簡素監禁
「結構難しい問題だね、シビアすぎるよ」
「通っても痛い目見るだけだろうしね~」
確かに、と相槌を打って視線をまた桜城さんたちに移す
「どうしよっか?」
「とりあえず様子見だよ~、遅れても何とかなるでしょ~あのお姉さま方も時間はみてるだろうし~」
「そ、そうかな…?」
小町に言われたとおりにこのまま様子を見ることにする。それで悪化した場合はそれはそれで何とかなるだろう
「親衛隊だからってね、そういうの良くないと思うんだよっ!?」
「はぁ?何なの貴方…こちらにもルールっていうものがあって小鳥遊君が忙しそうなときはお話を控えるようにってなっているの」
「まあまあ、お二人とも…」
桜城さんが親衛隊に向かった言い返す、親衛隊のお姉さま方はそれが気に入らなかったみたいでにらみを利かせている。
う~む、小鳥遊先輩もがんばれ!
「そうですよね、小鳥遊先輩っ、先輩も困ってますよね?」
「え、ええと…」
「小鳥遊君、どうなの?」
小鳥遊先輩がうろたえている、そりゃうろたえるわ
その瞬間、桜城さんが深くため息をついたように見えた、そして何かを呟く
桜城さんが言葉を呟いた瞬間、頭の奥がやわらかい何かでかき回されたような感覚を覚える
「…えぇ、そうです、親衛隊なんていりません、私には胡桃がいればそれでいい」
「先輩っ、ありがとうございます、胡桃嬉しすぎますっ!」
「な、何言ってるの、小鳥遊君、どうしちゃったの…?」
「そ、そうよっ、どうしちゃったのよ!」
「目を覚まして!」
「目など覚めています、前々から鬱陶しかったのですよ、貴方たちは…いつもべたべたべたべたと、こちらが忙しいときは話しかけるな、と言わなければ引き下がらない始末ですしね」
「そんな、ウソでしょ…?小鳥遊君、なん、で」
「さあ、胡桃図書室に行きましょうね…フフ貴方の髪の毛は本当に美しい」
「ありがとうございますっ、小鳥遊先輩っ、胡桃に似合うシュシュ買ってくださいね?」
嘘だろ…お姉さま方のセリフはもっともだと思う、鬱陶しいって面と向かって言えるか?普通
言えないのに、小鳥遊先輩はさも簡単に言って見せた、前と同じだ
そしてシュシュくらい自分で買えよ
「…通れるようになったよ、やよ行こう?」
「う、うん…なんだったんだろうね、いまの…小町?」
小町が何事もなかったかのように歩き出す、会話が続かない小町をあれを見て少しは動揺してるのかな?
「さ、さっきの…どうなってたのかな?おーい、小町さん?」
「さっきの…ああ、あれ?どうでもいいや、人の事なんて」
小町は人が変わったかのように、まるで別の人が話しているかのように言い捨てた
「こ、小町?機嫌悪いの?なんか昔から時々こうなるよね…」
「…ごめん、先戻るしばらく頭冷やすね」
小町は颯爽といなくなってしまう、昔から小町は怒ると怖い
小町と別れ、1人で廊下を歩いていると理科室の扉があいていることに気が付く
「誰かいるのかな…」
そっと、ドアの隙間からうかがうと1人の男子生徒が理科室で実験をしていた。
「~~~は、~~~~だか~~~~~」
何を言っているのかは聞こえないが実験の邪魔をしちゃ悪い、と立ち去ろうとした瞬間
ボンッ!
破裂音とガラスが割れる音がした、唖然としながら理科室に戻ると男子生徒がしりもちをついて手を抑えていた
「だ、大丈夫ですか!?」
「いってて…」
手からはどくどくと血が流れている、これは保健室に連れて行った方がいいだろう
ばい菌入ったらヤバいしね
「保健室に行きましょう!とにかく消毒して…傷口になにか当てて」
そういって立たせようとするがいっこうに立とうとしない
「いや、いいんだ、気にしないでくれ」
「気にしますけど」
むしろこの状況でほっておけ、とでもいうつもりかこいつは、私は別にそこまで非人道的ではないはずだ
「行きますよ、何か言いたいことがあるなら後でちゃんと聞いてあげますからほらほら、歩いて」
「いや、でもだな…その」
半ば引きずるようにして男子生徒を1階にある保健室まで連れて行こうとして固まった…人は良く確認するべき生き物だと思う
「あ、の」
「な、なんだよ」
「失礼ですが、お名前は…?」
「さ、3年の真谷虎太郎だが…」
「…」
そこで私は完全に絶句した、攻略対象の1人ですよこいつしかも先輩だし!なんか桜城さんとラブラブになった後の彼に何かされるのも嫌だし謝っておこう
「先輩、でしたか失礼しました、ほんとすみません…だから仕返しとかしないでください怖いんで」
「は?何を言ってるんだ?まあいや、いいよ、お前名前は?」
「…さ、早く入ってけがの手当てでもしようじゃありませんかせんせーい!患者です」
「おい、流すな」
名前を教えたら面倒だから、ぐいぐいと先輩を保健室の中に入れようとする。
先輩、イケメンだからな短髪で黒髪でメガネで…むむ、こいつもメガネか多すぎだろ、あと細いな折れろ
「お、元気な子が入ってきたと思ったらこたろん!?いつの間にそんな可愛らしい声になったんや…」
「こたろんと呼ぶな!しかも俺じゃない!俺の後ろにいる奴だ」
「あ、そうなん?びっくりしたわー後ろにいる子ちっさ過ぎて見えんだわ」
「こたろんと呼ぶなと言ってるだろう、絞めるぞ」
「ちぇ、ケチやなー…ってどこ絞める気なん!?」
うわあ、また攻略対象の一人、竜崎千尋が出てきたよ、飛んだハイペースだね…そしてちっこいと言ったことは忘れない、絶対にだ
「ほんま物騒やなー、んで、後ろに隠れとる子出てきー?名前と学年は?」
「…名無しの1年です」
ごめんね、先輩嘘ついちゃって、学年がわかるリボンはクラスにおいてあるからばれないよね?名前はほら、面倒なことになるとあれだしね…?
「名無しかーそかそか」
ぽんぽんと私の頭をなでる、なんかすごく、父性が感じられますね…先輩だからかな
「先輩、えっと手当して差し上げたらどうですか、見てて痛々しいですしね…」
「ああ、そうだったな、俺は大したことないと思ったんだがこいつが引っ張ってくるから仕方なく、な」
「え、こたろんそれはアカンわ、ちゃんと手当せな…」
先輩の目が鋭くなる、小町か!どことなく似てる…飄々としたところといいいきなり眼光が鋭くなるところといい…
「ああ、実験に失敗してなガラスの破片に当たっただけだが…そんなに傷も深くはない」
「へ~、失敗ね…こたろんも失敗するんやな、人間ぽくて俺安心したわ」
「あたりまえだ…っておい!なんだまるで俺が人間じゃないみたいだろうが!」
「…先輩方、手当は?」
あ、と二人とも気が付いたように同時にこちらを向く、そして竜崎先輩はあわてて椅子をさしだす
「ま、ここに座ってちょーっと待っといてなー今消毒液棚から出してくるからなー」
「分かったよ、お前が真面目に働くなんて意外だが…」「それどういう意味ー!?」
真谷先輩に半ばかぶせるようにして竜崎先輩は言う、ああ、竜崎先輩いつも真面目に働いていないんだね…?真谷先輩の言葉からそれが痛いくらいにひしひしと伝わってくるよ
「竜崎先輩、そういえば保健室の先生はどちらに?先生が不在なんて珍しくもないですけど…」
「んー?なんや野暮用やって言っとったかなー、だから仮にも保健委員である俺が来たっていうワケなんや」
・ ・ ・ 。と室内に沈黙が訪れる、しばらく棚をガチャガチャいわせて消毒液を持ってきた竜崎先輩はてきぱきと真谷先輩の傷を手当し始める
そこで包帯を巻き終わった後ぴたりと手を止めこちらを振り返る
あまり見ないでほしいかな…教室でもそうだったけど
「…そういえばまだ自己紹介しとらんだな、そんな俺の名前をなーんで君が知っとるんかなあ?」
「そ、それはですねー…真谷先輩が言ってたじゃありませんか!やだなー…!!」
「そんなこと言ったか?それに俺は竜崎の話題は一度も出していないはずなんだが…?」
やってしまったみたいですよ、どうやら
これは非常にまずいことになったんではないだろうか…うん、とても厄介だぁ!!
「ちょっと名無しの2年ちゃん…俺等に話を聞かせてもらえるかなー、そしたら俺めっさ嬉しくて君のこと抱きしめたるわ」
「いやいやいやいや!!い、いい、いいですいいです!そんな!抱きしめるだなんてとんでもないっ…!」
本当に遠慮したいんだけども!やめてくれってば!そういうのは桜城さんにやってくれよ!切実にねっ!
ガチャッ
音がした方に目を向けると真谷先輩が鍵を閉めてました。うわー、逃げられない…真谷先輩行動速ーい!すごーい!…はぁ
「く・わ・し・く、聞かせてくれるよな?」
「は、はい…」
私には力なく答えることしかできませんでした、何故って竜崎先輩と真谷先輩の鋭い眼光に捕らえられていたからです…
真谷虎太郎
・科学部所属の3年の先輩、竜崎先輩と仲がいい(竜崎先輩曰く)
・黒髪の短髪で、赤縁メガネをかけている、言葉使いが荒いところもある(竜崎限定)モテる
・168cm、細い、華奢
竜崎千尋
・保健委員の3年の先輩、いつも楽しげに笑っている真谷先輩と仲がとてもいい(自称)
・黒髪で長い、さらっさら肩くらいまである、変態、真谷先輩と違う意味でモテる
・175くらい、細いけど、華奢ではない