神官の部屋
部屋に入ると、内装は意外と広めの設計で、うん。いかにもホテルというような感じ。でも、さっき見たカプセルホテルとは違ってちゃんとしたベッドもあったりトイレが付いていた。神官兄弟は、ここを神籍をいれる手続きの事務所にも使っているらしく、僕に申請書を書いてもらいたいそうだ。
「あっ、ここぉ。ここに座ってねぇ。」
案内されたのは、低めのテーブルとそれを挟むように反対に置かれたソファが並ぶ空間で僕の向かいに神官兄弟が座った。ヴォルホルが、書類を書くようで羽根ペンって言うのかな、鳥の羽の先にペンがくっついたやつを持って必要事項やらなんやらを書いていた。こういう書類を書くときは、手をかざすやつじゃないんだな。ヴォルホルは、ぼそぼそ何か言いながら僕に問いかけた。
「えっと、アンネルリアでヒト族…。…アオバ、お前何歳か分かるか?。」
えーとえーと、クレさんがだいたいこれくらいと言ってたのは…
「30歳…くらい?。元の世界では17歳でした。」
「そうか。まぁ、見た目も30歳で良いだろう。あと、サティラさんから何か体とかについて言われたことがあったら言って欲しいんだぞ。」
あー、なんか。
「置き換え、が起きてるとかなんとか…。」
あ、そうだカメラとか見せれば分かるかなあ。
「これ、なんか珍しい物らしいんだけど、僕の世界から持ってきたものが置き換わったやつらしいんだ。」
ポケットをゴソゴソとしてカメラを取り出すとヴェルホルがびっくりするほど目を輝かせた。と同時にガタッと立った。
「それ、神官でもなかなか持てないやつだよぉ!。一部の地域でしか作られてないしぃ!。なんでぇ⁈。なんでもってるのぉ?。」
今までのヴェルホルからは想像も出来ないほどの早口でまくし立てていた。
「僕が元の世界で持っていたものがこの世界のものに置き換わったっていうことらしいよ。まぁ、少し形状は違うんだけど。」
それを聞いたヴォルホルは、
「なるほど…。アオバは元の世界でヒト族に最も近い種族だったからヒト族になったと考えられるな。あと、ヴェル、そんなに騒ぐな。お前がそれを持たせてもらったときどんなことになったか思い出すんだぞ。」
「えぁぁぁぁ。だってぇ。」
ヴェルホルはこのカメラに思い入れがあるのかな?。
そんなこんなでヴォルホルが書類を書くのが終わったらしい。 最後に
「アオバ、自分の名前書けるか?。元の世界の文字でいいから。もし置き換わっているとしたらここの世界の文字も書けると思うが。」
そう言ったところで、僕の手を見て何か思ったようだ。
「その指輪…サティラさんからもらったのか?。」
え?ああ、翻訳やらなんやらで貰ったやつか。
「うん。そうだよ。」
「異世界から来たのに世界語が話せるだなんておかしいと思ったんだぞ。やっぱりそういうことか。あ、それはそうと名前書くんだぞ。」
羽根ペンとか初めて持った。アニメとかだとたまに見るけどなんか不思議だなぁ。高梨青葉っと。
「見慣れない文字だな。あ、世界語に変わった。インクで書かれた文字も置き換わるだなんて面白いな。」
「この世界に持ち込まれたアオバの世界のものは全部置き換わるってことなのかもねぇ。あっそうだ。せっかくだし神官の話をしようよぉ。俺、聖書取ってくるねぇ。」
そう言ってヴェルホルはパタパタと扉の向こうにかけていった。
「神官の話か。俺は20歳からだが、ヴェルは神官になりたてなんだぞ。」
20歳ってことは置き換わった僕よりも前に神官になったってことなのかな。
「おまたせぇ。持って来たよぉ〜。」
聖書はなかなかに重厚な装丁で2キロくらいありそうな本だった。
「それで、神官っていうのはねぇ。俺らみたいに色々なところを旅する人もいるんだけど、階級が上だと王都にいることが多いよぉ。あとね、今着てる神官服。これは、異世界から来た子がいるっていうから久しぶりに着たんだぁ。普段はあの5人と同じ服だよぉ。俺は神官になってから数回くらいしか着たことないしねぇ。にいちゃんの方がこういう話は良く知ってるかもぉ。」
「いきなりこっちに話題を振るな。」
「ぼーっとしてるにいちゃんが悪いんだよぉ。」
「あー。神官な。神官服は確かに一年に一回も着ないくらいで、だけど位が高いおっさんはよく着てるぞ。神官になれる条件は、神官の血を引いていること、何処かの宗教に属していて、今まで一度も変えたことがないとかだぞ。あと、人口的には男の方が多いように感じるな。僕は両親2人共神官だが。」
へぇ。じゃあなれる人は限られてくるんだな。
「なかなか両親が神官って少ないんだよぉ。俺だって父親が神官なのぉ。」
え…兄弟なのでは?
「あの、ヴェルホルとヴォルホルって兄弟じゃないの?。」
「ああ、言い方が悪かったか。僕とヴェルは異母兄弟なんだぞ。世間的に言えば僕が正妻の子、ヴェルが側室の子って感じだぞ。」
「だから俺が神官になるまでは兄弟がいることも知らなかったし、別々の場所で暮らしてたんだよぉ。」
うわぁ。意外と重たかった。
そのあと、ヴェルホルが口を開きかけたところで部屋のドアがコンコン、と鳴った。
「すみません。そろそろアオバくん借りたいです。」
声の感じからしてチトさん…槍を持ってた人だ。
「「はーい。分かったよ。」」
「じゃあ、またねぇ。何か相談することとかあったらいつでも来てぇ。」
「僕らもアオバと話すの楽しいから、遠慮するんじゃないぞ。」
そうして、2人の部屋を出た後に3号車に連れていかれた。ここは店みたいなところだったような。
「お、アオバ。」
そう言ってクレさんが手を振っていた。ので振り返してみた。
「クレさん、説明終わったんですね。」
「ああ、そうだな。とりあえず、俺らは俺がここにいた時にやっていた便利屋みたいな依頼を受けて稼ぐっていうことをやろうと思う。」
便利屋、探偵的な…⁉︎。
「それに加えて、今からアオバの武器を選ぼうと思っているんだが。」
えっ、僕が武器を持つ?。
「これから移動する時に魔獣狩りなんかもするし、護身用にも持っておいた方が役に立つからな。まぁ、訓練とかはトゥーラン様が一緒にやってくれるらしいから。」
トゥーラン様…武器の神様なんだっけ。それで従者がチトさんだから迎えに来てたのか。
「そういうことだから。今から武器選びにトゥーランの元へ向かう。」
フェアリア商団の列車はデュレフスル家の屋敷の前に駅みたいなのがあってそこに停めてある感じです。
デュレフスル家の屋敷
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道路
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駅(5車線くらい)
フェアリア商団の列車
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