ドライブなかまたち
ゆっくりと旅へ…
「へぇ~…」
現在私は加奈さんのスープラを覗かせてもらっている。
真っ赤な車体にタンカラーのシート…。合う…とても合う…。
「このタンカラーもカスタムのやつで…。RZ限定なんですよ!」
さすがはスープラ。七百万円に納得できる豪華な内装だ。
BMW製だけど。
「というか、スープラって8速ATじゃありませんでした?」
車内を堪能していた視線を加奈さんの方に向ける。
「二年前とかかな…マニュアル仕様が出たんですよ。それ見てこれだっ!ってなって」
「一目ぼれですか」
「前々からスープラ買おうと思ってたんですけど…まぁそんな感じです」
「実は私も一目ぼれなんですよ。ND」
一目ぼれ同士ということもわかり、二人そろって少々にやにやする。
というところで、私のスマホから通知音が鳴った。
「すいません、ちょっと連絡が…」
カバンからスマホを取り出し、画面を確認する。
「ちょ、ちょっと待っててください!」
連絡の相手を見て驚いた。昨日のカップルの彼女さん…小林結衣さんだった。
『今日って暇ですか?』
『まだ近くにいるならドライブ行きませんか?』
なんてこった。予定の渋滞が発生してしまった。
というか、確か結衣さんは免許を持っていなかったはずなので、運転するのは彼氏さん…中村湊さんのはず…。
だがそんなことより先に訊くことがある。
「加奈さん…メンツ増えるのアリですか…?」
数十分後、さすがにファミレスの駐車場に長居するのは憚られ、こちら側から湊さんの家に向かうことにした。
とは言ったものの、奇妙な光景だ。
ありがたいことに中村家の空きスペースを一時的に駐車場として使わせてくれるとのことで停めたのだが…。
「こんなのSNSでしか見たことないんだけど…」
加奈さんの呟きに結衣さん除く全員で頷いた。
NDとスープラが一軒家に停まっているだけでもなかなか変なのに、中村家の車もさすがは湊さんがサーキットに行くだけはある。
「確かこれって…シルビア?」
「そうですそうです。S15シルビア。親父のやつですけどね」
日産のS15シルビア。しかも、ある程度チューニングが入っているものだった。
NDとスープラとシルビアが横並びに…。とても写真が撮りたい光景であるが、さすがにそろそろ結衣さんが蚊帳の外すぎるため、本題に入る。
「それで、ほんとにって言うとアレですけど、一緒にドライブってことでいいんですか?」
三人の方に顔を向けながら訊いた。
「いや…逆にほんとにご一緒させてもらっていいんですか?」
湊さんが加奈さんの方に目を向けながら心配そうに言った。
私もなかなか無理を言ったものだ。予定を無理に合わせようとした結果、初対面同士を会わせてしまった。結構マジで申し訳ないと思っている。
「えっ、あっはい!全然大丈夫ですよ!ぜひぜひと言うか…」
加奈さんが陽キャパワーに負け、目をぐるぐるさせながら返答した。
「ほんとに大丈夫ですか?」
いつの間にか湊さんの横から移動していた結衣さんが加奈さんにこっそり耳打ちをする。
「あっ、はい!大丈夫です」
加奈さんが少々もじもじしながら答える。
やはりこのカップルのコミュ力、バケモンではないだろうか。私も見習いたいものである。
「それじゃあ、加奈さん先導で。一応ナビ付けといたほうが良いと思います」
加奈さんの方を向いて、「いいですか?」とアイコンタクトする。
「了解です。ごめん、結衣ナビお願い」
「はいはい、いつものね」
いつものことなのか…。
結衣さんがやれやれ…という感じにスマホを取り出しながら、加奈さんに訊く。
「そう言えば、行き先ってどこですか?美浜の方ってことしか聞いてないんですけど…」
そういえば、私も聞いていない。いったいどこに行こうというのか…。
「えっとですね…”美浜サーキット”に行こうかと…」
美浜サーキット。
愛知県の美浜にある小さめのサーキットだ。
インターネット曰く、マイカー、マイバイクでのタイムアタックや、カートに乗ることができるらしい。
現在、私たちは東名高速を走っている。
「あと一時間とかかなぁ…。もっとかかるかなぁ…」
少々前に走っているスープラのリアを眺めながら呟いた。
なんというか、今回の旅は壮大なものになった。
車好きと二人も知り合って、しかもドライブまで一緒に行って…。
これは月曜に反動が来るパターンではないだろうか…。すでに会社に行きたくない…。
とは言ったものの、旅をするとなかなか財布から諭吉が消える。それこそ、ガソリン代は相当の大ダメージだ。
くそう、物価高め…。
と言うところで、加奈さんがウインカーを出す。
カーナビを見ると、すぐ先に美合パーキングエリアがある。
確かにそろそろ休憩をはさんでもいい頃だろう。私も少々疲れてきたし。
なので私もウインカーを出して、加奈さんについていく。
ミラーを見ると、ちゃんと湊さんもついてきている。
現在時刻はだいたい八時。ちょうど通勤ラッシュにあたりそうで渋滞が怖いが、まだ時間はたっぷりある。
何気に飲み物も買っていなかったし、ちょっとラッキーかもしれない。
意識したとたん、喉の渇きに見舞われたので、少々アクセルを開けてパーキングエリアに急いだ。
キリの良いエピソード5です!
こんな作品のエピソード5まで付いてきてくださってほんとにありがとうございます!
今は愛知県の旅のお話ですけど、今後はもっといろんなところに足を延ばそうかと思います!
三重県とか、岐阜、長野とか…やっていきたいと思います!