クレさんの武器
「言っとくが俺は別に兄貴と仲が悪い訳じゃないからな。たまたま、俺が反抗期の時に兄貴が従者になってそれで…。」
「あーもう、クレはー。お兄さんにやり込められちゃったことが今でも納得できてないんでしょ。」
「…うるせぇ。」
クレさんにも可愛いところがあるんだな。僕らは能力について話し合いながら、屋敷の中へと向かった。中庭専用の出口ではキョウカさんが待っていた。
「アオバくん、大丈夫でしたか?。まさか窓から飛び降りるとは思わなかったもので…びっくりしましたわ。怪我がないようで良かったです。」
確かに、びっくりするよな。とても申し訳ない。
「大丈夫です。なんか、気を使わせてしまってすみません。」
そういえば、どうしてキョウカさんは屋敷の外に出ないんだろう?。
「キョウカさんって、屋敷の外に出ないんですか?。」
すると、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、
「やはり、気づきますか。」
お?。何かあるのかな。
「実は、私の能力は屋敷から出ると使えないんですの。クレッド、少し手伝ってはくれませんか?。」
「おう。」
そう言うと、クレさんはキョウカさんに耳打ちされ、ひょいっとキョウカさんを持ち上げると、屋敷の玄関から一歩外へと歩いた。キョウカさんが外に出ると、しゅわりとまるで溶けるように下半身の質量が無くなってしまった。僕が呆けた顔をしていると、キョウカさんはクレさんに降ろされて、屋敷の中で普通に立っていた。
「私の能力は、下半身から脚のようなものが生えるというものなのですが、屋敷から出ると効力を失うのです。」
そうか。だから、庭師がいたり、外への雑務をする使用人がいるのか。
「だから、アオバくんが外へ飛び出したとき、本当に驚きましたわ。まるで能力を見抜かれたみたいで。」
えーと、僕の能力確か、見抜くことが出来るやつだった気が…。
「フッフッフッ、キョウカちゃん。実はアオバくんの能力は、正にその通り。他の人の能力を見抜くんだよ。」
「あら、そうでしたの。使いこなせるようになればきっと便利でしょうね。」
そうして、僕の能力の紹介は程々にして、フェアリア商団の方々がもうすぐ屋敷に来るらしいので、準備などでキョウカさんがいなくなり、サティラさんは部屋に戻るらしい。僕はクレさんの後をついて、荷物をつくるため書庫に向かうことになった。
書庫に着くと、クレさんは荷物をまとめ始めた。僕もそれを手伝い、あまり時間をかけることなく準備は整った。これから、ここを出て王都まで行く。正直、異世界の風景がどんなものなのか気になって仕方がない。クレさんは、フェアリア商団に居たことがあるって聞いたけどどういうところなんだろうか。今、クレさんは部屋の物置を整理している。触ると危ないものがあるかもしれないから、と僕は居間に追い出された。特にやることもないので、部屋の中をカメラで撮ってみたりした。ふと、思いついて、クレさんのくれた本を取り出す。能力とかについて書いてみようと思ったからだ。開いてみると、文字がぼやけている。僕が書いた時には、普通に読めたよな?。また、状況が落ち着いたら聞いてみよう。
ケホケホと咳き込みながら、クレさんは出てきた。小脇に黒くて四角いケースを抱えている。何かの楽器ケースみたいだな。僕がその箱を見ていると、クレさんは見るか?というように僕が座っているソファの隣に腰掛けて、そのケースを開いた。
中には高級そうな黒色の記事に護られた銃が2つ入っていた。これ、ホンモノ?。
「これは、俺が従者だった時に使っていたものだ。基本的に従者が闘い、主人はその補佐になることが多いからな。遠距離でも使える武器で良かったよ。アオバは欲しい武器あるか?。無いなら俺が選んでやろう。」
武器、使うことになるのか。こ、怖いなぁ。
「いえ、特に希望はないです。あんまり分かんないことなのでクレさんに任せようと思います。」
「そうか。フェアリア商団には、武器の専門家がいるからな。選んだ武器でも分からないところがあったらそいつに聞くといい。」
「はい。」
「武器は、これから魔獣退治にも使うからな。そういえばそろそろ時間だな。行くか。」
そして、僕らは荷物を引きずりながら屋敷に向かった。フェアリア商団…今から会う人は良い人だといいな。