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GAMEOver

「はあっ……はぁ、」


全力疾走なんていつぶりだろうか、かれこれ数か月はぐうたらしてた気が……いや、そんなことはない、はず?

てかそんなことは今更どうでいいです、マジで


「信じられん……まさか、まさか」


桜城さんがこんなところにいるなんて思ってませんものーー!!!

はぁ…つい最近の自分の記憶力のなさには驚かされるばかりだよ…、知ってました、知ってましたとも!?桜城さんがここで今日、イベント起こすことなんて知ってた!だから前回は断ったはずなのに……なのにっ!


・・・。

自己嫌悪に陥っていても仕方ないから状況整理だ、そうだ、思い出せ、つい数分前のことを…、そしてその経緯を


遡りますよ、ぐいっ、と



「はぁ……屈辱か」

「似合ってるから大丈夫だよ」

「嬉しくないです」


下に降りたら何故か春ちゃんがくつろいでたよ、これでもかってほどにね?兄貴は本読んでたけど無視しよう、この際

理由ワケもないいじめが兄貴を襲ってるような気がする…気のせいか

とにもかくにも、ここでのんびりしている暇もないからさっさと兄貴の車に乗ることにする。


「よーし、じゃあ蛙…いや、春は助手席な」

「……はい」


なにやら兄貴の指示に不満げにしている春ちゃんがいるけど触れたくないので触れません、危険に首を突っ込みません、地雷原でタップダンスしません。したら死にます。


「ねー豊、今から行くのって何水族館?」

「城ヶ崎浜水族館」

「ん?なんか聞き覚えがあるような……」

「そりゃあ地元の水族館だもん」

「そっか」


城ヶ崎浜っていう水族館聞いたのそれだけじゃないような気がするんだけど……やっぱ気のせい?最近気のせい多いな、私。

まあ、せっかくの休日ぐらいゆっくりしたいもんね。言ってなかったけど今ゴールデンウィークなんだよね。


「ねぇ、お姉ちゃん暇だからダウトしよ」

「あぁ、いいけど……ダ、ダウト!?2人で!?しかも車内だよ!?」


それ延々と終わらないような気がします、豊さん。車内とか絶対トランプ散らばるよね?バラ―ッてなるよね?わかりきってるじゃん?


「トランプないじゃん……」

「あ、ほんとだ」

「えっ」


トランプないのにダウトしようとか言ってたのか、我が妹ながらなんか、こう、ね?


「ほら、お前等着くから」

「え、はや」


早々に兄貴様から宣告される。10分もたってないような気がします。

あれか、超常現象の一種か?それとも乙女ゲームでよくあるカット?それにため息をつきながら外に出ればまばゆいほどの日差しが差して思わず顔をしかめる。


「まぶしい」

「そうだね、春ちゃん暗いところの方が好きだもんね」


春ちゃんと豊がなにやら話しているのを微笑ましげに見ていれば、兄貴は兄貴でさっさと受付?に行ってしまう。


「あ、ちょっと…豊、春ちゃん行くよ!」

「はーい」

「ん」


ちょこちょことついてくる春ちゃんと豊の会話をぼんやりと聞きながら歩いていたら目の前のことがおろそかになってしまいドン、と誰かにぶつかる感触

なんだ兄貴かよ、進んでくれー。



「ちょっと、兄貴どう……んー?」



思わずなんか変なことを言ってしまった気がするけれども!?

なにあの人だかり、凄いっ!男性が円のようにならび彼女らしき女性がその輪から外れて蔑むような眼をしながら男性たちを見てるっ!爽快っ!

いやいや、そんなこと言ってる場合じゃないよ、なんだあれ、マジで、あっなんか嫌な予感がしてきたような…



「うわっ、凄い人だかりだねぇ…有名人でも来てるのかなぁ?」

「いや、それにしては女性陣の反応が薄いように見えるから違うんじゃないか…、っておいおい、かんべんしてくれようちの学校の制服のやつまでいるじゃねえか!」


はい、やっぱり私の予想は当たってたーっ!嫌な予感すると思ったら桜城さんだよ!後悔するわ、なんで来たんだ、なんで忘れてたんだ!


「ああっ、先生に蛙君!」

「うおわっ!?」


あっ、鳩尾に頭突きがクリーンヒットだ……可哀想に、でもかわいい女の子に抱き着かれたなら±0だよね!


「先生に蛙君、胡桃のために来てくれてありがとう」

「んん!?いや、俺は桜城のためじゃなくてこいつらとだなあ」

「?」


わかってない人と理解できている人の間が大きいことに驚きを隠せないわ、おい春ちゃん、理解して!?理解しよう!?


「って、あれれっ、弥生ちゃんに……だあれ?」

「ああ、えっと、私の妹の高野豊」

「……ふぅん、妹さん」


何企んでるのこの女、ニコニコ笑うその笑顔、可愛いけど騙されません。その笑顔の裏にだまされません。


「でもちょうどいいやあ、先生、蛙君、胡桃と行こうよぉ」

「無理だ」

「やだ」


この男どもは…!ほらほら、桜城さんが上目使いにブリっ子ポーズというお約束をやってくれているんだから遠慮せずに言ってきなよ、もう入場したから私は豊とまわってくるし


「な、なんでっ?なんで胡桃と一緒に行ってくれないの?」

「なんでってお前、おれはアイツらときてるから当たり前だろ」

「ん」


地雷踏んでない?ねえそれ地雷踏んでない?タップダンスしてない?

桜城さんの怒りのボルテージが溜まっていってない?それ、結果的にこっちに被害こない?


「いつも、だよね」

「え?」


いつも?何のことを言ってるのかな、この子は


「いつも、邪魔するよね」

「お、おい桜城?」


もしかして、私のことを言ってるのかな、桜城さんは


「どうして、どうしてどうしてどうしてっ!邪魔するの!」


その瞬間、人がいなくなる、隣にいた筈の豊も、桜城さんにガッツリ腕をつかまれていた兄貴も、こちらを見て怪訝そうに眉を寄せていた春ちゃんも、輪を作っていた男どもも、みんな、いなくなる、いるのは私と桜城さんだけ


「な、え?みんな、どこに、どうして桜城さんだけ」

「ほんっと、邪魔な女だよねぇ」


おいおい、嘘でしょ?裏の顔が酷いとは思っていたけど、まさか、こんなことまでしでかすとは、そして怒りの沸点低すぎない?気のせいなの?まだまだ序盤なのに、これからいくらでも取り返されるはずなのに、どうしておこなの?


「はは、わかってないんだ?そんな馬鹿なあんたには……消えてもらおうか?」

「え?」


本能的に悟る、逃げなきゃ、にげなきゃ、じゃないと私は


そこで冒頭に戻るわけです、私は全く悪くない!はず

完全に濡れ衣です。私は走りながらドアを壊す勢いで館内に入っていく、あたりを見回してまた走る、水槽の中にはなにもいない、水があるだけ、生き物はたぶん、私と桜城さん以外、いないんだとおもう。

それにきっと逃げられない、この無人の水族館から出られたところで、誰かがいる保証はない。


「ふふっ、どこぉ?出ておいでよ?ねえ、弥生ちゃぁん」


誰が出ていくか!この状況でのこのこ出ていくバカはいません!

ああ、それにしても、なんだこの恐怖は。


「こういうの、が!、許され、るの はっ、ホラー、でしょ!」


乙女ゲームの中でも特殊な奴しかないし、その場合このポジションは桜城さんですよね?なーんでこんなホラーゲームでありきな感じになってんの!

入ってきたのと同じように、ドアを壊す勢いで出ていく、太陽の光のまぶしさに、足が止まりそうになって、いけない、と思いつつ走り出そうとすると、上から恐ろしい声が聞こえてきた。


「みぃーつけた、鬼ごっこは終わり?」

「……いやになっちゃう」

「?なにかいった…ってどうでもいいか」


その時の桜城さんの動きは人の域を脱していた。2階にいた筈なのに、いっきに私の目の前までやってくる。


「……ぁ、」

「ほぉんと、手間かけさせてさ、アンタなんなわけ?小鶴が厄介かと思ったら次はアンタ……で、知ってるの?」


がくがくと足が震える、2歩、3歩と後ろへ後ずさる。


「し、ってる?な、にを」

「ああ、知らないの、可哀想に」

「かわい、そう?」


何を言ってるんだろうか、何故、私が可哀想なのだろうか、確かに、可哀想かもしれないけれど、でも死ぬよりかはマシだ


「ふふ、安心して、次はきっと楽しいスクールライフを送れるよ?私を中心にして回る、スクールライフをね」

「な、にを」


何故桜城さんが中心であること前提なんだよ


「あーあ、今回は失敗か……まあいいよ、エンドかいしゅーってことで、また明日、学校で、初めから!逢いましょうね、弥生ちゃん」


ドン、と肩を押されて後ろに倒れそうになる、後ろをちらり、とみると真っ黒な闇が広がっていた。


「ぁ」

「ふふっ」


今度こそ、と言わんばかりの押し方で闇に落ちて行った私が見たものはGAMEOverの血文字と、動物の形を模した小さなぬいぐるみに軽く口づけている桜城さんが手を振っている所だった。

第一章 終わり


第二章 始まり

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