14:魔法の粉
「なんだ、このニオイは……」
猛の言う通りそこは強烈な臭気の立ちこめていた。
通路を抜けた先は、マグマや溶岩のようなものの海にぽつんと浮かぶ神殿だった。
「ゲロ以下のニオイだな」
しばらくあるいた先に、グルマルキンは居た。
それは天井につり下げられている、巨大な毛むくじゃらの猫のようなやつで、下のドロドロした赤い液体に、なにかを吐いているように見える。
「あんたが『魔法の粉』?」
猛が大声で問う。
「誰だお前!!」
やっぱり、悪魔のゴロゴロしたデカイ声はきらいだ。
全く聞き取りズライの何の……。
「てめぇにいったんだよ。ブス!」
猛がつぶやく。
しかしグルマンキンには聞こえていたようだった。
グルマンキンがその長くデカイ体を曲げて、そのデカイ手を俺たちのいる石段に勢いよく載せる。
「なんだってぇ、その汚い口でもう一度言ってみてごらん!」
グルマルキンの顔。
予想はしていたが年老いた猫のような、でも悪魔の気持ちの悪い顔だった。
その声は老人のようにしわがれていた。
「まずは自己紹介からか? 俺の名前は明石悠太。魔王の血族だ」
それを聞いた途端、グルマルキンが顔を寄せる。
「血族! 魔王と……あのアバズレの息子ぉぉぉ!」
グルマルキンが汚物をはき出しながら言う。
アブね!悪魔の汚いゲロで制服が汚れるところだった。
「デビルハンターっていうカッコイイ別名があるけどな」
俺は戦闘の時のやや挑発的な態度になっていた。
「私を殺しを殺すだって? 出来っこなくないね!」
グルマルキンが笑い飛ばす。
「あたしは1200歳だよ!」
道理でしわがれた声をしてるわけだ。
「へぇ? 12000歳かと思ったぜ」
意訳して「そう?若く見えるね」
「クソくらえ!」
グルマルキンが大声で言う。
「お前がな!!」
猛も負けず劣らず大声だった。
「てめぇがクソくらうんだよぉぉぉ!!」
グルマルキンが汚物をまき散らす勢いで言う。
汚物は俺の制服のブレザーに引っかかった。
よく洗濯しても1週間ほど消えないくらいひどいニオイだった。
「毎日何喰ってんだ?」
俺はブレザーを脱ぎ捨てる。
と共に攻撃。
猛が左手、俺が右手を攻撃する形になった。
「きれいな爪だね。手入れしてやろうか!」
と軽く3本ほど指を切る。
グルマルキンが悲鳴を上げる。
「薄汚いガキ共が! クビをちょん切って私の聖水をぶっかけてやるよ!」
とグルマルキン。
次の瞬間、グルマルキンが右手を蠅を払うようにして、振る。
俺は平手打ちを喰らった。
「お前の母親みたいに殺してやるよ!」
立ち上がる。
「へぇ、そう。無理だと思うけど!」
踏み出す。
斬る。
猛もその間にフルチャージのパンチを決める。
グルマルキンの左手はイビツな形に変形した。
ダメージは大きかったようで――
「手足をもいで、噛み砕いて、ゲロにしてやるよ!」
と両手を振り上げたかと思うと、叩きつける。
モーションが遅く読みやすい。
「避けんな、ブタ野郎!」
相当ダメージが重なってるはず、そろそろ頃合いだ。
俺は猛に合図を送る。
と同時に俺はアトラス&クラトスを取り出し、撃つ。
「最低のテクニックだね。そんな豆鉄砲で勝てると思ってるのかい!
グルマルキンの注意はこちらにある。
よし、いいぞ!
「おい、グルマルキン!」
グルマルキンが気づいた時には猛は顔のすぐそばまで、駆け寄っていた。
「靴でも舐めてな」
仮面ライダーさながらのケリを顔面に入れる。
グルマルキンは石段を掴んでいた手を引き離され、天井に宙づりになっていた。
「今がチャンスだ、行くぜ!」
俺と猛は天井にぶら下がっているグルマルキンを支えている足をエンジェルプルで綱引きの容量で引く。
案の定、グルマルキンの体と不釣り合いなその小さい足は、天井から垂れ下がるワイヤーから外れた。
グルマルキンはそのまま落下して、自分の汚物を混ぜた池に溺れる。
「この糞野郎! 私は……絶対に……死なないんだよ!」
最後のあがきで、俺たちの居るところの石段をつかむ。
「言っただろう。私を殺すのは無理だって!」
「クセェんだよ! さっさと消えちまいな! ブス!」
悪魔が必死にもがいて、最後の命綱の石畳にしがみついている様は最高だ!
俺はその手を斬る、斬る、斬りつける!
「性格までブスじゃなぁ!」
俺は笑いが隠せなかった。
グルマルキンは手を斬られて、石畳から引き離され、再び汚物の海に溺れ、流され、スクリューに飲み込まれて、圧縮された。
「よく混ぜてもらいな!」
そのしわだらけの醜い顔は、スクリューに押しつぶされて、体もろともみじん切りになった。
「しっかしトンデモビックリだよね~」
もう日が沈む頃、俺と圭は美雪さんの車で、送られることになった。
圭はすっかり後部座席で眠っている。
匡は用事があるから先に一人で帰ると言ったきりだ。
「実はヴィヴィドリーはグルマルキンのゲロから出来てたなんてさ! 想像するだけで気持ち悪いわ」
俺は前だけ見てハンドルを握ってる美雪さんを見た。
気遣いは嬉しいのだが、どこでどうやって車の免許証を取ったのかすごく疑問だ。
高校生のくせに運転できるのかと、最初不安だったが、思ったより安全運転だった。
「……にしてもいいね。幼なじみって」
聞き逃していた。
幼なじみがなんだって――
「え? ああ、そうですね」
とりあえず生返事――
「アタシにはいないから……」
その声はどこか切ない。
俺はどうしたらいいのかわからなかった。
だが――
「そんなことないですよ! 美雪さんには兄さんのような理解者がいるじゃありませんか」
「慎二は恩人なの」
!?
「何、どうゆう事」と詮索しようとする俺と、「今のは聞かなかったことにしよう」と言う俺の2つがあった。
だが結果は――
「美雪さん、俺は以前から疑問に思ってたんだけど、兄さん美雪さんはどうゆう関係なんですか」
言ってしまった。
ついに言ってしまったよ、俺。
祝賀ムードになってる俺と、「あーあやっちゃった」と言ってる俺の2つが交差する。
「悠太君には関係のない話よ」
優しく言ったつもりだろう。
けれども俺は少し傷付いていた。
そんなに聞かれたくない話なのだろうか。
だが俺はめげずに――
「仲間なんだしおしえてくれないか?」
無言 ちょうど渋滞に捕まる。
「助けてもらったこともあるから、俺は信用している。美雪さんはおれを信用してないんですか?」
ようやく口を開く。
信号機が点滅する黄色から、鮮やかな赤に変わる。
「アタシね、ガンスミスの小山家の一人娘だったの。そこで砲術を詰め込まれて小山筒を扱えるようになったの」
ガンスミス、鉄砲鍛冶ってとこか。
「それでね、お父さんが死んじゃって、親戚の家の子との家督相続ってヤツに巻き込まれちゃったのよ。殺されかけたわ。その親戚は悪魔に洗脳されてるし、危うくあたしまで洗脳されかけたんだから」
俺は頭痛と軽い眩暈を感じた。
多分疲れたんだな。
信号機の青がぼやけて見える。
「アタシはイヤになったの。家督相続やらヴィヴィドリーやら、とにかくこの世界の何もかもから逃げたかったのね。そして体質柄、辺獄をちょくちょく散歩するようになった」
「そこで彼と出会ったってとこかな」
と付け加える。
しかし彼には聞こえてなかった。
悠太はどさっと力尽きたかのように美雪の肩に寄りかかって、眠る。
彼女はやれやれとため息をついて、しばらくそうさせてやることにした。
しかし彼の頭から伝わる熱に気づいた。
次の交差点で再び赤信号に捕まる。
彼女は咄嗟に悠太の額に手を当てる。
「ちょっ、すごい熱!どうしたのよ!」
後ろで眠っていた圭も起きた。
状況を見るなり慌てる。
「どうしたんですか? 悠君は無事ですか!?」
「息が荒いわ。とりあえず、山小屋に行って慎二と合流するしかなさそうね」
「そんな、悠君! 悠くーん!」
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