76話 VS UFOキャッチャー
買い物をしているとネリネが立ち止まった。店内に入っているゲームセンターが目に入ったようだ。確かに異世界では見ないだろうし、物珍しいだろう。
「ねぇ、ここは何?ちょっと騒々しいようだけど。」
「ここはゲームセンター。えーと、遊技場って言えばわかるかな。」
「へぇ。カジノみたいなものかしら。」
「カジノは知ってるんだ。そう。賭け事はしないけどカジノに近いかな。お金を出してゲームをしてって場所だから。」
「沢山の箱が並んでいるわね。それがゲームなのね。ふむ…興味深いわね。」
「なら行ってみませんか?買うものもほとんど決まりましたから、後は自由にして大丈夫ですし。」
「いいの?ありがとう。なら買い物済ませてから来ましょう。」
そう言い歩き出すネリネ。レジで会計しゲームセンターへと戻る。気のせいかも知れないがネリネが上機嫌っぽい。前を歩いていたネリネは一つの筐体の前で止まった。ぬいぐるみのUFOキャッチャーだ。
「これが気になるのか?ネリネ。」
「ええ。とっても可愛らしいもの。これは景品ってことでいいのかしら?」
「そうだよ。この横と縦のボタンを長押ししてアームを移動させて景品を取るんだ。一度やってみるね。」
そう言い、俺は百円を入れる。横のボタンと縦のボタンを使って景品の真上にアームを移動させた。アームが開きそのままアームはぬいぐるみの方へ落下した。ぬいぐるみをがっちり掴む。ぬいぐるみが持ち上がり移動を開始した。しかし移動の途中でぬいぐるみは落下してしまった。落下した瞬間隣で
「あっ。」
と声が聞こえた。ネリネが落胆した声を出したのだった。
「まぁ、今回は取れなかったけどこうやってぬいぐるみを移動させて穴に入れたら獲得。ルールは簡単でしょ?ネリネもやってみる?」
「いいの?やらせてちょうだい。」
俺はネリネと立ち位置を交換した。
「ネリネさん、頑張ってください。」
桃花も応援している。俺から百円を受け取るとネリネが真剣な面持ちで百円を入れた。そしてゲームスタート。俺の手順を見ていたネリネはボタンを長押ししてアームを横へ移動させる。次にアームを縦に移動させる。が、距離感が掴めなかったのかぬいぐるみの奥までアームが移動してしまった。そのままアームはぬいぐるみの後ろに落下した。
「ああっ!」
悲痛なネリネの声が発せられた。空を掴んだアームは元の位置に戻って来た。
「うう…!」
筐体を睨みつけるネリネ。えーと、ここは。
「ネリネ、もう一回やるか?」
「やるわ。」
食い気味に返事をした。やる気は充分なようだ。もう一度アームを動かすネリネ。横の移動は大丈夫なようでぬいぐるみの位置に止まっている。そして問題の縦移動。ネリネは真剣な眼差しでアームを見ている。縦にアームを移動させる。すると今度は先ほどよりは後ろには行かなかったが、まだぬいぐるみからしたら後ろだった。ぬいぐるみのお尻を持ち上げて前に倒した。
「………。」
無言だけど落胆しているのがわかる。今回は少し持ち上がったもんな。
「ネリネ、も」
「やるわ。」
最後まで喋ってない。ネリネも意地になっている。そこからネリネとUFOキャッチャーの戦いは長期戦になった。止まらない連コイン。取れない景品。俺と桃花はすごく集中しているネリネを前にし何も言えないでいた。だがネリネもタダで負けているわけではない。徐々にアームの位置を調整できるようになりぬいぐるみを持ち上げることが出来るようになっていた。問題は移動中に落ちてしまうこと。落ちることを計算に入れないと景品を取ることはできない。そこが難しくネリネも苦戦している。
「ネリネ、俺が代わりに取ろうか?」
「いいえ、私がやるわ。私がやらないと意味がないの…。」
ネリネの覚悟が伝わってくる。戦闘を行うネリネと表情が一緒だ。そしてトータル二十回目。とうとう。
「………!やったわ!ミナト!桃花!やったわ!」
見事ぬいぐるみを獲得することに成功するのだった。長い戦いだった。
「やったなネリネ!お見事!」
「やりましたね、ネリネさん。流石です!」
「ええ、やったわ!やっと取れたわ。」
ぬいぐるみを抱き抱え笑顔のネリネ。その姿が年相応の女の子に見えて俺はドキりとくるのだった。
その後もゲームセンターで遊び、終わって帰る頃には夕焼け空になっていた。
「ありゃ、思ったより遅くなっちゃったな。」
「そうですね。思ったよりネリネさんが熱中してましたからね。」
「いいでしょ!楽しかったんだから!」
珍しく桃花がネリネをいじっている。今日一日で二人の仲も深まったようだ。駅前のバス停に着いた。次のバスまで少しあるな。
「先輩。ちょっとお手洗いに行って来ます。荷物持っててもらっていいですか?」
「いいよ、行っておいで。」
俺は桃花から今日買った荷物を受け取った。最初は俺が持つと言ったんだが、私のものしかないので私が持つと桃花が聞かなかった。今受け取ったし、家に着くまで持っててもいいよな。
「今日は楽しかったわ、ミナト。次はミルとひよりも連れてみんなで行きましょう。」
「そうだな。スーリアも引っ込んでないで出てくればよかったのにな。」
「ちょっと騒々しかったからね。でも楽しい場所なら今度は出てみるよ。」
ペンダントから声が聞こえた。こんな機能までついていたのか。そうこう話をしていると桃花がお手洗いから出て来た。こちらの方へ小走りで駆け寄ってくる。そんなに慌てなくていいのに。ロータリーで待っていた黒い車の隣を通った瞬間。
「!?」
車の中から男が出てきて、桃花を車の中へ引きずりこんだ。
「なんだと!?」
「桃花!?」
俺とネリネは急なことに驚いた。車はそのまま急発進した。そのまま道を走って行く。
「追いかけるわよ!ミナト!」
「ああ、絶対追いつく!」
俺とネリネは車を追いかけて走り出した。




