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竜に拾われた少女〜竜に乗ってスローライフ〜  作者: にあちん
第1章 始まりのケイレスト王国編
4/11

4.ミネラの村

 私達が旅立って幾分か時が経った頃、既に日が落ち始めてきていた。

 そろそろ何処か、身体を休められる場所を探さないといけない。

 うーん、このままだと野営になっちゃうかな。

 そう思っていると、リトから意外な情報を聞くことが出来た。



「この近くに、我と縁のある村がある。そこに泊めてもらうか?」

「あれ? リトって、友達は居ないんじゃなかったっけ?」

「知り合いが居ないとは言っていないだろう」



 何故わざわざ友達を知り合いに言い換えた……

 まあ縁があるってことは、一方的に知られてるというだけで、実際に面識があるわけでもないって可能性もなくはないのか。

 知り合いと言っている時点で、今回はその線でもなさそうだけど。

 大体、泊めてもらえるような仲でただの知り合いなわけがないでしょ。



「見えてきたぞ。一度降りるから、しっかりと掴まれ」



 はいはい、ちゃんと分かってるよ。

 飛んでいる時に風がなかったのか、多分リトが魔法かなんかでやってくれていたんだろう。

 リトはちゃんと安全運転で飛んではいてくれたけど、それでも落ちたら本気でシャレにならないからね。

 安全度は可能な限り上げておかないと。



 上昇した時のような浮遊感とは違い、今回は全身が重くなるような感覚を感じた。

 私のことを気遣ってくれたのかはしらないけど、着地の衝撃はそこまでではなかった。

 初めての空の旅だったから、少し疲れたけど。



「大丈夫か?」

「ちょっと疲れたけどね」



 落ちないように慎重に身体から下りると、リトの身体は光を発して竜から人の姿へと戻る。

 近付いてくるなり私の表情を覗き込むリトは、肩を竦めた。

 どうしたのかな?



「ハルカは自分で思っている以上に疲れているようだな。我が介抱してやろうか?」

「いい。私は大丈夫だから」

「しかしだな……」

「ううん、そこまで心配してくれなくても、村までは歩けるから。近いんでしょ?」

「……そうだな。そこまで言うのなら、歩いてもらおう。だが、疲れで離れられては困るのでな、手はもらうぞ?」



 唐突に手を差し伸べてくるリト。

 それくらいなら、と私も譲歩することにした。

 介抱も、ただ恥ずかしいからだなんて、言えるはずがなかった。

 リトには言ってないけど、リトの人の姿はかなりの美形だからね。

 男の免疫がない私からすれば、リアルで見たこともないくらいなんだよ。



 手を引かれて10分、リトの言う通り、本当に近くに村があった。

 正門に見張りが居るみたいだし、ちょっと中に入らせてもらえるか確認をとってみよう。

 もしここで追い返されたら、私達は揃って野宿になる。

 リトには口調の問題があるので、ここは少し任せてもらおう。

 これまではリトに頼りっきりだったから、たまには私だって頑張らないと。



「すみません。私達は旅の者なのですが、今夜泊まるための宿がなくて困っています。今晩だけでもいいので、村に入れてもらえないでしょうか」

「理由は分かった。何もない村だが、ゆっくりしていきなさい」



 割とすんなりと入ることが出来た。

 対外的にこうだと、もし盗賊とかが襲い掛かってきたら対処が遅れるんじゃないか。

 そう思っていると、



「実は、この村の周囲には昔に我が張った真贋を見抜くための結界がある。悪しき者がその中に入ろうとすれば、その者の全身に激痛が発生し、かつ村長に知らせが入るというものだ。あの門に来ている時点で、我らはその結界を通り抜けているというわけなのだ」



 なるほど、だから縁があるってことなんだね。

 何のために張ったのか、など色々と聞きたいこともあるが、今は置いておこう。

 結構我慢してきたけど、これでもやっぱり結構疲れてきていたんだよね。

 早く宿に泊まって、しっかり休みたいよ。



「度々すまないが、顔だけでも合わせたい奴が居る。先に、そっちに行ってもいいか?」

「はいはい、分かってるよ」



 きっと、例の縁のある人に会いに行くんだろう。

 流石ドラゴン、あれだけ飛んできたというのに、スタミナに関しては化け物クラスだ。

 最も、見た目だけで言えば化け物みたいなものだし、単に私が空の旅に慣れていないだけかもしれないけどね。



「おや……もしや、リトエール様では?」



 向かっていた矢先、噂をすればまさかの相手の方からやってきたようだ。

 話しかけてきたのは、初老の穏やかな雰囲気の男の人だった。

 少し白髪が目立ち、苦労しているのかもしれない。



「ハイルよ。我はこれより旅立つことにした。その礼にでもと思ってな」

「……とうとう、この時が来たのですね。もしや、そちらの方が?」

「ああ、そうだ」



 彼らは2人だけの世界に入ってしまったようだ。

 一度ハイルと呼ばれた男の人から見られたような気がしたが、蚊帳の外に締め出されてしまった私には、言っていることが何のことやら分からない。

 この人、そういやリトの古い友達……もとい知り合いってことは、私が知らないこともたくさん知ってるってことだよね。

 そりゃ、リトと会ったのもつい先日だったわけなんだから当たり前だけど、ちょっと複雑だなぁ。



 話が終わったようで、今度はハイルさんが私の方へと来た。



「お待たせしてしまい、誠に申し訳ございません。私はここ、ミネラ村の村長をやっております、ハイルと申します。この度リトエール様を森から引っ張り出して頂き、私は嬉しゅうございます。ハルカ様には、感謝してもしきれません」

「は、はあ……」



 見知らぬ人にいきなり感謝されても、正直何のことだか見当もつかない。

 外に出してくれたから感謝って……反応が引きこもりの親みたいだ。



 リトは引きこもりだったのかな?



「おい、ハルカ。今、失礼なことを考えたろう」

「あはは、気のせいじゃないかなー……」



 何故バレた……

 リアル読心術が使えるとでもいうのか。



「まあまあ。それより、今日は私の家に泊まりませんか? 大方、寝るところに困ってここを訪ねたのでしょう?」

「……やはり、お主には分かるか」

「これでも、昔からの知己ですからね」

「そうか。ハルカはいいのか?」

「私は問題ないよ。まず、リトって宿に泊まれるだけのお金持ってるの?」

「……では、お言葉に甘えさせて頂こう」



 お金持ってないんかい。

 いくら目を逸らしたって、分かるんだからね。

 同じく悟ったのか、ハイルさんも苦笑いを浮かべる。



「僭越ながら、案内させていただきます」



 今日の夜は、ハイルさんの家で明かすこととなった。

 もちろん、リトとベッドは別だよ?

 いくら竜とはいえ、人の姿のリトと寝るのは抵抗があるからね。

 私の異世界初夜は、まだ多少の不安があったものの、不思議なくらいにぐっすりと眠ることが出来た。

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