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俺の第二人生の幕開け

「こらテツヤ!早く勉強しなさい!」


「今からやるってば!」


 母さんの怒声が家に鳴り響く。何故やってないとわかったのだろうか。

 俺は近藤テツヤ。ごく普通の男子高校生である。

 勿論勉強する気はさらさらない。今の俺は画面の奥のたまぎょっちに全身全霊を注いでいるため暇がないのだ。


「お、おおお!伝説のいくっちだ!!超美人巨乳キタ!!」


 そう、今の俺のたまぎょっちはランキング一位なのだ。ここで記録を絶やすわけにはいかない。

 光の速さで操作を行う。少しでもミスったらすべてがお釈迦である。


「ははは!俺のいくっちは超えられない!だよな、アルファ!」


「ワン!」


 うむ。俺のたまぎょっちを理解してくれるのはアルファだけだ。


 はて、なんでここまでたまぎょっちに熱いのか疑問を持つものもいるだろう。理由はひとつ。

 俺は世話が好きなのだ。そもそも動物が好きで、その動物の生きる糧となることがうれしいのだ。

 さらにこのゲーム、うまく育てると美少女になる!!これがでかい。さらにエルフとか、けもみみとか、人魚とか…人外になるのだ!俺の好みをえぐってくるのがこのゲームである。

 だからこの究極のお世話ゲーム、たまぎょっちが好きなのだ。


「よし!そのまま次の世代へ行けええええ!!」


『世代を継ぐことに失敗しました。』


「おし!…お、ん?……はぁ??」


 まて、現状が理解できない。何故だ。俺の世話になんの問題があったんだよ。


 『{いくっち}の世代交代にこのアイテムは使えません

  お世話に失敗しました

  よって、{いくっち}ゲームオーバーです』


 単調なリズムで刻まれる文字は俺の脳みそに直接文字を刻んでいるようだった。


「いくっち…おい!!なんで……。」


 俺の中から何かがふっと消えた。


「クゥゥン……」


 アルファがそう鳴いたあとは静寂が俺を包んだ。



 そうだ、コンビニにエロ本買いに行こう。気分転換としては丁度いいな。きれいなお姉さんと谷間が見たい。

 考えるより先に体が動いた。靴紐を慎重に結び玄関のドアを開く。


「ちょっと!テツヤ!」


 今の俺には誰のどんな言葉も通じない。たとえ動物の鳴き声だろうと…。

 必死に走った。あえて二番目に近いコンビニに行くことにした。あそこに行く道のりには川沿いの直線の道がある。そこを突っ走りたい気分なんだ。


 川沿いの道についた。周りを確認することなくとりあえず走る。

 いくっち…俺の……俺のいくっち……


 いつの間にかコンビニの前にいた。

 俺はこの複雑な感情を顔に出さず、しれっとエロ本を手に持ちおっさんの店員の前へ差し出した。

 何を悟ったのか、おっさんは俺の目を見てにっと笑った。

 …こっちからすると気味悪い。


 おつりの小銭をポッケに突っ込み、ビニール袋片手に走った。2000m走を走った気分だ。

 

「おあっ!」


 何かにつまずいたようだ。全力疾走だったからまったく気づかなかった。

 まずい、これは顔面からいくぞ。


 目をこれでもかというほど瞑った。



 ___あれ、痛くない…?


「なんだこれ…?気持ち悪ぃ…。」


 俺を謎の浮遊感が包む。周りは暗く、目を開けているのか閉じているのかさえわからない。いい気分とはとても言えない。


『あなたは世話が好きですか?』


「はあ!?この状況で何言ってんだ?助けてくれよ!」


 いきなり誰かが俺に声をかけた。


『もう一度聞きます。あなたは世話が好きですか?』


 もうこれは何回も聞くパターンだなと少し覚めた脳みそが感じた。

 どっちにしろ俺にNOはなかった。


「…好きだ。大好きだよ!!」



『了解しました。これから近藤テツヤ様の転移を開始します。』



 …ん?今なんて


 そんなこと考える暇も与えず、俺の視界は真っ白になった。



+  +  +



「様…人様………ご主人様!!」


 いきなりかわいい声がして、目を開けると超絶美少女が目の前にいた。


「うおおおっっっ!!???」


 驚きとうれしさで頭を思いっきり上げた。

 ら、痛みで額が痺れた。


「んってええ……」


 今の自分がいろいろ忙しすぎる。


「はあああ!すみません!失礼いたしますした!!」


「おい!そこは失礼しましただろ!ご主人様に迷惑かけるのではない!」


 …今俺はこの美少女とぶつかったのか?

 どういうことだ?


「ご主人様!大丈夫ですか!今すぐ絆創膏を用意いたします。」


「あ、はい…ありがとうございます…。」


「け、敬語…!この私に敬語など…!もっと崩した態度でよろしいのですよ。」


 …といいながら長髪黒髪の少女は鼻血を出していた。


「あ、うん。鼻血大丈夫?」


「心配まで…ご無用です!」


 …さっきより増した気がするが気のせいだろう。気のせいだ。


+  +  +


「ええと…俺なんもわかんないんだけど、説明できる?」


 額の手当てをしてもらいながらセミロングカールの女の子に聞いた。


「はい!ご説明いたしますと、私たちがご主人様を召喚いたしました。」


 よく見ると俺の下に魔法陣のようなものが土に彫ってある。


「ええと…なんで?もっとイケメンとか、魔力がバイオレンスなのとかいるんじゃない?」


「いえ!ご主人様は転移の際に、条件に当てはまったのです!」


 太陽みたいにまぶしい笑顔で答えてくれる。


「多分、幾つか質問されたと思います。あれが条件です。」


「え、一個しか覚えてないぞ。」


「まあ転移中なんてそんなもんですよ。」


 はははと向日葵みたいに彼女は笑った。


「あ、申し遅れました。私はファイスと申します!」


 オレンジセミロングカールが印象的な陽気少女がファイス、


「私はセイルです。」


 黒髪長髪のつり目クールお姉さんはセイルというのか。


「俺は、こ…」


 ここで俺は思った。超かっこいい名前を名乗ろうと。近藤テツヤとかいうダサい名前はサヨナラしてしまおうと!


「ディ、ディランだ。よろしくな。」


「よろしくお願いします!ディラン様!」


 夢のようだが、なんとなく心の中で納得して楽しんでいる自分がいた。


「ところで、なんで俺召喚したの?」


 一番の問題はそこだ。いくら美少女でもなんとなくじゃ許されない。


「世界中の美少女を集めてほしいのです!」


「…は?」


 いや、いくら転移だからってそれは納得できない。



 わけがわからない俺の第二人生はどうなるんだ…?!

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