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従者になること4

「あれ?。あっそうだ。異世界に夕食後の祈りなんてある訳ないじゃん。」

「あ、しまった。そうだったな。俺らこれから書庫にある部屋に行くからそこで説明しよう。」


そして、僕はクレさんと一緒に書庫までの道を歩いている。この屋敷本当広いです。書庫がはずれの方にあるからかもしれないけど。

「すまんな。見た目が似ているから、つい色々と一緒なんじゃないかと…。」

「いえっ、クレさんが謝ることじゃないです。その…僕だってそんな風になることありますし!。」

そう、あれはデパートに買い物に行った日店員さんかと思ったら買い物客で外国人という苦い経験がある。

…ふわぁぁぁ⁉︎クレさんそんなに顔近づけないで!外国人の美形見慣れてないんですよ!。クレさんって目の色も藍なんですね⁉︎。

「そうか。そう言ってくれると嬉しい。また、さっきみたいなことがあると思うが分からなかったらちゃんと訊いてくれ、な。」

へにゃりと笑ったクレさんの顔はすごく眩しかった。

僕がクレさんの美形とイケボに気を取られているうちに(そう、クレさんは顔だけでなく声もイケメンだった。)書庫に着いた。取り敢えずクレさんに着いて行く。クレさんの部屋はどうやら書庫の奥にあるようで、迷路のような本棚の間をスタスタと歩くクレさんに着いてくのはなかなか大変だった。ある本棚の横を通った時にクレさんが立ち止まったのでなんだろうと思って横を見ると上の方から緑色の本を取り出した。その後、パラリと本をめくり中身を確認すると僕へ差し出し、

「これ、まだ何も書かれてないやつだから覚えておきたいことや初めて知ったことを書いとけ。俺も分からなかったらそれについて調べるから。」

「はい。」

うおぉ。結構ずっしりとしてる。

「あぁ、そうだ。」

クレさんは本の表紙に手を滑らせて、

《これは主人クレッドが従者アオバに捧げる最初の贈り物である》

そう呟くと本の表紙が光り、クレさんが言った通りの文字が刻まれた。すげぇ、魔法すげぇ。

「アオバが書きたいって思ったことをさっき俺がやったみたいに中のページに手を置いて念じれば文字が出てくる。やってみろ。」

表紙をめくり、手を置く。なんて念じたらいいんだろう。えっとじゃあ、

《こちらの世界では、フォークとスプーンで食事をする。料理が一口サイズだったのが気になった。》

こんな感じかな。

「じゃ、部屋だな。俺と相部屋ということになるが、いいか?。」

「はい。大丈夫です。」

わー。どんな部屋なんだろう。

「ん。分かった。」

そして、クレさんに案内されたのは本棚の前だった。

「それじゃ、開けるぞ。」

クレさんがすっと手をかざすと本棚が動き、部屋が見えた。魔法の世界だ…。部屋の中は、落ち着いた雰囲気で意外と広かった。それと、ほかの部屋もあるようでドアが見えた。

クレさんに案内してもらい、浴室、寝室、キッチンと最初に見た居間の4部屋で浴室には浴槽があることが分かって嬉しかった。

「結構広いんですね。」

これを一人で使ってたなんてクレさんは贅沢だなぁ。

「あぁ、書庫にあるものはなんでも使っていいとサティラに言われたからな。ありがたく使わせて貰った。」

サティラさんめっちゃ良い人!

「そうだ。お前服とか持ってなかったよな。取り敢えず、俺の服でも良いかな。」

「え?。」

サイズ的にクレさんのはどうなんだろうか。

「ものは試しにやってみるか。」

寝室にクローゼットがあるそうで、そこまで案内される。クレさんがしばらくクローゼットをごそごそとした後に、ほい、と服を手渡された。シンプルなシャツとズボンで、なんか制服みたい。学生服を脱いで、ベッドの上に置き、クレさんの服に腕を通す。おぉ!意外と似合ってるんじゃないか。

「基本的に服は着ている本人に合うように魔法をかけてるからな。お前がさっき着てた服は魔法の反応がなかったから誰にでも貸せるものではなさそうだ。」

魔法がかかった服かぁ。すごいなぁ。ふと、自分が脱いだ学生服を見る。そういえば、もう元の世界に戻れないならこれを着ることもないんだろうな。思い出してしまって少しさみしい。頰に濡れた感触を感じた。あれ、僕泣いてる?

「どうした?。何か嫌なことでもあったか?。」

クレさんがすごく焦ってる。なんでだろう。

「ふぇっ。」

何故か分からないが、涙が溢れてくる。悲しい訳じゃないのに。クレさんそんなに心配しなくても良いよ。

そう思っていたのに、気づけばクレさんに僕は抱きしめられていた。とくん、とくんと心臓の音が聞こえてくる。

「もう、帰れないのは辛いよな。きっとまだ慣れないことや失敗することも何回もあるだろうが。全部、俺が受け止めてやるから。お前の、アオバの辛い気持ちは分け合って、楽しい気持ちは二倍にする。そんな主人になりたいんだ。俺は、主人になったのは初めてだから、上手くやれるか分からない。でも、アオバを見た時に、主人になりたいって思った。そうだ、これから俺の話をしようか。」

僕は、止まらない涙を手で拭いながらクレさんの話に耳を傾けた。

「俺は、クレッド・ギルシュタイン。ギルシュタイン家の次男だ。あー、後、ヒト族でもあるな。大体苗字が付いていればヒト族だと思って良いぞ。ギルシュタイン家は従者の一族でな。俺も従者だった時があったんだ。まぁ、そうじゃなけりゃ、俺は主人なんてやれないしな。」

クレさんは、従者だったのか。なんか意外だな。

「趣味は読書!。書庫にこもってる時点で想像してたか?。歴史書を読むのが好きなんだ。デュレフスルはビュアレットの端っこにあるから他の国からも本が流れてくる。これからお世話になるフェアリア商団にも居たことがあるんだが。その時は、国の各地での伝承とか童話を集めていたんだ。…なぁ、アオバ。ひとつお願いがある。これを決めるのはお前だし、今決めなくてもいいが。…俺と一緒に歴史書を作る旅をしないか。お前は、異世界から来たからまだ分からない真っ白な状態でこの世界を見れる。それは、アオバにしかできない。…お、泣き止んだか。良かった。遅い自己紹介だったな。ほら、こっち来て座れ。」

言われるままベッドに腰掛けた。

僕もクレさんに知って欲しいことがある。

「僕も自己紹介します。名前は高梨青葉、高梨が苗字で名前が青葉です。クレさん達とは逆ですね。元の世界では16歳でした。偶然でこの世界に来たので、もう戻れないことを考えて泣いてしまいました。」

変な自己紹介だったかな。

「16か、元の世界では何歳が成人だったんだ?。」

「20歳です。」

「この世界のヒト族だとそれが50歳なんだな。多分、アオバは30歳くらいかな。50歳を超えると体が歳をとらなくなるからよくわからないがな。ヒト族の寿命は大体千歳くらいだから、そういうところもこちらに合わせてあると思うぞ。」

「そうですか。」

30歳というと思い浮かぶのは自分が小さい頃の親だからなぁ。

「あとは、アンネルリアについての説明だな。俺とサティラが、夕食後のお祈りしてただろ?。あれに関係する。まぁ、これから知っていけばいいこともあるから今はふわっと理解しておいてくれ。」

あんねるりあ?

「まず、アンネルリアとはある意味、宗教のひとつと言える考え方だ。簡単に言えば、世界は犠牲によってまわるという考え方だな。あ、アンネルリアっていうのは、世界を作ったと言われている女神の名前でもある。」

神様の名前がそのまま宗教の名前になったのか。犠牲って確か、夕食後のお祈りでも言ってたな。

「アンネルリア、女神の方な。その存在は、この世界ではないところにあって、この世界には媒介を通して

来るんだ。その媒介はユリアって呼ばれるんだが、この世界に3000年単位くらいで現れる。ヒト族の寿命を考えるとだいぶ長い。前に現れた時は、記録が残ってなくてどんなことをする為にその存在があるのか分からないんだ。」

うおぉ…。神が現れるとかすごいな。

「アンネルリアについてはこれくらい知っとけばなんとかなるだろ。フェアリア商団に神官がいたはずだからそいつに聞いた方が良いかもな。あ、そうだ。神官と言えば、アオバの神籍も作らないとな。」

しんせき?

「神籍っていうのは、説明すると難しいんだが。まずビュアレットっていう国があるだろ。で、国が色々な宗教のトップを保護していて、種族、宗教、住んでいる地域で国民を管理しているんだ。」

戸籍みたいなものか。

「とりあえずビュアレットにいるだけでなんらかの宗教に入ってなければ成り立たない制度なんだが、アオバは、元の世界で信仰していたものはあるか?。」

強いて言えば、好きなアニメのキャラは信仰してましたね!…って言うのは気が引けるから、

「特にないですね。」

「そうか。なら、アンネルリアで神籍を入れるようにしよう。アンネルリアは朝と夕食後に挨拶感覚でお祈りすること以外は規定がないからな。これから慣れていってくれ。」

「はい。頑張ります。」

「それから、明日の朝に能力試験があるんだが。それは、従者としての異能力を知る為のものなんだ。」

ほうほう。

「普通に手合わせだと思ってやればいい。キョウカが攻撃してくるのを守るか、避けるか。この違いによって能力を見抜く、それだけだ。」

手合わせかぁ。なんにせよ。痛いのは嫌だな。

「じゃあ、明日に備えて寝るか。寝巻きはこれな。フェアリア商団に入ったら湯船には入れないから、今日は楽しんで来い。」

それから、お風呂に入り、ベッドに横になるとすぐに眠ってしまった。


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