神の視点 カレー戦争
私は神である。
白と黒の軍勢に埋め尽くされたこの戦場を上空から見下ろしている。
この白と黒の2種族はお互いに憎み合い、最期の一兵まで命をかけて戦い、神の御許に召されることになる。両軍の撤退を神は許さない。
魔道兵器を擁し質量で勝る白軍と、巨人族と共闘し個の力に優れた黒軍。神としては、両軍が均衡を保ちつつ全滅する悲劇がお望みである。
役者は出揃った。
戦争の開始である。
両軍の境界線ではそれぞれの兵が混じり合って戦い、力尽きた者が次々と召されて消えていく。
白軍は物量で押す作戦であり、戦線を押し上げて黒軍を包囲する動きを見せる。
ここで、膠着した前線に魔道兵器が投入された。
魔道兵器はその力を遺憾なく発揮し、白黒両軍の兵を大量に巻き込んで消えていく。
魔道兵器の力もあり、戦況は終始白軍が有利な状態で展開されている。
黒軍も巨人族の奮闘で一時は戦線を押し返すが、白軍の圧倒的な物量によって包囲網が完成してしまった。
黒軍は成す術もなく、徐々に包囲を狭められている。
このままでは、白軍の圧倒的な勝利となってしまう。
神の力でどうにかして戦場のバランスを保たなければならない。
そこで神の奇跡として、白軍の後方で出陣を待つ魔道兵器に向かって雨を降らす。
雨に降られた魔道兵器は爆発し、白軍のみを巻き込んで消えていく。
後方で大量の白軍が消えたことによって、両軍の物量的なバランスが保たれようとしている。
少ない兵でなんとか包囲を維持しようとする白軍。
戦線を食い破ろうと猛攻を仕掛ける黒軍。
一進一退の攻防が繰り広げられる。
そして...
両軍の最期の部隊が相討ちとなって消えた。
見事に全滅である。
神の御心に導かれ、絶妙なバランスを保ち全滅した両軍。
神によって作られた予定調和の悲劇。
神大満足。
誰もいなくなった戦場に感謝の念を送る。
運命に導かれ散っていった兵たちに、神の祝福を。