春が嫌い
本羽香那様「一足先の春の詩歌企画」参加作品。
最後に短歌を添えています。
春が嫌いだ。
花粉症だからかって?
それもある。
組織変更があるから?
それもある。
色々面倒だよな。人事異動する意味はまぁ、分からなくも無いが、なんでわざわざ社内手続きのシステムや報告書のフォーマットまで変えるかね。。。「効率化の為」とか「経費削減の為」とか色々言うけど、コロコロ変えられたらその効果も怪しいもんだ。
電車が混むから?
それもあるな。
電車の新社会人や新入生が煩いから?
それは・・・無いな。その時期はもう過ぎた。
どっちかというと逆だね。
例えばこんなシチュエーション。
帰りの電車で、ふと近くの会話が聞こえてくる。
おそらく一人は新入社員で、もう一人は上司か先輩。
まぁ、だいたいお決まりの会話をしている。
「どうだ?仕事は慣れたか?」
と、上司らしき人物。
「いや、全然です。ご迷惑かけてばかりで・・・」
と、殊勝な顔をする新人。
「最初はそんなもんだろ。別に迷惑なんて誰も思ってないぞ」
「みんな、そう言っていただけるんで、ありがたいです!でも、それに甘えてもいられないので、一日でも早く仕事が出来るようになりたいです!」
笑顔でハキハキと話す新人。
「それは感心だな。ただ、ウチはけっこう体育会系だから、みんな言い方とか厳しくないか?」
「いえ、自分も体育会系なんで!ダメならダメとハッキリ言ってもらえた方がありがたいです!それに、厳しい方がやりがいあります!」
「ほう。いいな。そういうヤツの方が伸びるんだよな・・・」
「そうなんですか?」
大げさなリアクションを取る新人。
「そりゃそうだよ。仕事は失敗しながら覚えるもんだからな。結局打たれ強い方が伸びる。まぁ今時は、こんなこと大ぴらに言えないけどな」
「いえ、大丈夫です。自分、打たれ強いんで、ビシビシお願いします」
「そんなことしたら、オレが人事に怒られるよ。。。まぁ楽しんでやれよ」
苦笑しつつも、満足そうな上司。
「はい。今も楽しいです!」
ここぞとばかりに笑顔で言い切る新人。
やがて駅につき、上司が「オレここだから」と先に降りた。
新人は「お疲れ様でした」と礼儀正しく挨拶し、電車のドアが閉まる。
電車が発車する。
一人になった彼の表情を見てしまったオレは目を逸らす。
目を逸らしてやらねばと思う。ようやく彼の本日の勤務がここで終わったのだから。
目を逸らし、(お疲れさん)とだけ内心思う。
もう社会に出て久しいが、未だに彼らがどうすべきかの正解が分からず、教えてやれない。
「がんばれよ!」なのか、「無理するな」なのか・・・
だから春が嫌いだ。
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上司降り
笑み消える新社会人
それでいい
時々サボれ
ほどほど頑張れ
お読みいただきありがとうございます。
春といって、真っ先に思うのがこれなんです。
なんか、みんな無理してて辛そうなのを、見るのが辛い季節と・・・
いつも思うことなので、このネタ、拙作の別作品で使ったことがありまして・・・
ついでに少し宣伝ですf(^^;
「トレーナー世良の議事録」というお仕事系連作短編の「環境が変わる時」というエピソードです。
各エピソードを部分的に読んでも成立する作品なので、ご興味ありましたら、そちらも覗いていただければ嬉しいです。