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遅いクリスマスLOVE

作者: ゆきだい

初投稿です! 未熟者ですがこれから頑張っていきたいと思います!

「いい! 何があっても夜に予定入れないでよね! 」

 

大学の学生食堂全体に響くような、素晴らしいくらいの大きな声で叫ばれた。

その声の主は俺、高松(たかまつ) 雄太(ゆうた)の前にいる、俺と五年も一緒な恋人、鐘白麻衣(かねしろまい)だ。

 

「そんな大きな声で言わなくても分かるって。」

 

声の大きさに少し愚痴をこぼす。さっきから、ちらちらとこちらを見てくる他の生徒の視線が痛いしな。

「他の人なんていいよ!それよりちゃんと約束守ってよね!」

 

ガタッと音がなるほどすごい勢いでイスをひき1人で食堂から出ていってしまう。

そう約束とは今日の事、世間ではいわゆるクリスマスの日だ。

 

 

 

大学の講義も終わり、バイト先へと向かう。

 

今日は麻衣との約束があるためバイトを早々に切り上げさせてもらった。

──後々先輩や店長に文句を言われそうだが麻衣の為だとわりきった。

 

店から外に出れば、日は完全に沈んでいたがまだ名残があり幾分か明るかった。

 

「待ち合わせ場所に向かうか。」

 

自分に気合いをいれるように一人言を呟く。

待ち合わせ場所に向かう途中、やはり目に映るのは本日のイベントの為に装飾を施されている木々。そして店の前を通れば耳に入ってくるクリスマスのテーマソング。

でもその曲が今の俺には複雑だった。

 

麻衣と付き合ってから、クリスマスは毎年一緒に過ごしている。一緒に居られて嬉しいし、楽しい気持ちがたくさんある。

 

去年はバイトやいろいろな事情によりあまり一緒にいられなかったせいなのか、先程のように意気込みがすごい。

 

だから、今年は万全の態勢を、と思った。

それでも不安は尽きない。

麻衣に渡す、プレゼントなのか微妙なラインのものは、すでに準備をしてあり、鞄に忍ばせてある。

「クリスマスに渡してもいいのかな?」

そんな不安を胸に秘めながら、携帯の画面の時計を見れば待ち合わせ時間よりかなり余裕はあった

「まずは時間に遅れるような事は絶対にしないようにしないと。」

そう自分にいいつつ、歩く速度を少し早める。

 

 

 

待ち合わせ場所に着いても麻衣はいなかった。

「早く着きすぎたか? 」

 

ポケットから携帯を取り出し画面を見れば待ち合わせ時間より少し早かった。

そのうち来るだろと思い、麻衣を待つことにした。

 

 

 

…………

 

「……遅い。」

もう待ち合わせ時間を2時間ばかり過ぎてるのに麻衣がくる気配はいっこうにない。

 

携帯にメールや電話が来ている様子もない。

少し不安になった。

 

 

………

 

それから少したった後、電話をしようか迷っていた時、人垣の中からこちらに走ってくる麻衣を見つけた。

 

「麻衣!」

 

俺が分かるようにきちんと手をふりながら声をかける。

すると麻衣は気づいたようでこちらに駆け寄ってくる。

急いできたのか呼吸が荒く、肩で息をしている。

そして呼吸を整え着くなり一言

「ごめんね!すっごい待たせて。」

 

しかも『すっごい』を強調してくるし。

「俺を怒らせたいのか?」

 

待たされすぎてイライラしていたのか、自分でもわけもわからず怒ってしまう。

すると麻衣はムッとしたような顔になり

 

「謝ってるのにその反応はないんじゃない? それに去年酷いことしたのはだれかな〜」

 

「そ、それは……」

俺が本当に困っていると

「冗談だよ冗談。」

「はい?」

 

と、俺が呆気にとられて

 

「だから冗談だってば。本当はね………」

少し顔を赤らめつつ

「正直に言えば、来るの遅くなっちゃったからさ、もういないかな〜って思ってたの。だからいてくれて嬉しかったよ♪」


はにかんだ顔の麻衣はめちゃくちゃ可愛くて、

「いや、その、お、俺は全然気にしてないっていうか…」

急に気恥ずかしくなった。


「ほら、そんな事いいから、早く行こ!」


麻衣に手を引っ張られながら、クリスマスで賑わう町へとくりだす。

 

 

 

いざクリスマスデートをしても、これといって特別な事もしなく、いつものようにすごしていた。

 

──正直、男として特別な日ぐらいエスコートしなくちゃ行けないとは思うけどね。

 

 

 

そして歩いているとほどよい公園を見つけたので休む事にした。

ベンチに腰掛けた麻衣に一つ質問してみた。

「なぁ麻衣、俺が言うのもなんだけど、………つまらないか?」

麻衣は笑顔で

「そんな事ないよ。」

と言ってくれた。

──って麻衣に気使わせてどうするよ俺。

 

すると麻衣は

「雄太はつまんないの?」

ちょっと哀しげともとれる顔で言われた。

「い、いや、そんな事はない。」

不謹慎かも知れないけどその顔も可愛くて、またもや気恥ずかしくなる俺。

「私はね………」

麻衣は一呼吸置き俺の目を見て

「雄太と一緒に居られればそれでいいよ。」

満面の笑みで言われたその顔は、俺にはめちゃくちゃ効くかわいさがあった。

 

──いや、効くって俺自身も何を言ってるのか分からないが。


「その、なんだ。」

麻衣からあからさまに変な方向へと目線をそらし

「お、俺も麻衣と一緒ならそれでいい。」

自分で言っておいて顔が赤くなるのが分かる。

「雄太。」


ちらっと麻衣を見てみれば、俺の視線に気付き微笑んでくる。

一気に恥ずかしさがこみあげてきて、またもや目線をそらす。


──って俺は純情少年か! 今更それぐらいで恥ずかしがってどうするよ。


なにかしないと、と思い浮かんだのが


1 今までのを無かったかのように違うとこに行こうと言う


2 恥ずかしさを我慢して前から抱きしめる。

3 流れにまかせて、もういくところまでいく。


──なんでこんなんしか浮かばないんだ?


自分が情けなくなる。

それでも一応考えてみる。

1番は男としてどうかと思うし。2番もそんな勇気があるなら考える前にしている。

そして、3番………はどう考えても今は危ないよな。 

そんなこんなで、結局何をするか迷っていると音楽が流れた。

その音楽のおかげで意識が現実に戻った。

 

麻衣の方から鳴っている、海上保安庁を題材にした有名な某映画の挿入歌。

「あ、ちょっとごめんね。」

電話なのか、少しづつベンチから離れて行く麻衣。

 

「誰からだろ?」

結構一緒にいるがあの曲は頻繁には聞かない。

そんな事を考えていると

「うそ! 本当に!?」

いきなり麻衣の声が大きくなった。

その声は少し上ずっているように感じる。

 

「う、うん分かった。………じゃあ待ってるから。」

電話が終わったところを見計らい麻衣に駆け寄る。

「麻衣、どうかしたのか? 」

麻衣の顔が俺に向けられる。すると麻衣の瞳には微かに涙が浮かんでいた。

「お、お爺ちゃんが……… 倒れたって。」

「あの元気だったお爺さんが!? 」

 

 

──実は麻衣のお爺さんとは何回か会っている。齢75なのに、それを感じさせないくらい活発な人で、心配だからとわざわざ麻衣に会いに一人でくる人だ。

 

 

「それで、ね。今から姉さんが向かうからそれに乗っけてもらう事に……」

すると麻衣は泣きながら

「ごめん、ね、雄太。せっかくのクリスマスなの、に………」

と続きを話した。

 

「そんな事はどうでもいいよ。早く行ってあげなって。」

精一杯笑顔を作る。

 

「本当に………ご、めん。」

 

そうして麻衣は俺の前から走って行った。

 

「お爺さん、………大丈夫かな? 」

不安な気持ちは増える一方だった。

 

 

 

 

 

カタン

「………ん? 」

何か音がして目が覚めた。

目が覚めたって事は

「そうか、俺寝ちゃったのか。」

 

昨日の夜、麻衣が行った後、家で電話待ちをしていたらそのまま眠りについたようだ。

 

「結局麻衣は帰ってこなかったな。」

 

──とは言うものの寝ていたんだが。

 

そんな事を考えていると

ふと、手に何かの感触を覚えた。

優しくて、温かくて……とても心地よい感触。

──何だ、これ?

見ようと身体を動かせば。

そこには、ほおづえをつきながら俺の手を握っている麻衣の姿。

「麻衣!」

まぎれもなく、昨日実家のところにいった麻衣だ。

 

どうして麻衣が? お爺さんのとこに行ったんじゃ?


訳が分からず俺が状況を判断するために考えていると

 

「雄太の寝顔ってかわいいね♪」

 

なんて笑顔で言われた。

 

顔が赤くなるのが自分でもわかるぐらい、身体が熱くなるのを感じた。 が、今はそんな事はどうでもいい。

「麻衣!お爺さん、さん……わぁ!?」

 

 

いや、てゆうか今気づいたけど、俺の視力と記憶が間違ってないのなら麻衣の指に俺が、俺が買ったクリスマスプレゼント………

指輪がはまってるんですけど!

「あ! これ? 勝手に袋開けてつけちゃった」

 

つけちゃったってそれは酷くないですか?

……麻衣さん。

 

「でも、まさか雄太が指輪買ってるとは思わなかったよ。」

 

「いや、一応さ、結婚指輪の替えなんだけど……」

 

しばし沈黙。てか麻衣固まってるし。

 

──しかし、もうあれを言ったのなら人として、一人の男として行かねばなるまい!


「それはさ、ちゃんと手渡し、したかったよ。 だってさ………」

そこで言葉を一度切り、


「俺の──麻衣への気持ちの答えだから。」 そう、告げる。


──なんか、すげぇめちゃくちゃ恥ずかしいんすけど。てか、勢いで言っちゃったけど大丈夫かな?


麻衣のほうを見れば

「あの、その、………」

さすがの麻衣も慌てている。

それでも麻衣を気にせず

──いや、実際してるけど

「今はまだ、さ、そんなのしか渡せないけど、いつか、いつか絶対ちゃんとしたの渡すから。………だから、俺と結婚してくれ。」

そして、

 

 

「………私も、私も雄太となら、いいよ。」

そう返事を返してくれた。

 

俺は麻衣を、麻衣は俺をしっかりと見てお互いに微笑んでいた。

すると麻衣は俺のほうに身体を預けてきて

 

「言うの、さ、すっごい遅いよ雄太。」

 

といわれた。また『すっごい』を強調してくるし。


「後、全然ロマンチックじゃないよ。」


なんかプロポーズしたのに怒られてるし


「ごめん。」

そう謝る。


「ん。」


俺は麻衣を抱きしめた。


もう、言葉はいらないと思うから。



──後で教えてもらったがお爺さんは疲れがたまり貧血で倒れたらしい。 それを見たお婆さんが救急車をよび、近所の人達を筆頭に大騒ぎになって家族を呼んだとか。


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