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23話『ようやく利点が活かせました』

 中学生になってから新しい友達が出来て、遊びに家に来たりしてくれるおかげで大人から嫌な事をされることがめっきり減った。というか4月の中盤頃から1度もそういうことをされていない。


 中学生活が始まってから良い事尽くめの毎日でボクのメンタルも幾らか回復に向かっているのだと体調からもよく分かる。最近、あんなにキツかった気持ち悪さもないし毎日ベストコンディションだ!



「もぐもぐ。ん、間山さんそれ食べないの? ちょうだい!」

「いいよー」



 気持ち悪さは無くなった代わりに、今までゲロゲロしてた分を取り返すように最近は食欲が漲りまくっている。学校でもすぐに気持ち悪くなるから一瞬ゲロキャラが定着しつつあったが、今となってはそれも払拭されて明るい女子って感じの印象に落ち着いてるみたいだ。


 ……今でも純粋な女子扱いされるのは少しだけ複雑な気持ちはあるけど、1ヶ月もスカートを履いて女子として学校生活を送ってきているからもうそろそろ慣れないとなぁ。



「あんまり食べすぎると太るぞー。星宮、体重とか気にしてないの?」

「んー? んー、気にしてないなぁ。言うてもボクって太りにくい体質だし、大丈夫でしょっ!」

「うわっ、それ急に太りだして後悔するタイプだよ絶対。あんた完食とかもするし、ほんと気をつけなよ〜?」

「大丈夫だって。今までゲロゲロしてた分栄養を取り戻さないと。むしろ痩せ細って餓死しちゃうよ」

「あの吐き癖って主にストレスが原因なんでしょ? 過食も一因だと思うんだけど」

「でも今はゲロゲロしないもん」

「心配だわぁ」



 間山さんは再び話すようになってなんか過保護気味になった気がする。行く先々に着いてくるし男子が絡んでくるとすぐに牙を剥くし。


 まあまた趣味の話をしたり絵を見せてもらったりする機会が出来たからそれは嬉しいんだけどさ。ボクだってヤバそうな時くらい分かるんだし、そんな過保護になってくれなくても……。



「駄目。星宮、自分が可愛いの分かってるくせに無防備なんだもん。危なっかしいったらありゃしないよ」

「うんまた口に出してた? 出してなかったとしたら考えてる事を引き当てて返事するのやめてね。怖いから」

「目を見れば何を考えてるかくらい分かるっつーの。まったく。この前1人にしたらあの谷岡(たにおか)って奴に告られてたじゃんか。あたし見てたからね、アレ」

「あれね〜」

「まだ中学生になってすぐだってのに、男子まじで見境ない!」

「まあ係が同じだから会話する機会も多かったし、そういう事もあるでしょ」

「ないから! 出会って1ヶ月もしてないのに告るってなに!? 意味分かんない!」

「あ、あはは」



 間山さんだって初登校日の時に『滾るぜ』って言ってた男子に告られてたじゃないか。というか今朝も告られてたじゃん。自分もそういう経験をしておきながらないって断言できるものなんだね。間山さん曰く、あの人は頭がおかしいから例外らしいけども。



「中学生にもなると恋愛とかの話が議題にあがりがちだもんねー。恋人がいる先輩だって沢山いるし、きっとそんなもんなんだよ」

「はぁ……周りに流されて付き合いだすような自分がない奴なんかと誰が付き合うかってーの」

「間山さんってどんな人がタイプなの?」

「む。星宮から女子っぽい話題が飛んできた」

「仮にも女子だからね〜。で? いるの? 理想のタイプとか」

「…………いるにはいるけど。星宮には言えないかな」

「えー!? なんでさ!」

「なんでも! 秘密!」

「なんだよー、言えよー」

「よいしょ」

「えっ? えっ、ちょっ、間山さっ、うひゃっ!?」



 しつこく聞いてやろうとしたら間山さんが立ち上がってボクの背後に周り胸を鷲掴みにしてきた。そのままモミモミと揉みほぐされ、情けない声を上げてしまう。



「やめてよ〜!」

「あたしの弱みを握ろうなんて100年早いっつーの。食らえっ」

「ちょちょっ、ブラがズレちゃう……!」

「なーにイチャついてんのあんたら……」

「おい始まったぞ! ほしまやコンビのエロタイムだ!」

「「「おぉ……!」」」

「男子が見てるから二人ともやめなさい」



 間山さんの隣に座っていた女子が立ち上がり、手を伸ばしてボクと間山さんの頭にチョップしてきた。間山さんはすぐに血相を変え、目を尖らして男子達に「何見てやがる猿ども!」と殴り込みに行きかける。慌てて立ち上がり間山さんを羽交い締めにし落ち着かせる、いつもの流れだ。



「も〜! なんですぐに頭に血をのぼらせるかなー!!? 君達もこうなるって分かってるんだから口に出さないでよ!」

「! という事は黙って見てろって事か! い、いいんですか女神星宮様!!」

「いいわけないでしょ!?」

「よーしコイツから殺してやる。八つ裂きだ」

「間山さんっ!!! もー! 昔から何も成長してなーい!」



 小学校の時の海原くんと口論してた間山さんと全く同じじゃないか。なんで制服に袖を通す歳になったのに未だ仲介するポジションにならないといけないのかね。その星の元に生まれてきたのか? 役割過多だよ!!!



「ははっ。いつも大変そうだね、星宮さん」

「そう思うなら止めるの手伝ってよ谷岡くん……」

「!? 谷岡っ、まだ星宮を狙ってるかー!」

「間山さん間山さん。間山さんっ、力強いよ!? 間山さんっ!?」

「あの時は邪魔が入ったから辞めざるを得なかったけど、結局告白の返事を貰ってないからなぁ」

「黙れ! あんたとの交際は認めない! 認めませんからねあたしは!!」

「いつの間に母親ヅラなんてするようになったの!? 谷岡くんも煽らないでよ! わー!?」



 暴れる間山さんに振りほどかれ、バランスを崩した所で谷岡くんに抱き留められる。それを見て間山さんがさらに怒り、谷岡くんに掴みかかっていた。


 もうどうにでもなってくれ。小学生の時みたいな暴力は流石に間山さんもしなくなったし、谷岡くんならなんとかなるだろう。ボクは彼女の暴走を制止するのを諦め、自分の席に着く。



「いつもいつもよく飽きないよね〜間山劇場。星宮さ、疲れないの?」

「疲労困憊ですが……」

「お疲れ様ですね」



 先程チョップしてきた女子と、その子とは逆サイドに座っているお淑やかな女子に励まされ、頭を撫でられる。間山さんが暴走機関車な分、他の周囲の女子が良識的な子達で本当に良かった。その優しさが心に染みるよ……。



「ふふっ。でも間山さんも楽しそう。本当はああいう風に、男の子と派手に遊んだりするのが好きなんだろうな〜。ちょっと羨ましい」

「いや。冷泉(れいせん)、あれは多分楽しんでないよ。本気で相手を滅するつもりで攻撃を仕掛けてるでしょ」

「あら。与能本(よのもと)さんはそう見えます?」

「そう見えなきゃおかしいでしょ。胸ぐら掴んでるよ」

「気安さをアピールする為のコミュニケーションですよ、きっと」

「学ランの首の所、あんな乱暴にしたら形が崩れちゃうんじゃないの……?」



 二人が間山さんと谷岡くんのやり取りを見て口々に感想を言い合う。ボクも与能本さんの意見に同意だな。あんなコミュニケーションがあるとしたらそこは修羅の国だよ。ヤンキー漫画でしか見ないよあんなの。



「間山って昔からああなの?」

「割と昔からああだよ。いっつも男子と喧嘩してる」

「はぁ〜、なるほど。男嫌いなのかねぇ」

「どうだろう。別に男自体は嫌ってる風には見えないけど、でも幼馴染の男の子と毎日喧嘩してたなぁ」

「そいつが原因か」

「いいですねぇ幼馴染。対等に殴り合える関係……」

「お嬢様な冷泉には馴染みのない存在だもんね。にしても毎日喧嘩してるってのはよく分からないけど。普通はもうちょっと仲良いもんじゃない?」

「ボクもそう思う。ホント、なんであんなに仲悪いんだろうね」

「逆に星宮はなんであんなに溺愛されてるのさ?」

「ボク?」



 与能本さんに話を振られて、冷泉さんも興味津々な目でボクを見てくる。うーん、なんで溺愛されてるか? そんなの考えたこともないな……。



「思い当たるとしたら共通の趣味があるから、とか?」

「なんじゃそりゃ。普通の友達と変わらないじゃん」

「だよね。なんでなんだろ」

「間山さんってよく星宮さんのお胸をモミモミしてますよね。女の子が好きとか?」

「確かにそれはあるかも。揉むだけなら自分も立派なもの持ってるしね」

「そういう趣味だとしてもボクに矢印が向くのは意味分かんないんだけどなぁ……」

「なんで? 顔良いじゃん、星宮」

「いやぁ」



 そういう問題じゃなくて、元々男だからねボク。このクラスじゃ間山さんしか知り得ない情報だけどさ。そこも相まって不思議なんだよ。



「星宮の胸が特別揉み心地良いとか?」

「なあにそれ。別に普通だと思いますけど」

「分からないじゃん。ねねっ、試しに午後の体育の授業の時さ。更衣室で揉ましてよ」

「!? な、なんでさ、嫌だよ!?」

「えー? 間山ばっかりずるーい。ねぇ、冷泉?」

「ずるーい!」

「いやいや……」



 絶対にボクの胸がどうとかって話は関係ないから。まじで普通の脂肪の塊だからねこれ。揉むとか冗談じゃないよ、ただでさえ更衣室で下着姿になってる女子の方を見れないのにそんな接近されたら気が狂うよ!



「星宮さん。私も、女友達とお胸を揉み合うみたいな事してみたいです。だからお願いっ!」

「与能本さんとしてみたらどうでしょうか……?」

「それは以前しました!」

「した事あるんじゃん。ボクの胸に拘る理由がなくなりましたね!」

「えー。でも、与能本さんのお胸はささやな膨らみ程度しかないので、叶うなら真ん丸なお胸も体験してみたいです……」

「え、喧嘩売ってる? 冷泉???」

「いひゃいひゃーい!」



 胸の大小の話を持ち出した冷泉さんのほっぺをギューッと摘む与能本さん。仲良いなあ。二人でもう完成されてる絡みじゃないか、ボクを巻き込まなくても百合の花園は出来上がってるじゃないか。そこだけで収まるのは駄目なのだろうか。



「というわけで後で、よろしくね星宮!」

「待って待って。ボク一言も『良い』とは言ってないよ?」

「駄目なん?」

「駄目なのですか?」

「目をウルウルさせるのやめて? なんで二人ともそんな絵文字みたいな顔できるの。やめて?」



 この二人が仲良いのって、出席番号で連番になるからって理由以外にも根本的な性格が似てるからなんだろうな。奇跡的なくらいに相性バッチリなんだろうね。二対一か、勝ち目ないなぁ。



「はぁ……分かった。一揉みだけね」

「「やったー!」」



 二人は共に喜びを分かち合うハイタッチをする。

 他人の胸を揉むだけでそんなに喜べるものなのだろうか? ……いや、喜ぶな。かくいうボクも二人に『胸揉んでいいよ!』なんて言われたら飛び跳ねて喜ぶもん。中身が男子だからね、それはもう大喜びですよ。


 や、その理論で行くとこの子達は中身も女子だからおかしいか? 人類みな女の子のおっぱいが好きなのだろうか。統計を取ってみたいな。



「む。星宮が女子と交友を深めている」

「あ、帰ってきた。おかえり間山」

「おかえりなさい」

「二人とも、星宮はあたしのだかんね!」

「ボクはいつから君の所有物になったんだ」



 戻るなり与能本さんと冷泉さんにも何故かバチバチと火花を放つ間山さん。二人は笑いながらその火花を受け流していた。本格的に女好きだと思われるよ間山さん、いいの? レッテルを外すのは骨が折れるぞー。



 給食の時間が終わり、中休みを経て5時限目が始まる。授業内容は二時間ぶっ続けの体育で内容は男子はグラウンドでソフトボール、女子は体育館でバレーボールとなっている。



「うぉうっ……」



 今日は遅れて更衣室に入ったので、既に何人か着替え始めていて何人かの下着姿を目撃してしまった。最初は役得だなぁって喜んでいたけど見る度に気まずくなって気恥ずかしくなってしまった。他人の女の子の綺麗な肌とか見てるとこう、ドキドキして落ち着かない。


 体が女の子で良かったって毎回思う、変な気持ちになってもそれが外的要因でバレることは無いからね……。



「や、遅かったね星宮」

「うっ、間山さん! 下着姿で話しかけてこないでよ……」

「いい加減慣れなさいよ。いつまで男だった頃の感覚を引きずってるのさ?」

「そんな事言われても慣れないよぉ……」



 間山さんは特に目に毒だ。周りの子よりも美人さんだし、胸も中学生にしては立派すぎる物を持ってて下着に締め付けられて窮屈そうに谷間が出来ているから目のやりどころに困る。外見は完全に大人の女性って感じがして、近付かれるとそれだけで後ろめたい気持ちになってしまう。



「よっ、ほーしーみやっ」

「こんにちは〜」

「わわわっ、二人とも!? なんでみんなブラの状態で話しかけてくるの!?」



 間山さんに続いて与能本さんと冷泉さんまでもが下着姿でこっちに話しかけに来た。羞恥心はないの!? なんでそんなっ、ほぼ裸の状態でこっちに来るのさ!?


 ひえ〜! 三人の女の子が肌面積ぱーぱーな状態でボクを取り囲んでる! 女子に取り囲まれるイベントは過去にもあったけど、あの時よりも露出度が増してるせいで心臓が苦しいよ! 見方によっては天国、でも現実は緊張と恥ずかしさで変な汗が出てくるよ!!!



「なになに二人とも。星宮はやらないぞー」

「はいはい。その子は間山のお嫁さんだもんね。分かってる分かってる」

「お嫁さん……っ」



 はいそこ。なんで赤くなるんですか間山さん。明らかに冗談でしょ。ガチっぽい反応するのは絶対におかしいからやめなさい。



「見てください皆さん。このショーツ、可愛くないですか?」

「え? わ、ほんとだー! 模様がついててスケスケだ。蝶々じゃん?」

「へぇ、こんなのあるんだ?」

「えへへっ。良ければ今度皆さんで一緒にショッピングに行きませんか? うちで車を出すので、隣町まで買いに行きましょうよ!」

「いいの? わー、それ絶対行きたい! 星宮も行くよね!?」

「え!? え、あ、行くー……」

「よし決定!」

「でも冷泉、それヤバイ所まで透けちゃわない? エロくない?」

「えー? いいじゃないですか、オシャレは自分の好きなように、ですよ! それに、いつかこういう姿を見せられる殿方と出会った時のための勉強にもなりますし!」

「勉強ねぇ。でもこことかほら」



 与能本さんが冷泉さんのパンツのある一部分を指さす。……ぐ、男の本能がっ、際どいとかいう情報を耳にしたせいで男の本能がそれを見たくてボクの眼球を遠隔操作してくる。抵抗できないぐぐぐぐぐっ!!!



「ほら。おしりのライン見えちゃってるじゃん」

「わひゃっ!?」

「うおっ!? ど、どうしたの星宮、いきなり……」



 冷泉さんのおしりのラインを、パンツ越しとはいえ見てしまいました。くぅ〜、透けてるというかもう若干色が乗ってるだけだったなぁ今の! エロいなぁ!! そんなもの学校に履いてきてスカート捲りされたらどうするつもりなんだ〜! 捲ってくる変態男子いるだろうちのクラスに〜!!



「それさ、可愛いのは認めるんだけど心配が勝つよ。アホ猿の垣田(かきだ)にスカート捲りされたら一大事じゃない?」

「今朝されちゃいました……」

「間山。後でアイツ殺そう」

「そうね、殺そう。殺すまで行かなくても、記憶消えるくらい殴っておかないと。冷泉さんが可哀想だ」

「賛成。ボクも手を貸すよ」

「さ、三人とも。そこまでしなくてもいいですよ〜」

「駄目だよ冷泉さん。男子にそんなエロい下着を見せるだなんてご法度だからね。万死に値するよ。殺さなきゃだ、その資格を今この瞬間ボク達は手に入れた」



 自分の事は棚に上げてとりあえず垣田くんを処刑する事が確定しました。奴め、うちのクラスが誇る至高の宝である冷泉さんになんて蛮行を。許せない!!!



「わ、私の事はいいですよ〜。それより星宮さん!」

「はい?」

「お胸、揉ませてもらう約束ですよ!」

「おはよう冷泉さん。今日は寝坊した〜、おかげで大遅刻しちゃったや。今日は5限からの出席になったよおはよう」

「通るわけないでしょ」



 与能本さんにセーラー服の前ファスナーを摘まれる。ボクは慌ててその指に手を添えた。



「ぬ、脱がせる必要は無いよね!? 服の上からでもいいはずだよ!」

「え? なんで。生乳揉んじゃ駄目なの?」

「生は駄目じゃない!? ブラ越しですらないの!?」

「別にブラ越しでもいいけど」

「ブラ越しでも嫌だ! 服越しで!」

「え、なに。二人とも星宮の胸揉むの? あたしも揉む!」

「いつも揉んでくるでしょ!!」

「いつも服越しじゃん。二人だけずるいじゃん」

「なにが!? 服越しでもブラ越しでも揉んでる事には変わらないよね!?」

「ならブラ越しでもよくない?」

「ですよね。私もそう思います」

「は、恥ずかしいから駄目!」

「恥ずかしい? ウチら女子同士じゃん。別に良くない?」

「同じ構造の体してんのに断る理由とかないよねー」

「ですよね。私もそう思います」

「厳密には個人差があるので同じ構造とは言い難いでしょ! あと冷泉さん、期待に目を輝かせてbot化するのやめて! 近いよ!!!」



 冷泉さんがピタッと体をくっつけてくるせいで、その、足とか腰とか、女の子の素肌の感触が直に伝わってきていよいよテンパりそうになる。



「冷静に考えてみ? 来週宿泊学習あるじゃん?」

「あるね! それがなんでしょうか!」

「あれさ。確定でウチら一緒にお風呂入るじゃん?」

「えっ」

「同じクラスだし。女子だし。1番絡んでるのウチら4人だし、この4人が固まってお風呂入るの確定じゃん? てか部屋一緒にするじゃんね?」

「間違いない。あたしらよんこいちみたいな感じだし」

「てなると。その時確定で裸の付き合いするわけだし同じ部屋で着替えるわけだし一緒に寝るじゃん」

「えっ」

「えっ、じゃなくて。そういうイベントが控えてるんだから、ここで渋ってもしょうがなくない?」



 一緒に……お風呂!? 女子と!? 混浴ですか!?


 いやこの場合肉体性別は同じだから混浴とは呼ばず通常正常の入浴という形にはなるんだけどそれにしても同い年の女の子とすっぽんぽんになって同じ湯船に浸かるのまじかやばすぎないかそれは!!?!?



「いや唖然としてるけど。小学校の修学旅行はどうしてたんだよ星宮は」

「あー。この子、小学生の時長期休学してたから修学旅行には行ってないのよ」

「そうなの? なんで?」

「骨折して入院してたんだよね」

「へー」



 間山さんが瞬時に気を利かせて辻褄を合わせてくれたけど、ボクは頭に受けた衝撃を上手く処理出来なくて固まり続けていた。


 女友達とのお風呂。そんなイベント人生で1度も体験した事がなかったから飲み込めない。情報が絶え間なくボクの中に流れ込んでくる。やばすぎるよ、それを敢行したらボクは女の体を利用してる卑怯な性犯罪者になってしまうよ!!!



「だからここで生乳を揉んだとしても問題なくない?」

「ももももっ、問題はあるよ! 生である必要はないよね!?」

「ウチは生乳揉みたいもん」

「おかしくない!? た、他人の生乳とかっ、揉みたいものかなぁ!? 気持ち悪くないですか!?」

「なんで? 星宮は気持ち悪いって思うの?」

「ボクは揉みたいよ。エロいもん」

「うん全く同じこと考えてるけど」

「しまった!!!」



 やっべテンパって普通に本音を口にしてしまった。何やってんだよボクの馬鹿、キモい事言っちゃったよ。てか同じ事考えてるの? 与能本さんも中々にキモいよそれは。



「もう良くないですかー? 星宮さんのおっぱい早く揉みたいですー」

「それもそうだね。えいっ」

「こらー!?」



 勝手に与能本さんがファスナーを下げてボクのセーラー服の全面を開け放ってしまった。そこで何故かボクを援護してくれるはずの間山さんが与能本さんの事を手伝いだして、あれよあれよとしている間に上半身の服を剥かれてしまった。


 三人の女子の目の前でブラジャー姿にされてしまった。ボクは腕で体を抱くようにして胸を隠す。



「なんで隠すのよ?」

「か、隠すでしょ! 恥ずかしいの!」

「ウチら普通に上裸だけど?」

「そっちが感覚おかしいんだよ! 普通隠すでしょ?」

「隠す?」

「男子いないし隠す意味無くない?」

「私もよくわからないです」

「背水の陣!? 孤軍奮闘!?」



 なんでみんな平然としてるのさ、男子同士でも小3辺りからちんこ見せびらかすの恥ずかしいってなったぞ! 女子にとっての下着は男子にとってのちんこみたいなもんでしょ! 見られたくないでしょ!? 見られたくないよー!



「星宮。きょーつけ」

「無理だよ!」

「きょーつけしないとくすぐるよ」

「なんでさ!? なんでそんなっ、あひゃっ、ちょっと間山さっ! んぁっ、ふははっ!!」

「なんでちょっとエロい声出したの今……?」

「出ちゃったんだよぉ!!」



 腰をくすぐられて出したくもない声が出てしまった。しばらくくすぐられた結果、ボクは抵抗を諦めて胸を隠していた腕を退かした。



「うぅ……」

「おー。やっぱり大きいねえ星宮」

「間山さんとどっちが大きいんです?」

「あたしの方がでかいもーん。多分」

「でも星宮のも中々だね。揉まれて育ったんかー?」



 ……でしょうね。知らんけど。数え切れないくらい揉まれて吸われたんでそのせいで成長したのでしょう。そういう事にしときますよ。


 あぁ、顔が熱い。ロッカーのプチ鏡に映ってる自分の顔が真っ赤だ。当たり前だよ、メンタルが回復したせいで、家で大人に裸を見せてた時よりも何故か今の方が恥ずかしいもん。ちょっと目尻に涙溜まってきてる気がするし……。



「じゃあ私からいきますね」

「どうぞ……」

「……おぉ。柔らかい!」



 若干背の低い冷泉さんに下からふわっ、ふわっと胸を優しく上下に揺らされる。一揉みって言ったじゃん。揺らされるとか聞いてないのですが……。



「すごーい! ふわふわしてて確かな重さがあります!」

「ウチも……おぉ。ほんとだ、ふわふわしてるー」

「だよねー。モチモチのふわふわなんだよこの子の胸」

「間山さんはもう少し遠慮を覚えてください……」



 冷泉さんも与能本さんも探り探りって感じで優しく触ってくれたのに間山さんはもう慣れ親しんだかのように揉んでくるんだよな。


 普段はセーラー服越しだからまだマシだったけど、守るものがブラだけになった今ダイレクトに胸を揉まれてて羞恥心がメキメキ攻撃される。自分の胸が揉まれて形を変えるのをなんでボクが見なきゃいけないのさ。拷問かこれは。



「これは、確かに揉み心地がよかった。良いお胸でした」

「また揉みたいです! いいですか、星宮さん?」

「嫌です」

「ま、あたしの目がある所でなら許可してやってもいいけどね」

「さっきからどの立ち位置なのさ。間山さんは」

「あっはっは! まあ、顔を真っ赤にするくらい恥ずかしい思いだけさせるのも悪いしここはお礼に。ウチの胸も揉む?」

「えっ。……えっ!?」

「ほら、人生ギブアンドテイクじゃん? 胸を揉んだら胸を揉ませないと、イーブンじゃないじゃん?」

「ですね。星宮さん、私のお胸もどうぞ」



 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


 与能本さんと冷泉さんが腕で胸を持ち上げるようにしてボクに向かって身を向けている! もう普通に下着姿を見ちゃっているが、その葛藤も吹き飛ぶくらいのハッピーサプライズが目の前に陳列されている!!


 正直に言う、興奮してます。まじで! やったあ!! 合法的に女の子の胸を揉んでいいというお許しが出たぁ!!!



「で、では失礼して」

「あんっ」

「!!!!!!!!」

「ちょっと冷泉、エロい声出すなよー」

「ご、ごめんなさい。こんな事されるの初めてなので……」

「!!!!!?!?!?!?」



 試しに体はちっこいながらもそこそこの膨らみを持つ冷泉さんの胸を揉んだら彼女は色っぽい表情で色っぽい声を出した。クラスのみんなから守るべき愛玩対象、理想のお嬢様、深窓の令嬢と揶揄される女の子のそんな姿を引き出せた事に胸が弾む。こんな事、本当に法律で許されていいのでしょうか!?



「ほれ。ウチのもどうぞ」

「!!!」



 冷泉さんの胸の感触と反応の余韻を楽しんでいたら横から与能本さんが手を取ってきて、彼女が自分でボクの手に胸を押し付けた。大きさは確かにささやかではあるが、積極的にそういう行為をしてくれる事に謎の興奮を覚えて二度目の衝撃が頭に響き渡る。うーん、人生勝ち組だあ!!



「ほ、星宮」

「! 間山さん……!」

「…………あたしのも、揉む?」

「揉みたいです!」

「っ、そ、そう。そうなんだ。……じゃ、いいよ?」



 エロいよ? なんかもう、エロいよ。間山さんは二人と違ってノリノリって感じじゃなかったけど、今更彼女も少し恥ずかしがりながらも大きな胸を腕で支えてこっちに差し向けてくるからそのいじらしい姿に鼻血を噴き出しそうになる。噴き出さないけど、漫画じゃないからね。


 てか、顔赤いなあ。ボクと同じようにそういうことをするのは気が進まない性質なんだ。でもボクは揉まれたからね、容赦はしないよ。



「一気に三人の女子の胸を揉んでしまった……柔らかかった」

「そりゃ脂肪だから柔らかいだろうね。そんな事より星宮」

「この体になれてよかった……!」

「星宮」

「くぅ〜っ、この感動は一生忘れな」

「そろそろ授業始まるよ?」



 この場に残った間山さんがそう言った瞬間、始業のチャイムが鳴った。ボクは未だ体操服に着替えておらず、上はブラジャーで下はスカートのまま喜びを噛み締めていた。



「あっ」

「あたし、行くからね」

「待って間山さん! 待って!」



 呆れたようにため息を吐くと、間山さんはパタパタと更衣室を出ていった。既に間山さんも遅刻扱いになってるだろうに、着替えに時間がかかるボクを見捨てて先に体育館に向かうなんて酷いよ!


 ……てか、確か間山さんは体育係じゃなかったっけ。ということはあれか、遅刻とは言っても授業の準備してたって言い訳が使えるのか! 卑怯だ!? ハナから自分だけ生き延びれること分かっててボクに長時間胸を揉ませていたのかーっ!!!


 その後、遅れて体育館に到着したボクは予想通り体育の先生に怒られた。その先生、学校の中でも厳しい方の先生だったので最早半べそをかくまで怒られまくって、授業の後片付けまで命じられた。トータルで言ったら全然マイナスである。


 はあ。欲望に忠実になりすぎると身を滅ぼすんだなぁ。また1つ、ボクは賢くなりました……。

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[一言] 憂ちゃん、それ安定期ってやつじゃ…… 生理について言及してないけど、来てるよね?来てるって言って! うぁん、助けてぇ……(だがそれが良い
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