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竜に拾われた少女〜竜に乗ってスローライフ〜  作者: にあちん
第1章 始まりのケイレスト王国編
5/11

5.冒険者ギルド

 翌朝、現代っ子には珍しく早起きをした。

 今日はやることも多いし、この世界で生きていく以上、早起きは出来ないといけない。

 そう意気込んでいたが、どうやらリトはまだ爆睡しているらしい。

 私は問答無用でリトの布団を剥いでやると、明らかに不満そうな顔で睨みつけられた。



「我はもう少し寝たいのだが……」

「もう、しっかりして! 金がないなら、稼がないとダメでしょ!」



 この駄竜は、今までどれだけ自堕落した生活を過ごしてきたのだろうか。

 いずれにせよ、これからはこの生活を改善させないといけない。



「頼む、寝かせてくれ……」



 この引きこもりドラゴンめ!



 私は無理矢理リトの腕を引っ張りながらダイニングに行くと、既にハイルさんが朝食の用意をしてくれていた。

 私に腕を引かれるリトを見て微笑むハイルさん。



「おや、リトエール様。今日はお早い起床ですね」

「うむ……本当はまだ寝たいのだが、ハルカがうるさくてな」

「お金がないんだから、何処かで稼がないといけないでしょ? 最悪、荷物を売らないといけなくなるよ?」

「それならば、冒険者ギルドに行くのがいいと思いますよ」



 割り込むようにして、ハイルさんからそんな提案が飛び出してくる。



「冒険者ギルドって……あの?」

「どれのことかは分かりませんが、魔物退治を主に様々な依頼を受けて活動するアレです」



 ドンピシャで予想していた通りのようだ。

 この世界にもやっぱり魔物が居るのか……

 でも私、戦えないんだよね。

 今のところ、よくある不思議な力なんてものも感じないし、身体能力が特筆して変わったこともない。

 冒険者になんて、なれる気がしないし、第一なりたくない。



「でも私、戦えないよ?」

「それでも、冒険者登録はしておいた方がいいと思いますよ。リトエール様が居ればどんな魔物が来ても大丈夫ですし、その素材を持ち帰ることも簡単でしょう。その時、ギルドであれば不当な価格で買い叩かれることもないですし、ギルドカードがあれば身分証にもなるんですよ? もし街に入ることになれば身分証は必ず必要になりますし、登録していて得はすれど、損はないでしょう」



 それは良いことを聞いたな。

 旅をする以上、必ず途中で街に立ち寄ることはあるし、もし今の話を聞いていなかったら、間違いなく入ることすら出来なかった。

 そんなことを教えてくれたハイルさんには感謝しないとね。



「じゃあ、今日は冒険者ギルドに行くことにするよ」

「承知しました。これから、リトエール様のことを宜しくお願いします」



 最後にハイルさんは深々と頭を下げた後、家を後にした。

 分かってるよ、そんなこと。

 だらしないけど、これでもリトは命の恩人だからね。

 その恩には報いるつもりだよ。



「そうと決まれば、行くよ!」

「ハルカよ。その前に、飯を忘れていないか?」

「あ……」



 そういえば、まだ朝食を食べていなかったんだった。

 既に冷めてはいたが、折角用意してくれたものを、そのままにしておくわけにはいかない。

 私達は、有難く朝食をいただいた。

 冷めてても、やっぱり美味しかったよ。



 今度こそ私達は冒険者ギルドに向かうことにした。

 幸い、場所に関してはハイルさんから聞いていたため、すぐに見つけ出すことが出来た。

 不安になりながらも、恐る恐る建物に入る。

 こういうのって、大体絡んでくるパターンがあるんだよね……



 案の定、冒険者達はいきなり入ってきたこの場に場違いな少女を見るなり、鋭い視線を飛ばした。

 一斉にそんな視線が飛んできたものだから、私は思わず「ひっ」と上擦った声を上げてしまった。

 だがそんな視線を送っていた彼らも、続くように入ってきたリトの姿を見て表情を青くした。



「えっ、何?」



 いきなりねっとりとした変な視線が離れたことに、疑問に思いながらもほっと安堵の息を吐いた。

 後から聞いた話だけど、この時私に分からないようにリトが周りに殺気を飛ばしてくれていたらしい。

 リトはやっぱりこういう時に頼もしい。



「あの、冒険者登録をしたいの、ですが……」



 私は消え入るような声で、受付嬢さんへと声を掛けた。

 まださっきの視線のことを忘れられていなかったのである。

 この時にも、リトは大活躍してくれた。

 怯える私に変わって、リトは前に出る。



「我はこのハルカの従魔なのだが、ハルカを冒険者登録させたい。構わぬか?」

「あ、はい。少々お待ちください」



 リト、でかした!

 なんて、私が言っていい立場じゃないよね。

 あれだけ駄目駄目言っておいて、結局こういうところになると頼っちゃってるし。

 私も、もっと成長しないと。



 私が決意を新たにしている間に、受付嬢さんが書類を差し出してきた。



「これは登録に必要な記入事項と契約書です。これを書いていただくことで、ギルドカードを発行することが出来ます」



 なるほどなるほど。

 私はその紙を覗き込んで、とあることに気付く。

 異世界なのに、文字が読める?

 紙に書いてある文字は全て、私にとっては馴染みのある文字、日本語で書かれていた。

 どういうことなんだろう?

 今更だけど、言葉も通じてるしね。

 わざわざここで聞いて怪しまれる必要もないので、一旦置いておいて、ただ必要なことだけを書き始める。

 色々と書くことは多いけど、必須事項になるのは名前、年齢、後は契約に関する同意のみ。

 今言ったことは兎も角、住所も任意というのが気になる。

 何故住所は任意なんだろうと思って聞いてみると、受付嬢さんはただ「冒険者には訳ありな人も多いですから」と言うだけだった。

 そんなに簡単に身分証をほいほい発行出来ていいのかな、とは思うけど、多分対策はしているのだろう。

 冒険者ギルドは世界中にあるのだし、一個人の私がとやかく言ったところで意味はないから、気にしないでおこう。



 必要なことを全て書き終えたのでそれを提出すると、すぐに受付嬢さんがギルドカードを発行してくれた。

 てっきり1日くらい待たされるんじゃないかと思ったけど、意外に早かった。

 これは、嬉しい誤算だね。



「はい。これが貴方のギルドカードです。紛失してしまえば、再発行に銀貨2枚が必要になるので気をつけてくださいね」

「ありがとうございます。気を付けます」



 ギルドから出ることが出来たおかげで、やっとあの気まずい空間から抜け出すことが出来た私は、清々しい気分になっていた。

 リトは相変わらずぶっきらぼうなままだ。



「じゃあ、次は……」

「ハルカよ、まだあるのか?」

「当然! というか、大切なものがまだ残ってるじゃん」



 私、昨日から我慢してたんだよね。

 次の目的地、それは、私にとってはある意味最も重要と言ってもいいところ。



「いざ! 服屋へゴー!」

「ご、ごお?」



 リトは家から持ってこれたけど、私の分の服は何もないからね。

 向かう途中で売るために持ってきた荷物を売って、そのお金で服を買うことにするよ。



 私は爽やかな気分で、リトは少し面倒くさそうな顔で、要らない荷物を整理するために道具屋へと向かった。

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