ダメ人間を問う
いやーwひさしぶりw
「先生に相談してよかったぁ~」
「尾崎先生って、頼もしいし本当に私たちの事を理解してくれるよね~私、あの高校に行こうか迷ってたんだけど、これでスッキリしたわ。」
そんな会話が次々と飛び交うのはとある中学校の進路面談室。
俺の前の女子は面談を終え、先ほどまでどうしようどうしようと喚いていたことをすっかり忘れ、その瞳からは、迷いが消えうせ、代わりに決心というものが棲みついている。
その尾崎先生とは今日初めて話すことになるが、俺もこいつらに影響され、自分の絶望的な成績でも、どうにか高校へは行けそうな気がしてきた。
「次、佐野くん!入って!」
案外に明るい声が聞こえてくる。
本来高校なんて行けないと思っていたはずだが、突然の希望に俺は恥ずかしくも緊張してしまう。
「は、はい!」
ぎこちない応答。それにしても良くやった方だとは思う。
面談室に入ると二十代半ばの若い男が座っていた。尾崎先生であろう。
彼は俺に座るように指示し、早速面談を始めた。
「佐野くんは、どこか行きたい高校とかあるの?」
「う~ん、実は、○○高校へ行きたいんですが、成績が全然足りなくて・・・」
○○高校は、この地域じゃ最底辺校である。
俺は尾崎先生の次の反応に期待する。
きっと、何か方向性を示してくれると。
しかし、予想もしなかった返事が返ってくる。
「佐野くん、君、高校諦めた方がいいよ。」
五分前の自分がその言葉を聞いてもやっぱり?と笑って返したかもしれない。しかし、なんだろう、腹立たしい。
俺が反応を示す前に尾崎先生が続けて言う。
「君はさ、もうどうあがいても、どこにもいけないよ。この成績だよ?考えればわかるでしょ?君のような人間は、もうどうしようもないんだ」
言っていることはすべて正しい。しかし、なんだこのいらつきは。
俺は無言で面談室を立ち去り、その日は学校を早退して家に帰った。
あいつが言った事を全部覆して、見返したい。そう思った。
その日からこれでもかと、俺は勉強した。
すると、成績は見る見る上がり、○○高校どころか、難関校の××高校に合格した。
そして、俺は再び尾崎先生のところへ訪れる。
俺は最高に勝ち誇った顔で言う
「あなたが言ったダメ人間は!××高校に合格しました!」
「すると思ってたさ。」
尾崎先生は不思議な笑みを浮かべる。
意味がわからない。
「どういう意味ですか。先生は俺を散々馬鹿にしましたよね?」
「・・・馬鹿にしなかったら、佐野くんは、受かってたのかい?」
その瞬間俺は悟った。
悔しがりながらも俺は、深々と頭を下げ叫んだ
「ありがとうございます!!」
その後、悔しさなのか嬉しさなのか、感極まり瞳から流れ出た涙を、俺はしばし味わった。