99話 式神使い
南雲八雲を倒した後、咲良の方へむかう。まだ戦っているようなら加勢しなくては。と思っていたのだが、どうやらあちらも終わっていたようだ。
「無事だったみたいな咲良。安心したわ。」
「ネリネさん……。私も安心しました。怪我はしているようですが命に別状なさそうで。」
私もそうだが咲良も全身ボロボロだ。相当な死闘だったのだろう。姿が物語っている。
「そっちの、我妻凛?だったわよね。殺したの?」
「いえ、片桐くんは人殺しを良しとしませんので生きてますよ。殺す気ではやりましたけど。そちらは?」
「私も人殺しは主義じゃないの。悪い気配もしなかったしね。」
と、二人で話す。咲良からは棘が抜けとても話しやすい。いくらか信頼してもらえたみたいね。
「では片桐くんを追いかけましょう。時間をかけてしまいましたから早く行かなくては。」
「そうね。早く行きましょう。」
そう言った瞬間、後ろから車が一台やってきて私たちの隣に止まった。
「お嬢様!ご無事でしたか!」
「大塚!アナタも無事でよかったです!」
この運転手、大塚という名前だったのかと思ったのは私だけではないはず。
「ネリネさん!咲良先輩!無事でよかった!大きい怪我もないみたいで!」
後部座席に座っているひよりがそう言う。
「はい、ありがとうございます、ひよりちゃん。」
そう咲良が返事をするとひよりは驚いたようにしている。
「咲良先輩に返事してもらえると思ってなかったから嬉しい!どう言う心境の変化なのネリネさん!?」
「さぁ?私にはわからないわ。ねぇ、咲良?」
「そうですね。私にもわかりません。ねぇネリネさん!」
「めっちゃ仲良くなってる!?」
再び驚きの声を上げるひより。確かに仲良くなったかも?そこで気づいた。一つ声が足りないと。
「ねぇ、ひより。ミルはどうしたの?まさか…!?」
最悪の想像をしてしまう。まさかミルはアイツにやられたんじゃ!?
「ミルちゃんは死んでないよ!?でも大怪我しちゃって今は寝てるの。眠る前に、上位のヒールをかけてもらったから命に別状はないです。って言ってたから大丈夫だと思う……。」
「そう言うことだったの…。ミルが苦戦するほどの相手だったのね。」
「私たちも簡単に勝てる相手ではありませんでしたから。相当な手だれな集団です。片桐くんも心配ですので先を急ぎましょう。」
「御二方もお乗りください。飛ばしますよっ」
そう会話しつつ車に乗り込む。乗り込むとミルが座席の上で倒れながら眠っていた。その顔は少し血の色が足りていないような気がする。何よりも目につくのは脇腹だ。服が破けその脇腹の一部は新しい皮膚で覆ったようになっている。恐らくこの部分をやられたのだろう。どうやられたのかはわからないけれど相当な重症だ。命に別状がないのが嘘みたいだ。だが、本人がそう言ったのであれば信じるしかない。私たちはミナトを追いかけるため、車を走らせる。
ヘリコプターで連れ去られた桃花を追いかけて俺も空を移動していた。しかし中々追いつけない。追いつくどころか離されていく一方だ。
「くそっ!全然追いつけない!速さが足りない!スピードが足りない!せめてネリネくらいの速度を出さなきゃ!いったいどうしたら!」
悪態をつくがスピードが早くなるわけではない。気持ちが焦る。見えなくなったらおしまいだ。
「湊。試してみたいことがあるんだけどいいかい?」
「なんだ?こんな時に?」
頭の中にスーリアの声が響く。なんだ一体。
「私を、剣を具現化させて剣先を足元に向けてみて。」
「??わかった。」
俺は言われるまま剣を具現化させて剣先を足元に向けた。側から見れば横向きに俺の体と剣が平行になっている感じだ。
「やったぞ?これでどうするんどぅあっっ!?」
急に剣先から炎がブワッと吹き出し前へ急加速した。踏ん張っていなかったからかみるみる前へ進んでいく。
「湊!試しにとは思ったけど、やってみるものだね!凄く早いじゃないか!」
「それは助かるけど急にはやるなよ!舌噛みそうになったわ!」
さっきとは比べ物にならないスピードでヘリコプターへ向かっていく。これならすぐ追いつく!そう思っているとヘリコプターが下降していった。そこには武家屋敷と言えばいいのだろうか。かなり大きい日本家屋があった。その隣にはかなりの広さの庭がありそこにヘリコプターは着陸した。少し遅れて俺も庭へ降りた。するとヘリコプターのドアが開き、先ほどのポニーテールの女性が桃花を抱き抱えた状態で顔を出した。
「おや?もう追いついてきたのかい?八雲と凛はどうしたんだい?坊やにやられるほど柔じゃないはずなんだけどねぇ。」
そう声をかけてきた。その顔は不思議と言わんばかりだ。
「俺の仲間が戦っている!それよりも桃花を返せ!」
俺は剣を構えながらそう答える。
「返す?この娘は私達がいただいたのさ。返す義理はないね。」
「ふざけるな!桃花はお前達の所へなんて行かせない!」
「そう息巻くなって。そう言うお前はこの娘のなんなのさ。まさか友達ってだけでここまで来たりしまい?」
俺と桃花の関係?そんなものは決まっている。桃花は俺の、
「桃花は俺の大切な後輩だ。後輩を助けるのは先輩として当然のことだ!」
「はぁ…。つまらない答えだねぇ。そこは俺の愛する人とでも言えないのかねぇ。この娘も可哀想にね。」
桃花が可哀想?何を言ってるんだ?
「まぁ、この娘を返すわけには行かないさ。この娘にはものすごい価値がある。それがなんだかわかるかい?いや、わからないだろうねぇ、先輩?」
桃花の価値?なんのことだ?
「わからないなら教えてあげるよ。この子には二つの力がある。一つはこの小さい体に貯蔵された魔力量。この娘一人だけで一般人一億人分の魔力がある。まだ使いこなせていないようだけどそれだけでも脅威だ。普通に野放しにしていい奴じゃない。」
一億人分!?日本の人口に近いじゃないか。それは桃花にとって危険ではないのだろうか。
「それにもう一つ。この娘は異次元同位体と繋がる能力を持っている。パラレルワールドにいる自分と違った能力の自分と繋がることができる。それにより、パラレルワールドの自分と同じ能力を使うことができる。それがこの娘の最大の能力だよ。」
つまりいろんな能力が使えるということか。
「そのちからを利用できれば最強の兵器が誕生する。ほぼ無限と言っていい魔力に様々な能力。これで私は世界を獲る!」
「言っていることがめちゃくちゃだ!そんなことでにるはずがない!」
「それができるのさ!私の頭脳と魔力の操作能力を持ってすればね!」
狂っているとしか思えない。そんなことが実際にかのうなのか?
「お前が言ってることが本当でもそれは叶わない。俺がここでお前を止めるからだ!」
「確かに私は戦士タイプじゃないから直接戦うのは些か不利だ。となると私がすること、わかるかい?」
そう言うと、懐から札を取り出し目の前に突き出した。
「私の名前は山背弥勒。代々伝えられてきた陰陽師の家系さ!式神召喚、赤鬼!」
そう言うと、札から体調2.5メートルほどだろうか。赤い色の筋肉隆々の男が現れた。人間というには体の作りがおかしい。筋肉隆々だが、二次元に出てくる化け物みたいに両腕の筋肉がぼこっとでている。頭には一本の角が生えているその右手にはトゲトゲした黒い棍棒をもっている。想像していた赤鬼よりも顔は怖い。
「怖いのは見た目だけじゃないよ!その強さが一番恐ろしいわ。やっておしまい!赤鬼!」
「ぶぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
咆哮を上げてこちらへ突っ込んでくる赤鬼。そのスピードはネリネほどではないにしろ素早い。棍棒の一撃を剣で受ける。
「くっ!!??」
なんて重い一撃だ!手から剣が離れそうだっ!
「この戦いが終わるまで見ててもいいんだけどねぇ。こっちもやることがあるんで失礼するよ。赤鬼!終わったら戻ってきな!」
そう言うと山背は俺達に背を向け歩き出した。後ろからもう一人出てきて蔵の方へ走って行った。ヘリの運転手だろうか。そっちは置いといて、
「待て!桃花を返せ!」
そう声を上げたところでどうにもならない。山背のほうへ駆け出したいが、目の前に赤鬼がいる。まずは赤鬼から倒すべきだ!




