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従者になること1

1.始めにあったこと


交差点への道をある少年が歩いている。彼の名前は高梨青葉、いたって普通の男子高校生である。学校へ行くのだろうか、学生服姿に小走りで道を駆け抜けていく。ちょうど彼の足が道に積んであった雑誌に引っかかった瞬間に白い光に包まれた。次の瞬間には彼の姿はそこにはなかった。誰にも気付かれないまま。



2.異世界に来たこと


「うわああ!」

目の前が白くなったと思ったら床にぶつかった。さっきまでアスファルトの地面を走っていたはずなのに目の前には石で出来ているが確かに床があった。大理石で出来てるみたいな。慌てて起き上がると褐色の肌に金髪の白衣を着た女性と黒髪のショートカットでメイド服を着た女性が慌ただしく動き回っていた。何かを喋っているようだが英語でもなさそうだ。しかも2人とも漫画で見るみたいに可愛い。ここは地球なのか?

「あのー。」

「!?」

僕が話しかけると2人とも驚いた様子でその場で少し話し合うとメイド服の方がいそいそと何か箱に入ったものを持ってきた、と思うと箱から指輪を取り出して渡してきた。

…これはいったい何なのだろうか。取り敢えず指に嵌めてみるとメイドさん?が頷いたのでこれであってるんだろう。

「おーい聞こえてるかい?」

あれ?日本語?

「き、聞こえてます。」

え?なんで…

「良かった。私はサティラ・デュレフスルという者だ、君の名前を聞いてもいいかな?」

とりあえず答えた方がいいよな。

「青葉、高梨青葉です、あっあの僕はどこに来たのでしょうか。教えてください。」

「いいよ。アオバくん、かな。まず、ここは君のいた世界とは違うってことは気づいてるよね?君のいたところの名前は知らないけれどこの世界は通称マグドアラって名前で呼ばれていて、今いる国はビュアレット。のはずれの土地のデュレフスル。あ、さっき君に渡したのはここでの言葉を教えてくれる魔導機械だよ。指に嵌めたら取れないわけじゃないから安心して。」

いや、安心出来ないんだけど。なんで取れない可能性があるんだ。

それにしても明らかに縁のない単語だ。そしてやっぱり異世界か。

「あと、すごく言いにくいんだけどここから君の元いた世界には帰る方法はまずないと思う」

この人なんかぷるぷる震えてないか。

「実は君のいた世界の雑誌をこちらに持って行こうとして間違えて君がキチャッター。」

はあ?

「つまり僕は雑誌の代わりにここに呼ばれてしまったと。」

そう言うとサティラさんはブホォッと噴き出した。

すごい失礼な人だなぁ。勝手に他人をトリップさせといて。

「あはは、そうなんだよ。ここから真面目な話なんだけど。雑誌を持ってくるのに使った機械は持ってきたもののその世界においての存在を消す機能が付いていてね。君の元いた世界での君は存在しなかったことになってるはずなんだ。」

現実だと思えない台詞だな。サティラさんは明るく言ってるけど元の世界に戻れないって結構やばいよな。どんな目にあうのか、ここにいる人が良い人なのかさえわからない。なんだろうすっごいドキドキする。席がえとか役員決めの時みたいな早く終われって感じ。この次に来る言葉が、怖い。

「この世界には、主人と従者のための契約制度、通称主従制度っていうものがあってね。君はおそらくその対象になると思う。」

そう言われてちょっと厚めの冊子を渡された。

それを開くとふわりと文字が浮かび上がり頭の中に内容が入り込んできた。うわ、魔法感すごい。流石異世界。

それによると、主従制度というのは二種類あり、ひとつは強い権力や影響力を持つ人、例えば国王が主人になり、騎士などが護衛する関係を強化するために契約する場合。この場合では従者になるために存在する一族もいるらしい。異世界は恐いな。

そしてもうひとつは僕に当てはまるのかな、この世界において生活するのに一定条件より不利な人が従者となり、主人に従属することで、何かあった時に主人に守ってもらうことが出来るらしい。僕の場合はここでの常識を知らないから必要なのかな。なんだろう。字面から従者に奴隷のイメージがあったけどそうでもないな。生活の上でのパートナーってことか?

「理解してくれた?」

サティラさんから声がかけられた。

「大体は、僕は従者になるんですかね。」

「そこが分かれば良いよ。そうだ、君の主人になる資格がある人を探さないとね。」

すると、今まで黙っていて存在感がなかったメイド服の人が、

「書庫に籠っているあの人なんてどうでしょうか。」

それを聞いたサティラさんは目をキラキラと輝かせて「そうだよ。あいつなら主人の条件満たしてるじゃないか。キョウカちゃんいいこと言うね。」

サティラさんは異国風な名前だったけどキョウカさんは聞き覚えのあるような日本風の名前だな。

「いえいえ、お役に立ててうれしいですわ。」

「あっそうだ。アオバくん、私とキョウカちゃんも主従制度を結んでるんだ。」

となると、サティラさんは偉い人なのかな、機械を発明してるらしいし。それともキョウカさんに何かあるのか。

「私たちの場合は、さっきの冊子に書いてあったこと全部当てはまってるんだよね。」

そんなことあるんだ…。

「つまりサティラさんは偉い人…?」

「私が偉いわけじゃないよ。旦那が偉いの。私なんか五年くらいこの屋敷に引き篭もってるからね。」

ふふん、と胸をはるサティラさん。

「サティラ様、それは自信ありげに話す内容ではありませんわよ。」

サティラさん既婚者なのか。って五年?サティラさんもキョウカさんも明らかに二十代前半くらいなんだけどな。僕と同い年くらいからここに?

僕が混乱しているからなのか。サティラさんが、

「私たち何か変なこと言った?」

「いえ、時間の流れが違うのかなって思って。」

「ああ、ここでは種族によって感じる時間の長さも違うしなぁ。」

「種族?」

「私はクレリア族なんだけど、多分アオバくんはヒト族だと思うよ!特徴が同じだしね。存在が移されたのと一緒だからこっちの世界にあわせてあるはずだよ。キョウカちゃんは私とも違ってミレア族っていって種族特有の異能力が使えるんだよね。ちなみにヒト族にはそんな能力ないよ。」

何だと!異世界に来たらチートとかはないのか〜。

残念。

「キョウカさんの異能力ってなんですか?ってあれ?キョウカさんはどこに…。」

すると、部屋にあった大きな鏡からずるりとキョウカさんが顔を出した。

「はーい。ここですよ。もうすぐお茶が入るので待ってて下さいね。」

えっ今のなに?

「ありがとう、久しぶりにたくさん喋ったからうれしいよ。」

また、キョウカさんが鏡から抜け出て紅茶を持って来た。すごいなぁ。異能力とかロマンだよなぁ。

「はい、どうぞ。お口に合うといいのですが。」

コトリ、とティーカップが置かれる。見た目は普通の紅茶と変わらない。

一口飲むと、

普通の美味しい紅茶でした。

「美味しいです。」

「良かったです。アオバくんは、異能力を見るのは初めてでしたか。まぁ、私の異能力なんて鏡から鏡に移ることと従者になってから使えるようになったものしかありませんし。」

全然大したことないですよ、とキョウカさんは言うけど、この世界に来る前はそもそも異能力がポピュラーではないから、これが普通だとしたらかなり見慣れないことがこれから起きるということか。

って従者になってから⁉︎、ということは僕にもチャンスがあるんじゃ、ワクワク。

「アオバくん、私はこれから君をここに送った機械を改良するからキョウカちゃんに書庫まで案内してもらって。」

「なんで書庫なんですか?」

「君の主人になる予定の人がいるからだよ。まぁ、説得出来るかは謎だけれどね。」

どんな人なんだろう。説得出来るかは謎ってところが気になるけどな。気難しい人なのか?

「では、どこから行きましょうか。屋敷全体を案内してからの方が良いですかね。」

「確かに。1人で迷ったら大変だよね。ついでに他の使用人とも顔合わせしておいたら?」

キョウカさんの他にも使用人がいるのか。

「では、行きましょう。アオバくん。」

その後、だだっ広い屋敷の中を次々と連れまわされ、散々な目にあった。

「えっと、いつ書庫に着きますか?」

いい加減きつい…。高校に入ってから部活やってないからか、日頃の運動不足がっ。

「そろそろ、買い出しに行っていた使用人が着く頃なので、この次の食堂で屋敷の案内は終了ですね。」

やっと終わりか。

「皆さんいますかー?」

キョウカさんが食堂の扉をガラッと開けると、筋骨隆々なおじさんと水色の髪の少年と紫色の髪の女性がいた。サティラさんもキョウカさんも顔が整っていたけど、この人達もなかなか。おじさんが口を開いて、

「ああ、今帰ったところだよ。おや、その子は拾ったのかい?」

「いえ、サティラ様が…。」

「なるほどな。」

あの人そんなに何か起こしてるのか?

「俺の名前はルイスだ。この屋敷の使用人の1人、買い出しとか雑用をしている」

次に水色の髪の少年が、

「ぼくは、ルークです。庭師をしています。お庭、よかったら見てください。」

緊張しているのかちょっとビクビクしていた。

最後に、紫色の髪の女性、うわ、この人おっぱいおっきい。

「あたしは、マルタだよ。コックをしてる。得意料理はマジェルテ。ほっぺたが落ちるぞ。」

挨拶した方がいいよな。

「よろしくお願いします。僕は青葉です。」

こうして使用人の紹介が終わった。あとでキョウカさんにマジェルテについて聞いたところ、トマトのパスタみたいな料理らしい。





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