表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/18

素顔

「入学式、終わったみたいだね私たちも隙を見計らって自分の教室に何食わぬ顔でいよっか」

「うん、そうだねきっとまずは新入生から退場するだろうから少し待ってよっか…渡り廊下がこっちからガラスで透けて見えててよかったよ、この角度ならあっちからも見えないだろうし」

「まさに絶好の覗きスポットってわけだね」


まあ覗きって言っても大したものはみられないだろうけどね、と一応心の中で付け足しておく、新入生はやっぱりなんか初々しいね

私も、はじめての入学式はあんな感じだったのになあ…

ボーっとしていて顔をうつむかせたらしゃがんでいる丁度真下にうごうごと蠢いている芋虫さんがみえた、黒と黄緑色のコントラストがなんとも言えないそしてところどころには赤っぽい点々が…

そこまで脳内で理解して一気に全身に鳥肌が立つ、何々何!?やめて!


「っ!?」


驚きすぎたのか何なのかわからないけれど、バランスを崩して後ろに倒れてしまう、後ろには中腰の姿勢で渡り廊下を見ていた斉藤君がいて二人ともしりもちをついてしまう


「いってて…斉藤君、だいじょう……ぶ?」

「あ、うん、大丈夫だ……」


お互いの間に気まずい沈黙が流れる、そう、非常に気まずい沈黙が

なぜかというと私が斉藤君に抱きかかえられているような感じになっているからである

そりゃあ誰でも黙りますよね…しかも斉藤君のメガネが外れちゃって私の位置から顔が丸見えなのだ

正直言ってイケメンだと思う、私の顔が真っ赤に染まるくらいには


「さ、斉藤君、その、あの…えっとメガネが外れちゃって顔が見えちゃってるっていうか、なんていうか」

「…え、あ、本当だ、でもよく見えないや、えっと高野さんだよね?違う人だったりしないよね?」

「いや、そんな一瞬で違う人にならないよ…近い近い!」


メガネが外れてしまってよく見えないのかこちらに顔を近づけてくる、イケメンの顔が近づいてきたらどう思う?照れるわ!少なくとも私はね…


「ちょ、とにかく待って、まずは離れてよ…この体勢もなんか照れるっていうか、早く離れて!」

「ご、ごめんね!メガネは…っと!?」


私が上に乗っている状態でメガネを探そうとするんじゃない!さらにバランスが崩れて芋虫と接触しちゃうだろ!

そんな事態になることだけは免れたいので私は必死に斉藤君にしがみつく…正しくは抱きつくと言った方がいいのかな?


「う、うん、高野さん、ちょっとどうしたの?」

「動かないで!お願いだから、しばらく動かないで…」

「……っ!?」


動いたら芋虫と接触しちゃうううぅ…と内心で付け足しながらも斉藤君を離そうとはしない、私が斉藤君に向き合う形になったせいなのか何なのかはわからないが見つかったら誤解しか招かないであろう体勢になっていた


「わかったよ、動かないから安心して、落ち着いて…ね?」

「うぅぅ…うん」


泣きべそをかきそうになりながらも頷く、たぶんもう芋虫もどこかへ行っているだろうと自分の心を奮い立たせて上を見上げる、上を見上げれば当然斉藤君の顔があるわけで、


「……ん?」

「ど、どうかしたの高野さん、ボクの顔に何かついてたりする?」

私は何度か瞬きをした後改めて斉藤君の顔を見る

うおおおお、なんか、悶える!女の私より美形って…抽象的で何とも言えないっていうか、その


「いや、付いていたものが付いていないというかなんというか、なんていうか綺麗だね」

「え…そういうのは男からしたらどうなんだろう」


それもそうだ、と思うけど綺麗なものは綺麗だ、目が離せなくなってしまう、これ女装しても違和感ないね

お化粧とかすればとっても綺麗な女の子が仕上がるんじゃないだろうか


「……そろそろ目を逸らしてもらってもいいかな?」

「おっと、いやあ斉藤君そんなにイケメンなのになんで顔隠してるのさ、出せばいいじゃん」


そういうと斉藤君は首をかしげて隠してるつもりはないといった、彼曰く髪は切るのが面倒だから切らないしメガネも買い替える必要性を感じなかったからそのままなんだそうだ、もったいないなあ、磨けば光る!みたいな感じなんだけど

……ところでなんだが、私なんか彼と青春してない?自意識過剰?なんか桜城さんみたいなことしてる気がするなー、気のせいかなー…これ以上かかわりを持たないようにしようかな、それがいいね!


「入学式も終わったみたいだし、私は自分のクラスに戻るね、いろいろありがとうございました……それじゃあ!」


さっさと自分のクラスに戻ってこれまでどうりに生活して、バキッ…安泰なループ生活を味わおうと思っていたのに、なじぇ?

何故引き止めるし、腕を放してほしい、自由にしてほしい、そして先ほどの不可解な音は気のせいだと思いたい


「メガネ、壊れちゃったんだけど…」

「え……」


斉藤君が力なく笑う、そこには割れたメガネと歪んだフレームがあった

私が斉藤君を見なかったたった数秒間の間に何があったわけ?

本当に今日はついてない、こうなったら今日はとことん自由にやって明日から普通に過ごしてやると決断するも、のちにこの決断は間違っていたと認識せざる負えなくなるのだが…まあそれはまた後日


「ホントに、何から何までごめんね…また迷惑かけちゃって」

「いや、別に…メガネ無い人を放っておいた私も悪いから」


現在私たちは私、そしてその斜め後ろに斉藤君という風にして歩いている

なんでかってそんなのは至極簡単なことだよ、メガネが割れた彼の目のかわりになるのが今日の私の役目だからね、斉藤君には私の制服の裾を持ってもらっている

2年生の教室は3階なので階段を慎重に上る


「ねぇ、斉藤君、斉藤君は桜城胡桃さんって知ってるかな、私のクラスに転校してきた女の子なんだけどね」

「桜城、胡桃……えっ、胡桃ちゃん!?」


斉藤君が名前を確認した後驚いたように顔を上げる、びくっ、と肩を震わせちゃうけど仕方ない、斉藤君桜城さん知ってたんだね…

悲しいような、嬉しいような、不思議なような、いろんな感情がうず巻く、きっと今の私の顔は何とも言えない顔をしているのだろう


「そっかぁ、転校してきたのって胡桃ちゃんだったのかぁ…今度会いにいかないとなあ、胡桃ちゃんきっと綺麗な子に成長してるんだろうなぁ」

「……何、桜城さんと知り合いなの?」


嬉しそうに話す斉藤君を見てると微笑ましくなってくる、なんかもやもやする気もするが…


「うん、そうだよ昔隣に住んでたんだけど僕が引っ越しちゃったから…それきり会ってないんだ」

「ふーん、そうなんだ、桜城さんのねぇ…」


まさか桜城さんと斉藤君が知り合いだったとは、いやはや、今まであの人たちにこれっぽっちも興味なかったからね、本当に

3階に上がったところで斉藤君を振り返る


「3階についたよ、たしか1組だよね?」

「うん、そうだよ1組、高野さんは2組だよね?」


こくん、と頷いて1組を目指す。1組の様子を物陰から見ればどうやら道弘先生が話をしているようだ

このままはいるわけにもいかず、じっとしていれば道弘先生からの呼びかけがあった


「ところでみんな、斉藤君は知らないかな入学式にも来ていないみたいで…」

「さ、斉藤君、これは今行った方がいいよ、その方がやりやすい」

「そうだね、ありがとう高野さんまた放課後よろしくね」


そこで斉藤君は教室に入っていく、私もそれを見送りながら自分の教室の様子を見る、丁度先生の話が終わったみたいで全員が起立をしているのがわかる。

このままここにいれば出てくる生徒に紛れてうまく入ることができそうだ

先生の話は兄貴から聞くからまあ、良しとしよう


「じゃあ、全員余計なことはせずに部活するなり、下校するなりしろよー」


兄貴の声が聞こえてがたがたと椅子の音も聞こえてきた、ちらほらと出てくる生徒が私のことを驚いた様子で見つめてから帰っていく

私は後ろからそっ、と入って自分の席まで行く


「やよ~、どこに行ってたのかな、入学式をサボって?」

「あ、ああ小町さんじゃありませんかアッハハハ…私はこれで失礼しようかな人を待たせてるから!」


鞄を手に取り小町の手から逃れるように廊下に出る


「あっ、ちょっとやよ!」


後ろから聞こえる小町の制止の声も聞かずに一直線に立った今礼が終わったところの2組に駆け込む

2組の人にびっくりされたけど気にせず斉藤君の所に行こうとしてた私の足が止まる、何故なら斉藤君のとなりには桜城さんの姿があったからだ

前に書いた話でちらほらと変わっている部分があります。(特に桜城さんについて)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ