祭祀承継者へのクラスチェンジ
城は、万年赤字だったワケではない。
祖父王の読みと目論みが大当たり、大盛況だった時機もある。
が、バブル渦中、泡にまみれて遊んでいると、今だけが絶頂真っ盛り、と錯覚し、
未来への予兆に気付けない。
このまま永遠一生エターナル、滅せず滅びず享楽延々続く、
と感じられ夢現、考えられない気付かない、
気付けない、知りたくもない。
バブル期、城主は息子用の派手な冠婚葬祭で、金員を使い切ってしまったし、
姫の治療で遺産も残せたもんじゃない。
田舎故郷に錦を飾り、ブチアゲる為、憧れの鎌倉霊園に墓まで買っちゃった。
羽振り善い刻ゃ、この将来無一文になる己の姿なんざ空想できゃしない、
泡の後祭り、であった。
祖父祖母が仲良く温々と墓に入った跡は、
祭祀承継者である母が、墓守として墓を管理してきた。
墓は唯一のプラス遺産だった。高値で売り飛ばす事もできたが、
母の目当ては金品に無い。
祭祀物品(霊園の権利/墓石/仏壇/位牌/遺骨など)と、
祭祀承継権(葬儀や法事を仕切るマスター権利)は、
亡き祖父王の意向を尊重した母が、叔父へと移管し、
叔父は祭祀スキルも移植され、祭祀承継者へとクラスチェンジしたのであった。
債権債務発生から何年も経ったが、
伯母と叔父から、音沙汰は無くなっていた。
何で?