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初対面の恋人  作者: YUKARI
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5 おやっさん。

『魔法研究所』


 名前の通り魔法関係のことを研究したり管理をしてる場所。

 この研究所の中には雄吾なみの魔力を持ってる人も大勢いて、一般の犯罪者もそうだが魔力に関係する犯罪者とか捕まえる業務もしている。

 それに、この世界でも自分の魔力で鏡の世界に行けるほどの魔力を持ってる人も実は少ないので、魔力がなくても暮らせるあの世界とそんなには生活は変わらない。


 研究所に着いた雄吾は、傍から見れば挙動不審に見える行動をさっきからしている。

 美和に会えるこに対しての期待もあるだろうが、昔から魔力がそれなりあった雄吾の行いのせいで悪いことをしてない今でも雄吾にとって研究所は居心地が悪い場所なのだ。

 悪いことと言っても悪戯程度で捕まるほどの悪いことは、してないはずなのだがいまだにこの場所が苦手でどうしてもソワソワしてしまう。


「おー。雄吾やっと来たな。本部長が来いって言ってたぜ」


 バシっと、雄吾の背中を叩いて声を掛けて来たのは、雄吾と中学からの同級生の大志(たいし)で研究所で巡査をしている。一応は、市民を守る方の部署で働いてて、雄吾と同じくらいの魔力があるため子供の時に一緒になってよく悪戯をしてた悪友って言うやつだ。

 魔力のある大体の人間は、研究所にスカウトされて勤務する人が多いが雄吾は昔から料理がするのが好きだったため、スカウトを断って店をやっている。


「なんで俺が本部長なんかに呼ばれなきゃ……俺は美和ちゃんを、とりあえず探したいんだけど」


 悪いことをしてないはずなのに、この地域の研究所で一番偉い人の本部長呼ばれる=他の人間のスカウトでは、断られるから本部長が直々にスカウトする。

 店が軌道に乗って来たから、スカウトされてることはないと油断してた雄吾の魔力を研究所に向かってる途中に本部長に感知されてたらしい。


「ペーペーの俺が知る訳ないじゃん。彼女に会いに行くより先のそっち済まして来いよ」

「えぇ……。あ、俺、飯作って来たんだよ! 美和ちゃんと3人で飯でも先に食わねぇ?」

「は・や・く・い・け! 自力で行かないなら、俺が飛ばすぞ!」

「自力で行けますよ……」


 大志に飛ばすとまで言われれば、そこまで本部長の所に行かなければならないことが雄吾にも流石に分かり嫌々ながらも、本部長が居る部屋に向かった。


「はぁ……」


 本部長が居るって言われた部屋の前で雄吾は立ち止まる。ここで、立ち止まっていても中の人は雄吾がここに居るってばれてるんだろうけどノックして入るのも気が重い。

 長々とスカウトの話をされるの嫌だが、あの世界に自分が居なかったとか色々あったことも聞けるかもしれないと、ノックをしようとすると中から声を掛けられた。


「なにしてるんだ早くドアを開けて入って来なさい」


 やはりバレてた。と、雄吾の気分は沈む一方だが、いつまでもこうしてる訳にも行かないと意を決して渋々ドアノブに手をやってドアを開ける。


「失礼します……って、げっ?! な、な、おやっさん?!」

「おぅ、雄吾。店は上手く行ってるみたいだな。あっはは」


 子供の時によく悪戯して説教を雄吾たちにしてたおやっさん、(まもる)が、立派な椅子に座って大きな声で笑いながら雄吾を見てる。


「お前、下で大志に何も聞いてなかったのか。俺が本部長になったって」

「えぇ、まぁ……」


 昔からお世話になってる人だから、店を出す時に挨拶をして「頑張れよ」と応援してくれてる護が、自分をしつこくスカウトしてくるわけもないと、気分は少し晴れる雄吾。


「まぁ、座りなさい。早く話をしないといけないんだが、雄吾はなんか俺に言わないことないか?」


 ニコニコと雄吾の顔を見て面白い物を見付けた子供みたいな顔してる護。

 言わないといけないことと言えば、あの世界の話しか雄吾には思い当たらない。けど、護がそのことを何か知ってるかもしれないと思った雄吾は話すだけはタダと思い、そのことを護に話すことにした。


「昨日ナルと鏡の世界に遊び行ったんだけど、なんか変だったんだよ。あっちの世界には俺いなかったし」


 今日の日付はここに来る途中でしつこい位に色んな場所で、確認をして3年寝てたはずの雄吾だが昨日の話で間違いはないと昨日の話として護に話す。


「ほうっ? だろうな」

「……だろうな?」


 護の発言に違和感を感じて、その言葉を雄吾が反復するとまた大きな声で護は笑い出す。


「あ、すまん、すまん。実は全部知ってるから。あはは!!」

「はぁ?! 知ってる?!」

「あっちの世界のお前の部屋は、お前の知らない女が住んでたとか、お前があっちの世界で3年もナルの中で寝てたとか、それで帰って来たらその知らない女と同棲してる事になってるとか」

「やっぱ、俺ってば同棲してんのっ?!」


 なんで知ってんだ? とは、思ったが事情を知ってる人物に会えたことで平常心を軽く失いながら、聞きたいことがたくさんあるにもかかわらず、何から聞けばいいか迷って固まってると護が笑いながら口を開く。


「よかったな、可愛い彼女が数年ぶりに出来て」

「な、なんで、おやっさんはそのこと知ってんだよ?!」

「お前……それ、どっちのことを聞いてるんだ?」


 あまりにも混乱してる雄吾が面白いのか、雄吾がなんのことを聞いてるのか分かってる癖に笑いながら雄吾のことをからかって遊んでいる。


「どっちって、今は彼女がどうのって話はしてないだろ?!」

「そうだったのか? いやぁね、雄吾が関係してんのに世界の歪みを治そうとしてる時に、お前があっち行っちまうからお前の記憶とかおかしくなってんだよ」

「歪みを治すって……おやっさん、何言ってんの?」


 何を言ってるんだ? と言ったものの、あの世界で雄吾の家に美和が住んでたとか、その違いのことを言ってるのかとなんとなく理解はしてるもののやっぱりいまいち状況が掴めず雄吾は考え込む。


「お前が考えてる事で正解だとおもう。でも、それに関わっちゃった人はどうも記憶まで、補正されないみたいでねぇ。俺だって困ってるんだよ? 話したことない俺の娘とお前が付きあって、美里のマンションで同棲してるとか」

「娘っ?! み、美和ちゃんが?!」


 護が美里の旦那だったと雄吾はわかると、店出したばっかりで収入が不安定な雄吾にマンションを貸してくれたんだと納得する。

 それに、美和の父親が護ということは、結婚前に娘と一緒に住んでる男って殴られるんじゃないか? どうして、そんな大事なことをナルは自分に言わなかったんだ! と、雄吾は顔を引きつらせながらも、その様子を気にするそぶりをしつつも護は話しだした。 


「それは……まぁ、とりあえず娘って実感も俺にもまだないし、1年近くもお前らが付きあってるつっても今の雄吾は美和に手を出してないはずだろうから、父親らしい反応はしない……が」


 護の発言で、美和と雄吾の付き合いが1年とわかると、雄吾の顔が一瞬ニヤけたのを護は見逃すわけもなく、ジロリと雄吾を睨みつけながらわざとらしく大きく溜息をつく。

 まだラブラブな時期なのかな? なんて雄吾が心の中ではしゃいでたのがバレバレで、護に何を言われるかわからない雄吾は、焦って顔を正して護にどうすればいいのか聞き返す。


「そ、それで?」

「その美和がこっちの記憶の歪みが治ってるのに、お前があっちの世界に存在してないのと同じで、この世界に居ないんだよ」

「え、美和ちゃん、ここに居るんじゃなかったのか?」

「ストーカーがどうのこうのって話があったみたいだったから、俺が今日はここに連れて行ったって事にしといたんだよ」


 剛志はいいタイミングでストーカーしてたんだな。と雄吾は感心しつつも、その剛志のことで護には話しておいた方がいいと思ったこと思い出す。


「そのストーカー、あっちの世界では美和ちゃんの元カレだったみたいだぜ? 俺があっちに行った日にメールで美和ちゃんが振られたみたいだけど」

「その話は知らなかった。まぁ、そこら辺は追々どうするか考えるとして。こっちに美和がまだ居ない事が問題なんだよ。行方不明扱いも出来ないだろう? 現にあっちの世界の美和は、3年は普通に生活してたんだろ?」

「俺は寝てたから詳しい話は知らないけど……ナルが仲良くなったって言ってたから、そうだと思う。でも、あっちとこっちは一応は違う世界だろ?」

「体育会系の俺に難しい話をさせるな。また話をふり出しに戻すつもりか? 鏡の世界なんだから、こっちとあっちの世界が同じような世界じゃないと世界の秩序が変になるんだよ。お前、あっちの世界の雄吾が存在しないままだと……こっちでも存在してない事になるかもな? お前だけじゃなくて、こっちに存在してない美和も」


 護の言葉の意味を理解するのに少し時間がかかり、雄吾が考え込んでいると1つの可能性を雄吾は理解して焦りだす。


「お、俺ちゃんと死んでせめて葬式はしてもらいたい……!」

「ぶっはははは! 何言ってんだ、お前は。存在を消さないために、だからお前を呼んだんだが。俺だって自分の血が流れた娘欲しいもん」


 護の「欲しいもん」って、子供みたいな発言に雄吾は引きつりながらも、その話を聞いたからと言って自分が何をすればいいのかは予想がつかず、困惑した表情をするしか出来なくなってしまう。


「あっちでは3年経ってしまってたんだろう? 存在が消えてるんだったら、とっくにお前も消えてるはずだ。しかし、こっちでは1日だ。ナルの中で寝てたって言っても、ちゃんとあっちで美和と雄吾が生活してたって事になってんだよ。お前らが一緒になるっちゅうのは、きっと運命なんだな。お前だって、少しは美和に対して思うとこあるんだろ?」


 また護の発言らしからぬ「運命」という言葉に引きつつも、護の言ってることはなんとなく雄吾には理解が出来た。

 初めて美和を見た時に名前で自分のことを何故か呼んで欲しいと思って、底をついてたはずの魔力を無意識に使い切って名前を呼んでもらったりしたことが、何故かそういうことだったんだと雄吾の中にすんなりと入って来た。


「俺はどうすればいいんだよ」

「あっちの世界から、美和を連れて来ればいいだけ」

「え?! 俺が連れてくるの?!」

「うむ。あんまり、いろんなヤツにこの件に首突っ込ませるわけにはいかないし、ナルを迎えにどうせ行くんだろ?」


 昔から一緒に居たナルを放置することは、全くと言って雄吾は考えてはいなかったが美和を連れて来るとなると雄吾の中では話は別だ。

 美和が雄吾の好みのタイプであったのは、確かな事実で連れてきて「はい、俺が彼氏です」なんてやるんだったらきちんと順序を踏んで美和と付き合いたいと思っていたからだ。


「人間関係もあっちの世界と変わる事はないし、多分こっちに来れば勝手に記憶が補正されるはずだ。美和が困る事ことはないはずだから、シレッと連れて来ればいいんだよ。じゃあ、よろしくな」


 多分、補正されると護の微妙な返答に疑いを持ちつつ、雄吾は今聞いた話をナルに話に行くことにした。


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