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ep.4 パーティー内の喧嘩はスライムも食わない④

「はぁ〜終わった終わった!やっぱり体力つかうわね〜〜」


 腕をぐっと伸ばして姿勢を崩すメリア。普段している仕事とは別の、こう、筋肉というか頭の部分というか……を使うので、放送は疲れる。


「今日もおつかれさん」


「オルフェもね〜なんだか慣れちゃった自分が怖いわ〜」


「ほんとにな。最初はあたふたして何が何だかわからなかったのに」


 王都ギルドの奥の奥、外からは見えない部屋から出る。

 いつもは騒がしいこの建物も、この時間になれば静かなものだ。


 窓の外から涼しい風に乗って聞こえる笑い声は、王都の穏やかさの象徴だろう。


 今日の釣果で酒を飲んで肉を食らう。

 冒険者たちは毎日を全力で生きている。そう、さっきお便りをくれた魔法使いさんも。


「冒険者……明日も無事に」


 ぽつりと呟かれたメリアの言葉は、この王都冒険者ギルドの総意だ。

 今日窓口で意気揚々とクエストを受けた人間が、明日にはいないかもしれない。


 そんな危険と隣り合わせの彼らだからこそ、その毎日がキラキラと輝いているのだろう。


「ま、俺たちは俺たちのできることをするしかないからな」


「それもそうね。あーあ、お腹空いた!どこかに私を労わって美味しいご飯とお酒をご馳走してくれる優しい同期はいないかな〜」


 うだうだと言いながらメリアは隣に並ぶ。長い廊下を二人で歩くのももう何度目だ。


 次の放送では何を話そうまた遠出した時に馬車の中ででも考えるか。


「え、無視?」


「あーすまんすまん飯だっけ?」


「そう!頑張った私にはご褒美が必要だと思うの」


 ぐぅ、と自分のお腹が鳴る。

 そりゃ昼ご飯を食べてからここまで休憩しだもんな。


「それなら俺にもだな」


「あんた稼いでるでしょ」


 また異なことを。同じギルドに勤めてるだろうが。


「お前と給料は一緒だって」


 わーわーと奢る奢らない論争をしながらギルマスや副ギルマスの部屋を通りかかると、どうやらまだ電気がついているようだ。


「……やばくない?」


 戦々恐々といった面持ちで彼女はこちらに目線を飛ばす。


「やばい。あれにはなりたくない」


 誰が好き好んでギルマスなんてやるんだ。絶対ストレスがとんでもないことになるだろ。


「私このままずっと受付嬢がいいな〜冒険者ともお話できるし!あ、でも結婚はしたいかも」


「出会いなら無限にあるだろ、窓口なんだから。俺なんか基本他のギルドとか宮廷だぞ」


「そっちの方が夢あるじゃない。収入も期待できるし。あーあ、私もどこかの優しい同年代くらいの私のことをよく知ってるまぁまぁ社会的地位が同じくらいの声がいい男の人と恋人になれないかな〜〜」


 なんだその妙に具体的な理想像は。

 社会的地位ってまた難儀な条件だな。仮にも同期で相棒だ、探してやりたい気もするが……。


 そんなやつギルド内にはいないし、幼馴染とかじゃないと無理じゃないか?

 特に「私のことをよく知ってる」って部分とか。


「すまん、俺の知り合いにはいなさそうだ」


 努めて申し訳なさそうな声を出す。

 そういえばこいつが寿退社でもしたら、この放送はどうするんだろうか。


「バカ」


 肩をポコンと殴られる。

 気のせいじゃなければ、彼女の声には様々な色が塗られていて。


「まぁまぁ痛いんだけど」


 咄嗟に身体強化を発動させた自分に拍手を送りたい。何が嬉しくて深夜に魔法を使うんだよ。


「これくらいで済んだことに感謝なさい。次はお腹に穴が空くわよ」


 魔法使ってこの痛さということは。


「怖すぎる……やっぱり身体強化使ってるだろ」


 同僚に身体強化して殴ってくる人間、端的に言って怖すぎる。

 我々ギルド職員は冒険者でも騎士でもない。それでも自衛の技は一定身につけているのだ。

 というか就職試験の時に模擬戦とかある。


「誰が脳筋よ!」


「言ってない言ってない」


 暗に言ってるけど。

 まぁ身体もメンタルも強くないとこんな仕事やってらんないからな。


「傷ついたわ……これはとんでもなく美味しいお肉とビールがないと吹き飛ばせない傷よ」


 くそ、相方が強欲で困る。

 しかもそれで治る傷なら大したことないな。


「わかったわかった、飲みに行きゃいいんだろ」


「最初から素直に話を聞けばいいのに……あ、私着替えてくるから待ってて」


「はいはい」


 更衣室に消えていったメリアを遠く眺めて、俺はギルドの裏口から外へ出た。



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