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80話 桃花の思い出

 話も終わり夕食を食べて俺は部屋に戻った。夕食を食べている間も桃花は口数が少なくうつむいていた。先ほどの件が相当こたえているようだ。今日は少し疲れた。いつもなら少し勉強をするのだが、今日はそういう気分でもない。早く寝てしまおう。そう思いベッドの上に寝そべった。しかし考えがぐるぐるして眠れない。桃花を襲った襲撃犯の事。いったい奴らは何者なんだ。なんの目的で桃花を狙う。少し家が裕福だからって桃花は普通の女の子だ。裕福ってだけなら他にも狙う相手はいると思う。桃花だから狙われたって理由がわからない。もしかしたらそんなに理由はないのかもしれない。しかしあるかもしれない。思考がまとまらない。現段階では結果を出すほどの情報が少なすぎる。明日敵アジトを襲撃して情報は得られるだろうか。そう色々な事を考えていた。その時、

 コンコンコン。

「先輩、起きてますか?」

 桃花の声が聞こえてきた。こんな時間になんだろう。

「起きてるよ桃花。いいよ、入ってきて。」

 扉が開かれ桃花が中に入ってきた。そして扉を閉めた。水色のパジャマに身を包んで、手には枕を持っていた。

「一人で眠れそうもないので一緒に寝てもいいですか?」

 桃花がびっくりすることを言ってきた!

「とと桃花?一緒に寝るならネリネとかミルとかと一緒の方がいいんじゃないか?俺は、えーと男だからえーと。」

「先輩と一緒がいいんです。直接私を助けてくれたのは先輩なんです。先輩と一緒に居たいんです。ダメ…ですか?」

 目を潤ませ少し恥じらう表情の桃花。この表情をされたら断れないだろう。

「わかった。降参だ。いいよ、一緒に寝よう。」

「ありがとうございます。では失礼します。」

 失礼します?俺が思考停止している間に、桃花は俺のベッドの上に上がり込んだ。

「と、桃花!?」

「どうかしましたか、先輩。」

「俺は床で寝て桃花にベッドを使ってもらおうとおもってたんだけど!?」

「最初に言ったじゃないですか。一緒に寝ましょうと。だからこれでいいんです。」

 ダメだ今日の桃花の積極性に頭がついていかない。というかキャラが違くないか!?

「観念してください、先輩。良いって言ったのは先輩ですからね。」

「ああ、確かに言った。言ったな。」

 俺は観念して桃花の隣に寝そべる。流石に桃花の方は向けないので背中を向ける。これがひよりであればここまで考えずに済むのに。ひよりならこうなっても緊張しないが相手が桃花となると緊張するなと言う方が無理である。

「先輩、今ひよりの事考えましたね?」

「え、なんでわかったんだ!?」

「こういう状況なら先輩はひよりの事考えそうだなぁと思いまして。」

 何故思考が読まれたんだ。俺ってそんなにわかりやすいかな。

「ふふ。でも、今日はひよりの事考えても許してあげます。何せ湊先輩は私を救ってくれたヒーローですから。」

 ヒーロー。俺はヒーローなんて柄じゃないと思うけど桃花はそう思ってくれているようだ。さっきまでの桃花と違い少し明るくなっているようだ。リラックスできているのかもしれない。俺は

「先輩はいつもそうです。私が困っているときには助けてくれて…。」

「そんな事ないさ。桃花を助けたのだって今回が初めてじゃないか?」

「…やっぱり先輩、覚えてないんですね。」

「覚えてない?」

 過去に何か会っただろうか。俺と桃花はひよりを通して知り合った。知り合ってからもう三年くらいになるか。

「私たちがひよりを介して知り合う前の事です。私が友達と帰っていた時にちょっと怖い上級生に絡まれてしまったことがあったんです。相手の方がちょっと見た目の怖い事と話の通じない方であったことから私たちは怯えていました。通りかかった人たちはみんな素通りしていきました。でもそんな中一人の男子生徒が間に入り込んでくれました。それが先輩です。その時に先輩は私たちに笑顔で大丈夫?って聞いてくれました。それがどんなに心強かったことか。その後先輩は何かを言って上級生の方達とどこかへ行ってしまいました。」

 その出来事か。確かに覚えている。あそこから連れ出したのは良いけど俺はどうしようか全く考えてなかった。だからたまたま通りかかった警察官のひよりのお父さんに助けてもらったんだっけ。俺の中では情けない部類の思い出だ。でもあの中に桃花がいたとは。

「その後、ひよりに先輩を紹介してもらった時はびっくりしました。あの時の人だって。出会った後あの時のことが話題に上がらなかったのでもしかしたら覚えてないのかも、って思ってました。そしたら案の定覚えてなかったんですね。」

「まさか桃花がいたなんてわからなくてさ。悪い…。」

「いえ、いいんです。私の綺麗な思い出です。」

 背中越しに桃花が微笑んでいるのがわかる。恐らく見たら見惚れてしまうだろう。

「だから今回も助けてくれて、運命を感じました。先輩が私のヒーローなんだって。」

 桃花が俺の服の裾をつまむ。その仕草に俺はドキリとしてしまう。

「先輩…私は…。」

 そう呟いた後桃花は黙り込んでしまった。彼女の中でも言うか言うまいか考えてることがあるんだろう。それがなんなのか俺にはわからない。

「いえ…なんでもありません。明日も学校です。明日に備えて早く寝ましょう。」

 そう言って会話を打ち切り眠る体勢に入る桃花。うーん、何を言いたかったのか気になるところだが話してくれないだろう。しばらくするとスースーと寝息が聞こえてきた。どうやら眠ったようだ。俺は悪いと思いながらも反対を向き桃花の寝顔を見た。月明かりに照らされた彼女の寝顔はとても可愛らしくとても美しかった。

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