラ


 ドボン、と水しぶきをあげながら身体は沈んでいく

あっという間に濁流に飲み込まれ、見えなくなった

罪は水に流す

罪悪感をおし殺しながら、帰路につくと、家から灯りが漏れていた

玄関を抜けて、リビングに、

妻がいた、何事もなかったかのように


 もう新婚といえない時期に魔が差した

アプリで出会った彼女が、まさか妻の友人だったなんて、夢にも思わなかった

口止めし、すぐに別れたが、妻は勘づいているに違いない

最近は目も合わせてくれない

罪は水に流す

大丈夫だ、今までそうしてきたのだから

        <

 妻は薬で眠っている

抱いたまま腰が浸かるくらいの所まで行くと、手を離した

瞬間、寝ていた筈の妻の目がカッと開かれた

そしてガシッと僕の左腕にしがみく

しかし所詮女の力、と手を振り払おうと力を込めると

ドシン、と背中に強い衝撃

足の踏ん張りも虚しく、体が浮いたと感じた瞬間水に流されていた


 プハッと顔を上げると、そこは川の流れが停滞してるのか、ゴミのようなモノが辺りにプカプカと浮いていた

流された場所から、そう遠くはなさそうだが、丁度扇状になっていて砂や石も堆積している

深いが幸い足はついた

ズブ塗れの服で体は重く、異臭もするしで、早く陸地に上がろうとすると、

視線を感じる

水面の中から

一つじゃない、何個も

もつれながら足を踏み出そうとすると

ガシッと足首を掴まれる感触

次いで背中から震える声で

ズットイッショダヨ

目の前が真っ暗になった


 サラサラ、サラサラ

 

 失禁し気絶した夫は、駆けつけた警察に連行されていった

容疑は殺人未遂と、動物虐待

捨てられたペットを引き取り、近くの川に捨てていた、確認できただけでも7件

私には飼ってくれる人が見つかった、と嘘をついていたようだ

何故このようなコトをしたのか

薬剤師の夫は、獣医の養父に何か劣等感のようなものがあったのだろうか

罪は水に流す、とかわけの分からないコトを呟いていたが、今は幻覚幻聴が酷いらしく取り調べが難航してるらしい

夫と浮気をした友人は、コトを知ると即連絡をくれ、真摯に謝罪をしてくれ、色々と協力してくれた

夫が川に捨てたペットを保護してくれ、川に流された私を救助してくれた

川に流されたあの場所で、夫に何が起こったのか

元妻になった私には関係ないコトだ

膝には保護したペットと、飼っていたペット二匹が仲良さそうに丸まっていた

私達は一緒にニャア、と鳴いた


サラサラ、サラサラ


水の流れる音が聞こえる

嗚呼、気づいてしまった

耳を塞いでも、目を閉じても、消えない、消えてくれない

それは、

トプン、と

男は消え、そこには水たまりだけ


私達はニャア、と鳴いた

何度も読めるホラーになってたら幸いです

><

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