器物損害
「あ、あの先輩…方、私2年じゃなくて1年ですよ、やだなーさっきもそう言ったじゃあありませんか!」
声が震えないように細心の注意を払いながら言う、なんで、なんで2年生ってばれかけてるの?内心ぶるぶるだけど笑顔を保っておく、人の信用を得るには笑顔が一番大事だからね!
「何を言ってるんだ、組章に2と書いてあるじゃないか、まさか忘れていたのか?」
「う…」
忘れていました、なんて素直に言えるわけもなく…
これはクラスです、なんて言い訳も通らないわけでありまして
「忘れてたんや…ふーん、そうかあ」
「ううぅ…あうぅ」
「じゃあ教えてもらおうか、俺等のこと何で知ってるのか」
んぅ?今気づいたんだけど、この二人はこの学校でも結構有名なわけで、この二人を知らない女子生徒はいないわけで、現に私も知ってるわけで
あれ、なんか
「…もしかしてからかったりしてます?」
「ぶっ」
竜崎先輩が噴き出す、ああ、やっぱりからかわれてたんだ…
確かに私を含め今学校にいる生徒の大多数は竜崎&真谷のあわただしいコンビを知らない、なんてことはなく
「やっと気づいたか」
真谷先輩もやれやれと言った顔をしている
完璧にはめられた…!
「う、じゃあ私入学式に急がないとなので失礼しま」
「ちょっと待て」
このパターン、さっきも見たような気がする、気のせいかな?
何コレ既視感?ついさっきまで同じ状況だったね!真谷先輩手厳しい!
「そういえばだが…なぜ自分が1年生という嘘をついた?1年生はまだ登校してきていないはずだ、そんな見え透いた嘘すぐばれるだろう?」
「え」
ああ、そういえば名無しの1年とか言ってた時期が私にもありましたね、はい
あれはさっさと帰りたいがためのウソだったんだけど…素直にそういえばいいのかな?駄目だよねっ絶対
そこで私はハァ…とため息をつく
「あー、それは、あの、その、間違えたんですっ!」
「間違えたん?」
「そ、そうなんです、その、少し前まで1年だったから!」
「へぇ」
とりあえずは納得して、もらえたのかな?
その時に気が付けばよかったんだと思う、自分の浅はかさに、でも、もうどうしようもないことだ
先輩たちが顔を見合わせていることに
「そ、それじゃ失礼します!」
ピュッ、と音が付きそうなくらいダッシュで走り抜ける
「お、お大事に」
「ぶはっ」
また噴き出されたけど、気にしないだってお大事にはお大事にだもん
小町、怒ってるかな
「はぁ…」
大きなため息を一つついて保健室のドアの前から立ち去った
そしてやっとの思いで教室の前につく
ガラッと教室の戸を開けるとなぜか教室は小町しかいなかった
「え、どういうこと…?」
「あ~、やよ~」
えっとね~と小町が説明をしてくれる
まあ、それをかいつまみながら話をするとだね
・転校生の話は結構話題になっている
・女子たちは…文句(?)を言いに
・↑の理由は小鳥遊先輩について
・男子は面白半分で見学に
「なにそれ…趣味悪いなー、結構悪趣味な人がする所業じゃない?特に男子に関しては」
「あはは~、面白いでしょ~?」
「いや、そうじゃなくて…だな」
みんなもうすぐで入学式が始まろうっていうときに昼食もとらずに何をしてるんだか…
「あ、そういえばやよ遅かったね、何かあったの?」
「あーうん、すこし竜崎先輩と真谷先輩にお世話になってて遅くなっちゃったごめんねー…」
「…は?」
びくっ、と肩が震える
なになに、そ、その眼は狩人の目なんですけど!?そんなに遅れてきたことが癇に障ることだったのだろうか?
「ふーん、ふーん…そうなんだー、あの先輩2人にお世話になった…ねぇ」
「こ、小町サーン?」
「まったく、やよったら」
ん?特に何もないのかな?よかったよかった
これで一安心、昼食にはい…
「すぐに逃げたよね?」
「…」
よし、ちゃんと何かあった―!5,6秒くらい前の私、すまんね!
私小町のこと甘く見てたよ!
「に、逃げたよ、うんすぐに用事も済んだし、すぐに挨拶してお話切り上げて戻ってきたよ?」
「ウソだね、目が泳いでる」
「ウソですすみません」
狩人のような目が鷹のような目に代わる
ああ、もう人間を超えてしまったか…
「やよ、男はみんな狼なの~、分かる?」
「え、そうなの、そんなの保健体育の教科書には書いてなかったよ?」
「…うーん、やよ、生態的にじゃなくて~キモチ的になんだけど~」
「男はみんな狼…」
「あ、聞いてないのね~」
男はみんな狼ね、ま、小町のお決まりのウソだろうけど
もしくは…ネタ?
「まあ、いいや~お昼食べよう?」
「あ、うん」
今日の私のお昼はサンドイッチ2個です、お弁当の部類に入るのかなこれ
「そんだけで足りるの~?」
「ふぁいふふぉ?」
「え、足りるんだ」
「え、何でわかったの…」
「何年親友やってきたと思ってるのよ~」
笑いながら小町が言う
「それもそうだね」
もくもくとサンドイッチを食べてさてオレンジジュースでも飲もうかな~と思った瞬間、
パリーーーーーン!!、きゃああ!?うわっ、なんだよ!?
と騒然となる
おもわずごふっ、とオレンジジュースを器官にやってしまって、ごほごほとむせる
「な、な?」
「窓が割れたみたいだね~」
「な、なんだ、ふぅ」
良かった、いや、よくないけど、桜城さんがまた何かしでかしたのかと…
「きゃあっ、先輩っ、胡桃手を切っちゃったみたいなの!」
「胡桃っ、大丈夫ですか!?ああ、いけない、いますぐに救急車を!!」
なんだ、ただの桜城さんと小鳥遊先輩か…
「いやいやいやいや!?」
「ぶっ、やよ、ど~したのよ~」
「え、ちょ、もしかして」
「あ~あ、やっちゃったか~」
だっ、と教室の扉に駆け寄る
扉からひょこっ、と顔を出せば手前の所で窓ガラスが割れていてその後方にはしりもちをついて可愛らしく口に手を当てている桜城さん、そしてその肩を抱くようにしている小鳥遊先輩、そしてそのさらに後方にはギャラリー、で逆側を見るとスカートが何人分かチラッとみえた
おい、ひどいけがをしたのかと思えば足をすこーし切っただけかよ!
てか、あれって…
「なんとまあ、大げさな…」
「確かに~」
本音がぽろっ、と出てしまう
「先輩っ、痛いよぉ…」
「仕方ありませんね」
「きゃっ」
さっきまでの、対応は何だったんだ大げさに言ってたじゃないか!
そしてお姫様抱っこかい
「う、うわぁ~」
「さ、いきますよ、胡桃」
「はぁ~い」
語尾にハートでもつけそうな勢いで桜城さんは返事をする
そのときガラスをものともせずに踏んづけていく
「えぇー…」
ありえないだろ、避けろよ!
「どうする~?」「ヤバくね?」「先生よぼっ」「てか何あの女」「つーか何でガラス割れたの?」
後ろにいたギャラリーたちが次々に喋りだす
このままではけが人が増えるなあとおもいつつ掃除用具入れまで行き箒と塵取りを出す
「え、やよ、ちょっと何するつもりなの!?」
「小町、私あれ片づけてくる」
「え?え?」
ガラッ、と扉を開けガラスが散らばっているところまで行く
大きくて手で拾えそうなものは手で拾ってもう片方の手に乗せていく
「ちょ、危ないよ!?」「え、大丈夫なの!?」「先生まだなの!?」「ヤバいって…」
ギャラリーたちが私の行動を見てさらにざわめく
心配していただくのはありがたいがそう思うなら隣の教室か手近な教室から道具とってこ、
いった、切った、手、切った
「きゃっ、」
「だ、大丈夫かよ」
「先生、高野先生、早く!」
手のひらからじわじわと血が出てくる
手のひらにガラスなんて乗っけるなんて、よい子のみんなはマネしちゃダメだぞ
「っ、おい、や、高野、大丈夫か!?」
「は、はい、まあ、ってか高野先生高野って…ぷっ」
「笑ってる場合か!」
「すみません…」
しゅん、と顔をうつむかせる
まさか本気で怒られるとは…そんなに怒らなくてもいいのに
そういえば、と小町を目で追う
「あ、あれ、小町?」
「はぁ!?柴田がどうかしたのか?」
「い、いえ…何でもありません、ハイ、なんでも…」
「何なんだ…まったくとにかく、保健室行くぞ!」
「えっ…いや、え!?」
保健室はアカンって、絶対小鳥遊先輩と真谷先輩と竜崎先輩と桜城さんでハーレムできてるよ!
「えっと、保健室はいやかな~なんて」
「…いいから行くぞ」
怪我をしていない方の手をぐいっと引っ張られよろめきながらもついていく
「ちょ、先生!?」
身長差を考えてくれ!私今142だぞ、む、無理に言って150あるかないかとか言ってるけどさ!
180の大男の歩幅についてけるか!
「ったく、お姫様抱っこするしか…」
「ワタシガンバッテハシルヨ!」
「そ、そうか…?」
お姫様抱っことか何それ怖すぎる、やめてくれ
なんやかんやで保健室前
「はっ、はぁ、はぁ…身長差舐めてた、っは」
「だ、大丈夫か?」
「エエ、マア」
やっぱり入りたくないなあ…体お縮こませる
「失礼す…」
「う、わぁ」
これは、ないわ
そう思う、誰だってバラ色の風景見たらドン引きするよね?