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アカデミーの法魔学科と、眼の前の殺人者
今思えば、私が法に取り憑依かれ、呪われ始めた切っ掛けは、
アカデミー時代にあったのかもしれない。
といっても、法魔学専門に学んでいたのではない。
一般教養教科としての基礎法魔学の授業課題で
横濱地裁へ傍聴しに来た。
威厳権威アピ風な、重厚石詰みレトロ建築物。
独り近付くのが恐怖い荘厳エントランス。
吹き抜けホールの高き天井見上げ、生まれて初めての裁判処にキョドる。
静かな緊張感が、重暗く充満している。好んで来たくない。
まっ、私の人生じゃ、原告になる事も、被告になる事も、刑事魔道事件の
被告人になる事も無ぇだろ。
この先ウッカリ裁判処に踏み入れるよーな出来事も在るめぇよ。
単なる興味本意で、殺人マダー事件を選び、
無言法廷の傍聴席に坐り、超静寂の刻が過ぎる。
扉が開き、極悪キラー犯入廷。
人間を殺めた生き物が眼の前に存在る。
有罪とか無罪とか、善いとか惡いとか、被害者とか加害者とか、
そーゆー概念が吹き飛ぶ。
拘束魔界器具が解かれた。
おいおい、刑務官! 捕まえてなくて大丈夫か!?
暴れ出すんじゃないか?
裁判の最中、殺人犯が、ずっと私を睨んでいる。