3:追跡者
3 追跡者
あれから2週間、おれはなんとかあの大剣リベレイダーと二丁拳銃アトラス&カトラスを使いこなせるようになっていた。
ただ、圭は俺のことを心配していた。
いつか死ぬんじゃないかって――
アイツは昔から心配性だ。
だがなるべく不安にさせたくはなかった。
だから決まってこういった。
戦わなくたってあっちから仕掛けてくるんだ。
なら身を守れるくらいに戦えたほうがいいって。
けどソレも嘘だ。
俺と兄の最終目標は、仇討ちだから――
2限目。
暇だ。
眠い。
いつも朝帰りになるからだ。
おれは放課後また山小屋へ行くつもりだ。
しかし暇すぎる。
今日はどうしようか?とか考えて外を見ていたその時、違和感。
この感じは……そうだ!初めて辺獄に落とされた時のものだ。
ってあれ?
いつの間にか。
無人の教室になっている。
隣のクラスからどたどたと廊下を駆ける音がする。
俺は一瞬警戒した。
「悠君。これって!」
圭もいたようだ。
外を覗く。
住宅街の屋根を、四本足で伝いこちらへ向かってくる巨大な何か。
それはヒヒのような顔をした、巨大な悪魔だった。
そういえばこの前、兄の家で読んだ、悪魔大全という本に、こんな感じの奴が載っていた。
たしか、そうだ。
フラッターと言う名の巨大悪魔で、別名「追跡者」
魔帝直属の使い魔で、放たれたが最後、一度狙った獲物は、絶対に逃さないという。
殺戮に快感を覚える、サイコキラーでサディスト――
コイツに命を狙われたら、死を確認するまで、しつこくついてくるので、フラッターを殺さない限り、生き延びることは不可能……
ってだめじゃん!
どうする、いまリベリオンやエイボニー&アイボニーがない。
そうこうしてるうちにフラッターが来た。
窓からそのひひのような残忍な目でじっとこちらを覗く。
だがヤツはすぐには殺そうとはしないようだ。
じっくり追い詰めて、いたぶってから、自らのてでやるつもりらしい。
なんというサディズム……。
廊下からドタドタと足音がした。
奴らだ。
ザコ連中だが、今の俺には、何も出来ない。
「悠君」
圭……。
俺にだって護りたいモノはある。
でも、武器がない……。
「心配には及ばない」
この声は!
「兄貴参上!」
よっ、さすが兄貴!
「ほら、お前のリベリオンとエイボニー&アイボニーだ」
さっすが兄貴、頼れるぜ。
「実戦でお前がいかに出来るか見てやろう。今までの修行どうりやってればいい」
「えー、でも兄さん、俺戦うのやだよ~」
兄はたまげたようだ。
「なぜだ!?」
「いやだって、制服汚れちゃうし、面倒くさいし」
どうだ、おれのユーモア?
兄は少しキレたらしく、刀を抜くモーションに入っている。
「いや、ジョークだよ。ジョーク。冗談に気まってんじゃん!」
すると兄は吹き出した。
「ユーモアがないとこは、兄弟一緒ってことか」
うなり声――
「俺を差し置いて漫才か、この野郎!」
フラッターだ。
「てめえらまとめてかたずけてやる」
と言って去った。
「俺はフラッターを追う。お前もがんばれよ」
と言って兄も去った。
残ったのは、俺と圭とそれから群がるザコ、スティンジアだけだった。
KILL HIM 壁にうっすらと文字が浮かんだ。
やってやろうじゃないか。
俺はリベリオンを振り上げ一気に降ろす。
敵は真っ二つに割れた。
これが俺が悪魔に一矢報いた瞬間だった。
俺は、2回そして3回斬るコンボ「デスコイル」で敵を切り裂く。
とても基本的な攻撃だが、ベーシックイズベストと考えると一番いい手だ。
気持ちいいくらいにばったばった、破壊していく。
敵を切り裂いている最中、なんだか快感に近いものを感じていた。
そして、お次はエイボニー&アイボニー。
素早い連射で、動きを封じながら、壊していく様は、どこか一方的だ。
ザコを排除し、とりあえず、南校舎の昇降口から、校庭に出ようと圭に言った。
3階渡り廊下の前に来た時、フラッターのワイヤーガンで渡り廊下が破壊されてしまった。
無理だ、遠回りだけど1階渡り廊下を使うか。
「いや、飛べる」
兄が叫んだ。
「辺獄の中ではお前も二段ジャンプができる。
だから飛べ」
そんな無茶な。
「こっちには圭もいるんだぞ」
圭に高いジャンプなんて出来ない。
圭は自分を少し責めているようだ。
「こっちはフラッターを追ってるんだ。手を貸せない」
仕方がない。
「圭、俺と一緒だとお前まで危ない。どこかに隠れていてくれないか」
それが一番妥当な解決策だ。
「いや!悠君と一緒じゃないと私……」
そこまで言うなら。
「圭、少しの間がマンしろよ」
「えっ!?」
圭を抱えて思いっきりジャンプした。
陸上が得意なわけではないが、なぜかとても高く飛んでいる。
重力で落下し始める。
おれは空を蹴って、もう1段ジャンプした。
とどけ!
腕を伸ばし、掴んだ。
「悠君、かっこよかったよ」
そりゃどうも。
おれはそのまま階段を下り。
そのままグラウンドへ出た。
とりあえずここまで来れば……。
しかし浅はかだった。
すでにフラッターはそこまで来ていた。
「そんな」
「俺たちはおびき出されていたのか」
「いやちがう」
「兄さん!?」
「俺がおびき出したのさ」
「そんな、てことは兄さんは……まさか!」
「そう、そのまさかだよ」
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