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竜に拾われた少女〜竜に乗ってスローライフ〜  作者: にあちん
第1章 始まりのケイレスト王国編
2/11

2.古竜

今更ですが、15歳って少女にカテゴライズされるんですかね……

 私は何かいつもと違う感覚を感じて目を覚ました。

 その違和感の正体を探っていると、知らない天井が私の目に映った。



「ここは?」



 身体を起こすと、やはり全く見知らぬ家の中だった。

 さっき感じた違和感はこれか、といつもと違うベッドの感触を確かめると、私は立ち上がった。

 確実に、私はここを知らない。

 少なくとも私の家はこんな木造建築の家ではない。



 きょろきょろと周りを見回していると、部屋の戸が開けられた。



「目を覚ましたようだな」



 現れたのは、綺麗な白髪で澄んだ青い目をした男の人だった。

 まさか外国人が現れるとは思わず、その日本人らしからぬ美顔に、私は面食らってしまった。

 ぶっちゃけると、かなりのイケメンとしか言えない。



 ただ、その割には表情はかなり不貞腐れている。

 優しそうなイメージは微塵も感じ取れなかった。



「あの、ここは何処なんですか?」



 恐る恐る聞いてみる。

 拐われた可能性もあるが、それは考えたくなかった。

 でもそうでないと、こんなところに居る理由がつかない。



「ここか? ここは我の住処だが」



 我?

 個性的な一人称だけど、何処かでキャラ作りの練習をしている人なのかな?

 外国人は日本のアニメを見て強い衝撃を受けた人も多いって言うし、この人も案外そうなのかもしれない。

 今まで生きてきた中で、我という一人称を使っている人なんてテレビの中ですら見たこともなかったわけだし。

 そういったことに羞恥心は持たないタイプの人が居てもおかしくはないんだけど。

 とにかく、この人が私の知らない人であることには違いないし、ここはもう少し探りを入れておこう。



「何故私はここに居るのでしょうか?」

「お主、覚えとらんのか?」

「え?」



 私が何を言っているのか分かっていないことに気付いたのか、男の人は呆れて首を振った。

 別に、そんな反応をしなくてもいいでしょうに。



「やれやれ、一応、我は死にかけておったお主の命を助けた恩人なのだがな……」

「ちょっと待って。それ……」



 どういうこと?

 そう続けようしたが、その前に私の頭にズキンと少しの痛みが走った。

 そういえば私、ここに来る前は何をしていたんだっけ……

 頭に電撃が走るような痛みに襲われるたび、断片的に記憶を思い出していく。



 車、狼、ドラゴン……



「おい、大丈夫か?」



 私はハッとなった。

 自分でもかなり汗をかいているのが分かる。

 深く深呼吸して、いつの間にか荒らげていた息を整えると、ようやく私も落ち着いてきた。



「思い、出した……私……」



 その代わりに、記憶も完全に戻ってしまっていた。

 夏休みの計画を立ててうきうきとした自分が車に轢かれ、死にかけていたことを。

 その後、狼に食べられかけたところをドラゴンに助けられ、最後に声が聴こえてきたところで私の意識が途切れたことを。

 あれは夢だったのだろうか。

 でもさっき、この人が私を助けたって……



「さっき私を助けたって、どういうことなんですか? もしかして、あのドラゴンと何か関係があるんですか? ここは何処なんですか……」

「お主、少し落ち着け。そんなに質問責めにされても、我には一気に答えられん」

「そう、ですよね」



 それはそうだ、なんで私はこんなに焦っていたのだろう。

 今思えば、この人の声があの時気絶する直前に聴こえてきた声と、似て……いや、多分同じ人なんだと思う。

 でもそれなら、あの狼やらドラゴンの存在を首肯することになるけど、命は助けられたのだから、あれが夢だと否定するつもりはない。

 本当なら、この人は本当に私の命の恩人ってことになるわけだし。



 ここでようやく冷静になれたせいか、私の中の焦りがどんどんと消えていった。

 その様子を見てとった男の人が、口を開いた。



「まず一つ目の質問だが、我が契約によるものとだけ言っておこう」

「契約?」

「うむ。我とお主は対等であるといった契約だ。あれだけの怪我だと我の回復魔法だけでは傷の完治はしても、魂までは治せんのでな。勝手なようで悪いが、お主の魂を修復するには直接魂の結び付きが出来る契約を行うしかなかった。そこはお主のためにやったものなのだから、許して欲しい」



 契約……魔法?

 まさかそんなファンタジーのような言葉ばかりが出てくるとは思ってもみなかった私は、今聞いた話に耳を疑った。

 まだ夢の中に居るとかじゃないよね?

 ドラゴンが出てきた時点で、もう既にファンタジーとしか言えないんだけどね。

 



「次に二つ目の質問だが……その前に自己紹介をしておこう。我の名はリトエールヴェルデ」

「リトエールヴェルデさん……」

「」



 名前がかなり長い。

 それに、名前の響きが私が知っているようなどの国とも違っている。

 まるで、地球とはまた別の、それこそ異世界にでも来たような感じだ。

 さっきの魔法といい、本当にそうなのではないかと思ってしまう。



 名前を呼ばれたリトエールヴェルデさんは、満更でもない表情で頷いた。

 表情の起伏が少ないと思ったらそんな表情も出来るんだ、と私は少なからず驚いた。

 ちょっと、今の考えは失礼だったかな……



「そうだ。とはいえ、長いだろうからリトとでも呼ぶがいい」

「リトさん……はい、分かりました。私は遥です」

「ハルカだな。しかと覚えた。それと、その他人行儀の喋り方はやめるがいい。聞いてる我がむず痒い」

「はい……じゃない、うん、分かった」



 自分でも話し方はちょっとぎこちないとは思うし、リトはそこが気になったのかな。

 私的にはリトの喋り方の方が気になるんだけど……リトの正体って、一体どんな人なんだろう。



「それで本題の二つ目の質問だがな。確かに我はそのドラゴンと関係がある……というか、我がそのドラゴン自身なのだ」

「はいっ?」



 私の頭の回転が追いつかない。

 さっきどんな人とは言ったけど、まさかドラゴンだったなんて。

 リトの姿は、何処からどう見ても人にしか見えない。

 なのに、本人は自分はドラゴンであると言う。



 流石に意味が分からない。

 これも、魔法?



「まあ、分からぬのも無理はない。この世界では古竜リトエールヴェルデとして知られている我だが、普段は人の身をとっているし、今だってそうだ。なんなら、外に出て元の姿に戻ってもいいのだぞ?」

「えっと……」



 言われてみれば、どことなく髪や目の色があのドラゴンに似ていなくもない。

 話の内容がもはや完全にファンタジーだが、私はこういう話に疎いわけでもなかった。

 今目の前で言われていることには、そうすんなりと受け入れることは出来そうもないが。

 もうここがファンタジーの世界であると確定づけるのであれば、ドラゴンが人の姿になるのもなんらおかしくはないとは思う。



「分かった、信じるよ」

「……お主、あっさりと信じのだな」

「だって、そんな嘘をつくメリットも意味がないでしょ?」

「うむ、そうだがな。それでもお主、信じ込みやすいタイプだろう。あまりそうホイホイと信じ込むなよ?」



 それは大丈夫、日本でも何度も言われてきたことだから。

 とはいえ、柄にもなく気遣ってくれているようだ。

 この人もこの人なりに、私のことを心配してくれているのかもしれない。

 さっきからこんな失礼なことばっか考えるようになってるけど、その分私に心の余裕が出来てきたってことなんだろう。

 そう考えると、少し不安や恐怖が薄らぐような気がした。

 実際、悪い人ではないのだろう……竜だけど。



 とうとう、次が最後の質問だ。



「三つ目の質問ではあるが……レイスワーム大陸のケイレスト王国、その中にあるアインズ州ピランツ森林と言えば分かるか?」



 すみません、全く分かりません。

 でも名前からして、ここが既に地球ではないことは確定した。

 それが分かっただけでも、まだマシだ。

 私が否定の合図をすると、リトはガクッと肩を落として項垂れた。



「いいか……まず、レイスワーム大陸というのは3つある大陸の中で最も大きい大陸だ。次にケイレスト王国、これも大陸最大の国で、古くから王政で統治されている。アインズ州というのは、つまりアインズ家という貴族が統治しているということだ。ピランツ森林は、その領地内にある比較的魔物の少ない森の名称だ」



 分かりやすい説明、ありがとうございます。

 なんだかんだ言ってきっちり説明してくれるのだから、やはりいい竜なんだと思う。

 他の竜もこんななのかと気になってきた。



「他に質問はあるか?」

「もう充分。ありがとう」

「そうか。我がお主に問うこともないし、詮索するつもりもない。だが、我はお主に対してある頼みをするために助けたのである」

「頼み?」



 そりゃそうですよね。

 そうでもないと、そこらで野垂れ死にしかけてた赤の他人である私を助けようなんて、考えもしなかったはずだ。

 一応、目的があって助けたと言われれば、私の方も納得出来る。

 問題は、その頼みの内容だった。

 私はドラゴンという存在を全くと言ってもいい程に知らない。

 どんな頼み事をされるのか、想像すら出来ない。

 私は息を呑んで、リトの次の言葉を待った。



「我と……旅をしてくれないだろうか」



 その提案は、かなり意外なものだった。

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