(8)金髪天使の噂
それは昼休みのこと。
「ごめんなさい!」
夏祭は、二日続けて迷惑を掛けてしまった親友に深々と頭を下げて謝罪する。
「いやー、それはさすがに芸が無さすぎだよ、なつりー」
「はい?」
「別に頭を下げられてもお腹は膨れないし? 第一、別に謝られなくても私は怒ってないよん」
「え、でも……」
「いいから飯食おーぜー。ことひよちゃん、お腹が空いたよーぶーぶー!」
「……ありがと」
「おっと、その言葉にちょっぴりお腹が膨れたぜい」
「ちょっぴりなんだ」
「いやー、さすがに目の前に食欲をそそられるものを出されていると、愛情だけではお腹は膨れないのよ?」
「催促してもだーめ。これは私の為のお弁当なんだから!」
二人は今、食堂の外にあるテラス席でそれぞれのお弁当を広げて同席していた。
いつものように自分で作ったお弁当を用意して日和だが、今日は夏祭も弁当の持参している。
「メニューはこれと言って変わったものは無いけど、どれも見た目は美味しそうですねえ」
「見た目だけじゃないわよ! ちゃんと味も一級品なんだから!」
「おほほ~、最高の隠し味が使われていますからね」
「最高の隠し味?」
なんだろう、私もその隠し味を覚えたら料理ができるようになるのかな?
なんてことを思いながら、夏祭は屈託のない笑顔でおかずを口に運ぶ。
「(やっぱり料理は愛情よね~♪)」
「~~~♪ おいしいぃ~♪」
「(しっかし、久しぶりにこんないい顔したなつりーを見させてもらったなぁ。私もちょーと愛しのはるにゃんに会いたくなっちった♪)」
その後も、一日中ずっと笑顔でいた夏祭。
この日、学園である一つの噂が流れ始めた。
金曜日、昼休みのテラス席には金髪の天使が降臨するらしい。




