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94話 クロード②

「ミルちゃん!!」

 ミルちゃんが細長い氷で背後から刺された。赤い血がミルちゃんのお腹から吹き出す。思わず口を押さえる。吐きはしなかったがとてもショッキングな光景だ。

「この状況打破できるとは思いませんが私が突っ込んでミルトニア様を救出します。少々お待ちを。」

 運転手さんは額に汗をかきつつそう言った。運転手さんは魔法は使えないそうなので、確かにこの状況はキツそうだ。少なからず魔法が使える私なら……。怖いけど、とても怖いけどミルちゃんを助けられるなら、わたしは…!

「運転手さん、私が行きます!回復魔法でミルちゃんを回復させます!そして2人であの人を!」

「貴方は戦闘訓練は積んでいないのでしょう?これは正真正銘の殺し合いです。お嬢様のお友達にそのようなことをさせるわけには!」

「いいえ、ここで頑張らないでいつ頑張るんだって話です!ミルちゃんは私の大切なお友達。お友達を助ける為なら私頑張りたいんです!」

「……わかりました。では2人でいきましょう。それならいいですね?」

「はい!いきます!」

 私と運転手さんは気合を入れて戦場へと足を進めた。


「術式展開…ストームっ!」

「ぐぬっ!?」

 私はいくつか魔法をストックしており、ストックした魔法はほとんどノータイムかつ魔力無しで魔法が発動できます。ストームの魔法でクロードを吹き飛ばすと、

「慈悲深き…女神の祝福…、もたらすは安らぎなり。ペインレスヒール…。」

 私は息も絶え絶えになりながら魔法を完成させます。それは痛みを消す魔法。まずはこの氷と傷をどうにかしなければなりません。貫かれたままではなんにもできませんからね。私は手に魔力を込めて、体の前に出ている氷を叩き切りました。その後、前進し氷から体を抜きます。ギチギチ嫌な音がしますが、気にしてはいられません。痛覚なくて良かったです。痛みはないですが血を失いすぎました。頭が少しぼーっとします。その時吹き飛ばされたクロードが立ち上がり私を睨みつけます。結構遠くまで吹き飛ばしたつもりなんですけどね。

「死にかけの分際でやってくれましたネ!そろそろトドメデース!」

 クロードは腕を振り魔法を展開します。クロードの背後に白い光弾が大量に展開され、それが一斉に私の方へ飛んできました。

「堅固たる守護の盾……障害を阻まん……ロッカシールド……」

 シールドを展開させて光弾を防ぎます。早くヒールをかけないと命を失いかねません。それに私は剣士タイプではないので攻撃への勘が鋭いわけではありません。これがネリネちゃんや咲良ちゃんなら光弾の隙間を縫うように進んで敵のいる位置までいけるんでしょうね。ミナト君はどうでしょう。ミナト君は炎を纏って少しのダメージを受けながら敵に突っ込んでいきそうです。ちょっと脳筋すぎますかね。なら私は?私ならどうするべきでしょう。光弾を避けながら進む技術もなければ、ダメージを気にせず進む体力もありません。この状況の中、私ミルトニアが取るべき戦法は…。

「途方なき旅人、願わくば惑わされんことを。フレアミラージュ。」

 私は魔法を発動させました。幻影を生み出す魔法。私自身は後方のコンテナの上に移動しました。幻影の方はというと、最初はシールドの裏にいましたがシールドが壊れ、その後光弾を避けていました。ですが、すぐに当たってしまいました。次々に当たる光弾。それに伴いクロードのテンションもどんどん上がっていきます。

「はははは!ヤッタ!ヤリマシータ!ザマーミロデース。ハッーハッハッハッハ!」

 それが偽物とも知らずに…少し哀れですね。私は後方のコンテナの上で魔力を練り始めます。杖を構えそして小声で詠唱を始めます。

「宵闇を切り裂き者、光明を照らす者、我全てを統括する者なり、ディバインストライカー!」


 ミルトニアの杖の先端に光が集う。その光は巨大な球体となって止まっている。一言発射と命ずれば敵目掛けて光は飛んでいくであろう。頭上で光り輝く物体に気づいたクロードは、その顔を恐怖に歪める。自分とは異なる技法の魔法であるが、その魔力量の凄まじさに恐怖している。

「そんな…ありえない…。あんな存在がこの世にいるなーんて!?」

 己が思っていたよりもはるかに実力差があった。しかし自分も今までいくつもの窮地を乗り越えてきた。今回も乗り越えて見せる。

「発射。」

 ミルトニアが小さく呟くと光の球体から光のビームが発射され、クロードへ迫っていく。

「舐めるなよ!」

 その光をなんとかしようとクロードは透明の壁を十枚、前に展開した。今まで出したことのない大魔法に脳が焼ける感じがした。しかし気にしてもいられない。それほどのことをしなきゃ防げない魔法だ。ミルトニアの光とクロードの壁がぶつかり合う。否、ミルトニアの光がクロードの壁を飲み込んでいく。一枚、二枚、三枚、四枚……そこでクロードの壁が消えなくなった。残り六枚。クロードの魔術がミルトニアの魔法を上回ったのだ。

「クックック!これだからお馬鹿さんとの相手はやめられませーん。自分の方が強いと思っている相手を倒す快感はたまりませーんねー!」

 ミルトニアに残された魔力は僅か。このままでは……。

「はっ!」

 クロードの後ろから運転手が現れ、首を絞める体勢をとった。

「なにぃ!?貴様隅っこで怯えていたのではなかったのでーすか!?」

「私もお嬢様に仕える者。そう怯えてもいられません。このまま眠ってもらいますよ!」

「うぐぐ!?」

 首を絞められ意識が遠のく中ミルトニアの近くにもう一人の小娘が立っているのに気づいた。これはまずい!

「ミルちゃん受け取って、私の魔法!穢れなき癒しの力、我らに加護を!マテリアルヒール!」

 ひよりの魔法を受け取りミルトニアの魔法が太くなる。そしてクロードの盾を呑み込みだした。

「どけ!」

 手を振るい後ろの運転手を吹き飛ばしたクロードは目の前の盾に力を込める。が、しかしそれも意味を成さない。どんどんと飲み込まれていく。

「私とひよりちゃんの魔法です!どんなものに負けませんよ!」

そして…。十枚目の壁も飲み込まれクロード本人に迫っていく。

「ありえないありえないありえない!私はこんーなところで終わるような存在ではありませーん!もっと殺し、犯し、破壊の限りを尽くすのでーす!ぎゎあわわあああああああ!!??」

 その言葉を残してクロードは光に飲み込まれていった。


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