反吐とノイズと男と女
ダメ人間の細切れエピソードは私のライフワークともいえます。
とにかく、イメージだけで書ききりました。
また反吐だ。今日ってか、ここんとこずっと反吐だ。
食道がヒリヒリ、鼻腔に酸っぱい匂いがずっと蟠っていて、ふんふん鼻を鳴らせば固体液体入り交じったカスが噴き出してくるし、ググググガッと吸い込めば固体液体入り交じったカスが喉に下りてくる。酸味の。
ライヴやって打ち上げて帰宅。
この全く進歩的、あるいは革新的というコトバから最もかけ離れているのではないか、この国の中で? と思われて仕方がないド田舎の閑村。あるのは閉鎖。あるのは閉塞。
どうせ聴くヤツなんかいない、閉塞してんだから。それなのに農家が税金対策で開いた生演奏可能な一杯飲み屋の、舞台すらなくて、だから冷たいコンクリの床に這い蹲るようにして、反吐を吐き散らしつつ、吐き散らされる反吐のことさえ気にかけない閉塞民を前にドラム缶をひっぱたき、ストリングスの欠損したエレキギターを踏みつけてグリグリやって音を出し、、額にマイクを押し付けてゴチゴチぶつけて流血、顔面を鮮血に染め、ひたすらに反吐声で喚き散らして、挙げ句の果てにチケットが売れなかったからと言って閉鎖農民にショバ代2万円をふんだくられ、まぁいつもの事だと思いながらもメンバー全員荒れに荒れて閉塞酒場で合成アルコールを燗もつけずにガバ飲み。ぐらぐら帰宅した途端に、部屋に充満する糞尿の匂い。
だからまた反吐。
女。糞尿垂れ流して失神痙攣。股間で真っ黒いヴァイブレーターが淫口を支点にぐねんぐねんと蠢いて。後ろ手に手錠。足を閉じられないようにデッキブラシの柄に開脚したまま固定されて。猿轡して。ま、俺がやったんだけどね。20時間くらい前から放置しておいたんだけどね。
床が臭くて、汚物でいっぱい。
指先で触れたら生暖かくて、嗅いでみたら、また反吐。打ち上げで喰った臓物料理がもったいないじゃねぇかって、女の腹を蹴飛ばすと、ぐぐぅと唸って目を覚ましそうになった。俺は女の髪を撫でて子守歌を唄う。
立ち上がってゆらゆらと揺れながら、痙攣する女の性器を眺めている。糞まみれ。バイヴレーター。
脳がズキンと脈打って、目の前が真っ赤になって、ヴァイブレーターを引き抜いた俺は、女に覆い被さって輝ける糞尿の海原で合体。滴。
音がする。まだ違う。今日の喚き声ではまだ遠い。もっともっと反吐を吐かなければならん。女の顔を殴るとボキッ! 或いはドガッ! という音がする。打楽器のように。
俺の反吐が女の顔に。
(了)