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どらたび~ドライブ女子の旅物語~  作者: yuuki
そうだ、海行こう
8/10

写真とお昼と

エピソードタイトルを考えるのが大変になってきた。

「いやー、まじかぁ…」

車から降りた湊さんが呟く。

「加奈さん大丈夫でした?」

同じく車から降りた私は、ヘルメットを脱いでいる加奈さんに声をかける。

「あっ、はい!私はギリギリ…」

時間は遡って数分前。

三台揃ってコースインした私たちは、話していた通り、一周目はコース確認、二周目からアタックをしていた。

しかし、走ること六周ほど。

加奈さんの目の前で周回遅れのクルマがスピン、そのままクラッシュしてしまった。

加奈さんはギリギリで回避。その後も二次被害なく走行中止となったのだ。

クラッシュしたクルマは回りながらバリアに突っ込んだため、フロントバンパーがひどいことになっていた。

兎にも角にも走行中止となったので、各々戻ってきたというわけだった。

「俺も結構頑張ってたのに、加奈さんめっちゃ早いですね…」

湊さんが汗を拭きながら加奈さんに言った。

加奈さんは3リッターのスープラを手足のように扱い、えげつないタイムを記録していた。

タイヤのグリップをしっかり使って走っているさまはとてもかっこよかった…。

湊さんも限界ギリギリで、ちょいちょいリアを滑らしながらコーナーをクリアしていた。

なんならもはやあれはドリフト走行ではないか…?とも思えるほどだった。

私も結構頑張って踏んでいたのだが、マシンパワーの差も相まって全然追いつかなかった。

「シフトもブレーキも加速も滑らかすぎですよね」

私も湊さんに共感の意を示す。

とはいっても、湊さんもなかなかエグイ走り方だったから、人のことを言えた立場ではない気もするが…。

というところで

「みんな大丈夫ですかー!」

と、結衣さんが戻ってきた。

ストラップでカメラを首から下げ、走ってきたようだ。

加奈さんはそのまま膝に手を付け息を整えて

「大丈夫でした!?」

と、改めて訊きなおした。


「おー…」

結衣さんのカメラを皆でのぞき込んで写真を見る。

これは…想像以上に腕がいい!

写真については詳しく知らないが、明るさや背景のぼかし。スピード感の出し方などがすごく上手い。

SNSに上げたら結構いいねとかつくのではないだろうか?

「あっ、この写真とか結構いい」

加奈さんが一つの写真に目をつける。

見てみると、真っ赤なスープラが画面いっぱいに写っていた。

コーナー出口の写真のようで、タイヤを見ると、ステアリングが切られている。

疾走感もあり、とてもかっこいい写真だ。

「これは結構私も自信作ですよ!あとで送りましょうか?」

そのまま、別の写真も表示していく。

「うわっ…」

湊さんが写真を見て顔をしかめる。

シルビアがリアを流しながら走り抜けていく写真だった。

”速いドリフト”と称される走りだろうか。角度もつていないが、カウンターは少しだけ当たっている。

普通にかっこいい写真だが、湊さんは何がそこまで不満なのか…

「この写真、お父さんに見せていい?」

結衣さんが悪戯いたずらっぽく湊さんに訊く。

「いや…やめて?マジで」

湊さんに訊くということは、ここでいうお父さんは結衣さんではなく湊さんのお父さんのことだろう。

何気に忘れていたが、このシルビアは一応湊さんのお父さんのクルマだ。

ここまでタイヤをゴリゴリ使っていたら、怒られたりするのだろう。

しかも、タイヤを酷使するドリフト走行なんて…。下手するとタイヤ交換まっしぐらだろう。

「いやー、毎度毎度ドリフトなんてするから怒られてたのに、懲りないしなー」

写真を消そうとする湊さんと、手が届かない様にカメラを高く持ち上げてひらひらと振る結衣さんの攻防を私と加奈さんが眺める。

なんか、いいなぁ、こういうの。

加奈さんの方を見ると、ちょうど同時くらいにこちらに顔を向けた加奈さんと目線がぶつかり、少々見つめ立った後、二人そろって吹き出して笑いだしてしまった。

自分たちを見て笑われたことに気づいたのか、カップル二人も喧嘩をやめて笑い出した。

しかし、結衣さんはカメラを背中に隠して守り通していた。

ひとしきり笑った後に再び写真を吟味し、後々写真をもらうことにした。

適当に部屋に飾っておこうと考えながらスマホの時計を見ると、十一時五十分。お昼ごろど真ん中だ。

時間を意識したとたん、思い出したかのように空腹感を感じた。

「あのー」

走行タイムを見比べてわいわいがやがやしている三人に声をかける。

「もう十二時ですけど、お昼ご飯とかどうしますー?」

皆、ふと気が付いたように時計を見て、皆、そろって顔をしかめる。

「…なんか、気にしちゃうとお腹減りますねー…」

加奈さんがスマホをしまい、帰り支度を始める。

「適当な場所でお昼ご飯でも食べましょうよ!」

結衣さんもカメラを仕舞い、目を輝かせながら提案する。

「ありあり!どっかいきませんか?」

湊さんも結衣さんに同意する。

「といっても、モノ片づけないとですよ!でもそれより…」

加奈さんが言葉を詰まらせる。なんだか少し察しがつくような気がする。

「加奈さん?どうしたんですか?」

結衣さんが不思議そうにたずねる。

加奈さんが開けっ放しのドアからスープラの車内を指さす。

「が…ガソリンが…なくなっちゃいまして」

サーキット回終わりまーす!お疲れ様でしたー!

今回の度ももはや土曜のお昼…。終わりも近づいてきてますねぇ…。

仕事が…近づいてくる…。麻衣さんはなんだかんだ仕事楽しんでそうだけど。

次はどこに行ってみようかなぁ…

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